経験から学んで成長できる人は○○をしない。何をしても「大変だった」で終わる人が習慣化すべきこと

経験を積み重ねて成長しているイメージ

「何を経験しても、いつも『大変だった』で終わってしまう。本当は失敗も成功も糧にして成長したいのに……」
「経験をなかなか次に活かせない。どうしたら、経験から確実に学びを得て、賢くなっていけるのだろう」

さまざまな経験をしてきたにもかかわらず成長実感が得られず、悩んでいませんか?

今回は、経験から確実に学べる人とそうでない人の差はどこなのか、どうしたら経験から次につながる学びを引き出せるのか、筆者の実践を交えて紹介していきます。経験を無駄にせず確実に成長していきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

経験から学べる人は「振り返りのサイクル」を回している

何かを経験したとき、「大変な経験だった」という感想で終わってしまう人や、「学びになった」とは思ってもその場限りになってしまう人。反対に、ひとつの経験から確実に学びを得て、今後に活かすことができる人――両者の違いは、経験の振り返り方にあります。

せっかく経験したなら、そこから成長につながる学びを得たいと考える人におすすめの振り返り方が、「経験学習モデル」というフレームワークを使うことです。これは、「具体的経験」・「内省的観察」・「抽象的概念化」・「能動的実験」のプロセスを循環することで、経験から学びを得るというもの。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の名誉教授であるディビット・コルブ氏によって提唱されました。(カギカッコ内引用および参照:中原淳(2013), “経験学習の理論的系譜と研究動向”, 日本労働研究雑誌, No. 639, pp.4-14.

もう少し丁寧に説明すると、以下の1〜4のサイクルを回すのが経験学習モデルです。

  1. 具体的経験:成功や失敗などを経験する
     ↓
  2. 内省的観察:1の経験から学んだことを振り返る
     ↓
  3. 抽象的概念化:2の内容を一般化することで、ほかの状況にも適応できる知識やルールを見つける
     ↓
  4. 能動的実験:3で得た仮説を実証するため、新たなアクションを実践する
     ↓
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(参考:同上)

経験学習モデルを図で表したもの

(画像は編集部が作成)

ポイントは、経験のあとに振り返りを行ない、次の経験に生かすこと。成功や失敗の結果だけに注目するのではなく、過程に重きを置いて経験から学びを得、次の経験に応用するのです。

たとえば、「朝、いつもより30分早く起きられた」という成功体験があったとしましょう。

この経験について振り返りを行なうと、「前の晩にいつもより早く就寝した」「お風呂にゆっくりと入って疲れをとった」「目覚まし時計を離れた場所に置いた」など、成功の要因となった具体的な行動が出てきますよね。

次に、その成功要因と思われる事柄を、自分なりのルールに変換。早く起きるために「就寝時間を調節する」「お風呂にゆっくりと入って疲れをとる」といった具合です。

そして、自分なりのルールを実践してみます。その結果をふまえて、これまでのステップをまた繰り返す——すると「30分早く起きる」という成果を安定的に実現できるようになるのです。

「朝いつもより30分早く起きられた」という成功体験を経験学習モデルに落とし込んだ図

(画像は編集部が作成)

こうして例を見ただけでも、私たちが日々の経験を無駄にせず次に活かすのに、経験学習モデルは大いに役立つことがわかりますね。

実際、経験学習モデルは「人材開発や高等教育をはじめとして,さまざまな分野において用いられている」と、経験学習の第一人者である青山学院大学教授の松尾睦氏が説明しています。(カギカッコ内引用元:松尾睦(2021), “経験から学ぶ能力と職場学習”, 經濟學研究, 71 (2), pp.1-51.

経験から学べる人は反省ではなく「内省」する

経験を振り返ろうとしたとき、「自分はなんてダメなんだ」「あのときこうしておけばよかった……」といったネガティブな感情にさいなまれてしまったことはありませんか? じつは経験を振り返るときには、反省しないのが大切なのです。

昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏は、STUDY HACKERのインタビューで「反省しているときは学べない」と述べています。同氏いわく、「心理学の研究では、人間が学ぶためには心理的安全性が確保されている必要があり、ネガティブな感情を抱いているときには学べないことがわかってい」るのだそう。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|「経験から学んで賢くなれる人」とそうでない人の最大の違いは “○○” しているかどうか

筆者にも経験がありますが、過去の行ないを反省すると、自分を否定する気持ちや自分を責める思考ばかり生まれてしまうもの。そうした状態では「この経験を活かそう」という前向きな気持ちにはなりにくいですよね。

では、反省しないのであれば何をすればいいのでしょうか。その答えは、熊平氏によれば「内省」です。

経験からしっかりと学んでいくには、「リフレクション」が欠かせません。リフレクションとは、「内省」という意味です。もう少し踏み込んだ表現をすると、「自分をメタ認知すること」となるでしょうか。

(カギカッコ内および枠内引用元:STUDY HACKER|「経験から学んで賢くなれる人」とそうでない人の最大の違いは “○○” しているかどうか

つまり、成長するには、ネガティブな感情がひもづく反省ではなく、より客観的に自分を見つめる内省が必要なのです。

ここで活用したいのが、先ほどご紹介した経験学習モデルです。経験学習モデルを使って仕事の振り返りを行なえば、反省をするときのような嫌な気持ちを抱えることなく、仕事の経験を冷静に客観的に見つめることができるでしょう。そこから学び取れるものが確実にあるはず。さっそく試してみます。

点灯しない電球と点灯した電球が並んでいる

成功体験と失敗体験を「経験学習サイクル」に落とし込んでみた

筆者も、自分の経験から何が学べるか、経験学習モデルを使って考えてみることにしました。成功体験と失敗体験の両方を振り返ります。

まずは、成功体験からです。以下のようにして、紙にフォーマットを用意。

経験学習のサイクルを紙に書き出した様子

(実践画像はすべて筆者作成)

最初は、具体的経験のところに「予定納期の1日前に成果物の納品ができた!」という成功体験を書きました。そこからは、内省的観察→抽象的概念化→能動的実験の順に、振り返りをしていきます。なぜ早く作業を進められたのか、それを次に活かすとしたらどうすべきか、じっくり考えながら書き出してみました。

成功経験を経験学習モデルに落とし込んだ例

実際に書いてみて初めて、これまで成功経験について内省したことはほとんどなかったと気づいた筆者。いままでは、何かうまくいった経験があっても、なんとなく「よかったな」としか思えていませんでしたが、今回うまくいった要因を言語化したことで、「確実に次に活かせそう!」という自信が生まれました

次に、失敗体験を経験学習サイクルに落とし込んでみた紙面も紹介しましょう。納期より1日早く納品した成果物について、先方から「もっと内容を練ってほしい」と修正依頼を受けてしまった――という、少し苦い経験を振り返りました。

失敗経験を経験学習モデルに落とし込んだ例

いつもの筆者であれば、失敗するとつい反省モードに入ってしまい、「自分はダメだ……」と投げやりになりがち。ですが落ち着いて振り返りの内省をしてみると、修正を依頼されないために今後はどうすればいいか、具体的に考えることができました。単に「自分はダメだ」と思っていたときとは違い、次につながる学びを得ることができました。

日頃から反省しがちな筆者。意識しなければきちんと内省できないことも新たな発見でした。成長するために大切なのは、反省ではなく内省なのだということを身に染みて感じましたよ。

***
経験から学びを得られるようになれば、自身の成長を実感でき、仕事でもより成果を出せるようになるはず。ぜひ、みなさんも習慣化してみませんか?

(参考)

中原淳(2013),  “経験学習の理論的系譜と研究動向”, 日本労働研究雑誌, No. 639, pp.4-14.
松尾睦(2021), “経験から学ぶ能力と職場学習”, 經濟學研究, 71 (2), pp.1-51.
STUDY HACKER|「経験から学んで賢くなれる人」とそうでない人の最大の違いは “○○” しているかどうか

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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