“疲れるだけの話し合い” にうんざり? 「成果が出る議論」たったひとつのコツ、教えます

成果が出る議論の方法01

グループワークでメンバーと意見が対立し、言い争いになってしまった。
会議で自分の意見を通そうと思うあまり、相手を強く否定してしまった。
意見を主張し合ったわりに結論が出ず、残ったのは疲労だけ……。

このような経験はないでしょうか?

相手の粗探しをするような「ただの言い合い」には、勝ち負けはあるかもしれません。ですが、個々の意見をもとに新しい考えを生み出すというような生産性はないのです。

では、生産性のある「議論」をするにはどうすればいいのでしょうか

こんなに違う。フランスと日本の「議論」

日本人は「議論」が苦手だとよく言われます。その背景を探ってみましょう。

脳科学者の中野信子氏は、かつてフランスで生活していたときの経験を振り返り、「日本で行なわれている議論のほとんどが、フランスで私が見てきた議論とは異質のものだ」と言います。フランスで中野氏が経験した「議論」とは、このようなものでした。

フランスであれば、一方が「Aについて話をしたい。私はXだと考える。その理由はかくかくしかじかだが、あなたはどうか?」と語り始めたら、もう一方は、「私はあなたと考え方が違う。私はYだと考える。その意味するところはかくかくしかじかで……」と応じます。そこからお互いが、より議論を掘り下げていき、この部分はどう考えるか? とか、この部分は賛成だが理由になっていないのではないか? あるいはこの部分まではお互い共有できる、などといった具合に発展していきます

(引用元:中野信子 (2020), 『人は、なぜ他人を許せないのか?』, アスコム.)※強調は筆者が施した

ところが、日本で「議論」とされるものは、このような様子です。

「Aについて、あなたはYだと主張しているが、その考え方はいかがなものか?」「いやいや、Xなどと言い張っているあなたこそ失礼千万だ!」「なんだその態度は! 生意気な。人の顔をつぶすのか?」「大した勉強もしていないくせに、何を熱くなっているの。どちらもみっともないよ」

(引用元:同上)

お気づきのとおり、これは否定の応酬です。そして、この日本の「議論」の構図は、インターネット上での「炎上」と同じ。筆者自身、SNSを見ていて、「炎上」の中心となっている意見について、相手を一方的にただ否定するような言説によく出合います。

相手に対する否定は、仕事などでのグループワークや会議でも、よく起きるものです。相手の意見を「でもそれは……」と否定して自分の意見を通そうとする、あるいは相手の否定に屈してしぶしぶ賛成する。こういう経験がある人は、決して少なくないと思います。

成果が出る議論の方法02

日本人はなぜ意見を叩くのか

では私たち日本人は、なぜこのように、相手を一方的に否定してしまうのでしょうか。中野氏は、日本人が自分と異なる意見を激しく非難しがちなのは、日本が災害大国であるからではないかとしています。

自然災害が起こると、生き延びるためには集団で協力することが求められるもの。そんななか、集団の意に沿わない人は徹底的に弾き出されることになります。それは、自分が「集団の正義だ」と思ったことに逆らうその人を、一方的に非難した結果なのです。

こうした行動は、もちろん災害時を生き延びるうえは賢明なのでしょう。ですが、ビジネスや日常の場面にも当てはめていいわけではありませんよね。ことに、グローバルな場において通用するか、生産性はあるのかと考えると、決してうなずけないでしょう。

成果が出る議論の方法03

生産性のある「議論」とは

では、私たちがすべき真の「議論」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

明治大学国際日本学部教授・トゥールーズ第1大学客員教授の小笠原泰氏は、欧米の「議論」は「意見の対立がある状態が、自然な状態である」ということを前提とすると言います。欧米ではむしろ、「全会一致」はファシズムに通じるため、避けるべきだとされているそう。すなわち、集団で一致すべきとする日本とはまったく対照的に、欧米では、違う意見があることこそが当たり前なのです。

まさに中野氏がフランスの事例として挙げていたように、まずは違う意見を尊重するところから始まります。そして、耳を傾けるうちに、意見どうしがじつは完全に対立しているわけではないことに気づいたり、落としどころや組み合わせ方があることがわかってきたりします。こうして新たな可能性を見つけることこそが、私たちが目指すべき、生産性のある本当の「議論」なのです。

異なる意見を吟味し、共通点や妥協点を探り合い、新たな可能性を見出す――これは、「弁証法」という思考法によく似ています。弁証法は、二項対立を突き崩すことを目的としたもの。ある命題(テーゼ)と、それを否定する命題(アンチテーゼ)から、それらを統合した、より高次な命題(ジンテーゼ)を導き出します。相反するように見えるふたつの命題の、隠された共通点や組み合わせ方を考え出すのです。

簡単な例で言えば、塩味のポップコーンとキャラメル味のポップコーンのどちらを買うか悩んで、ハーフ&ハーフにするようなもの。テーゼとアンチテーゼ、どちらかが必ず正解でどちらかが必ず間違いだと思い込んでいたら、ジンテーゼにはたどり着けません。私たちが目指す「議論」も、これと同じなのです。

成果が出る議論の方法04

成果が出る「議論」の進め方

ここで、実際に意見が対立した場合にはどのように「議論」をしていくのが理想的か、例を用いて考えてみます。

今回想定するシチュエーションはこちら。

AさんとBさんは、大学の授業でペアの発表をすることになった。食と社会に関する発表で、Aさんは「食品の流通について」、Bさんは「最近国内で人気の食品について」調べたいと思っている。

では、成果が出る「議論」の進め方を見ていきましょう。

1. 意見が対立する

Aさんの考えを聞いたBさんは「地味だしやり尽くされている」、Bさんの考えを聞いたAさんは「ただの紹介になりそうで、学びが得られない」と反対します。これではお互いにけなし合うだけで、らちが明きません。

2. 相互の意見を尊重する

そこで、AさんとBさんは建設的な議論をするために、ふたつの意見のよい面と悪い面を話し合います。Aさんの意見は、手堅いけれどパッとしない。Bさんの意見は、新鮮味はあるけれどただの紹介になってしまう。学びが得られて、かつ目を引くテーマにしようと、ふたりはそれぞれの意見をひとつに組み合わせることを決めます。

3. 両者の意見を統合し、新たな可能性を見つける

統合の仮テーマとして「人気食品の流通」という案を見て、Aさんが「社会というテーマがあまり反映されない気がする」と言います。そこでBさんが、「商品自体の流通ではなく、その食品の人気がどこで発生してどのように全国に広まったかを調べたらおもしろいのでは?」と提案。Aさんは賛同し、「同時に関連づけられそうな社会情勢やトレンドを調べてみてもいいかも」と発展的な内容を思いつきます。こうして、ふたりの発表テーマは「人気食品は、なぜ人気に火がつき、どのように広まったか」に決定しました。

***
相手の意見を頭ごなしに否定しても、それは分断しか生みません。異なる意見を尊重し、対等に扱ってじっくり吟味し合うことで、新たな可能性が生まれてくるのです。グループワークや会議でよりよい結果を生むための「議論」を、みなさんも心がけてみてはいかがでしょうか。

(参考)
中野信子 (2020), 『人は、なぜ他人を許せないのか?』, アスコム.
プレジデントオンライン|日本の会議はなぜ"独り言大会"になるのか 欧米人の「議論」とは全然違うワケ
Wikipedia|弁証法

【ライタープロフィール】
梁木 みのり
早稲田大学文化構想学部在籍。福岡県筑紫女学園高校出身。高校時代から文芸部に所属し、小説を書いている。現在大学では、文芸・ジャーナリズム論系に進むためテクスト論を中心に日々勉強中。

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