「プランAとプランB、新企画としてどちらが成功するだろうか……」
「2つの会社から内定をもらったけれど、どちらにするか決められない」
きっと多くの人が、物事をスムーズに判断できないという悩みを持っているのではないでしょうか。
そして筆者自身も、自分の「優柔不断」な性格に悩みを抱えています。たとえば、高校生の頃、留学に行くかどうかをずっと悩んでいたのですが、決断を先送りにして、結局留学に行かないまま卒業してしまった……という後悔の思い出がありました。
そんな筆者が、今回「Question Matrix」という手法を用いて、自分の悩みである「優柔不断」という性格をひも解いてみました。はたしてどんな結果が得られたか、詳しく説明していきましょう。
「Question Matrix」とはなにか
「Question Matrix」とは、チャック・ウィーダーホルト氏が自身の著書『Cooperative Learning & Higher Level Thinking: The Q Matrix』において紹介した、もともとは海外の学校で生徒たちの思考力と想像力を伸ばすために利用していた手法です。
簡単に説明すると、テーマを設定し、表(マトリックス)にそって疑問を書き出したあと、その疑問に対して自分なりの答えを当てはめていくことで高い思考力を鍛える、というメソッドになります。
そしてテーマにすべきなのが、「自分が抱えている悩み・問題点」。「頭で悩んでばかりいても答えが全然見つからない……」と停滞しているときにこそ、この「Question Matrix」で自分の悩みや問題点を整理するのがよいのです。
マトリックスを用いた思考の整理は、高く評価されています。たとえば、山形大学大学院理工学研究科の久保田修介氏らによる論文「『マトリックス思考フレーム』を用いた大学生の生き方、学び方の意識変化について」(2011)では、マトリックスを用いて人生を考えることで、自分とはどういう人間か、何をしたいのか、どうであれば満足できるのかがわかるようになってくると述べられています。「Question Matrix」で問題点を整理することが、自分を理解して前へ進むきっかけになるのです。
以下に示しているのが、「Question Matrix」のフォーマットです。このマトリックスを2枚用意し、1枚を疑問で埋め、もう1枚は疑問に対する答えで埋めていきます。
「Question Matrix」の手順
筆者も実際、「正しい決断をスムーズに下せるようになりたい」をテーマに「Question Matrix」を作成してみました。この表は手書きで作成することももちろん可能ですが、今回はExcelを用いています。作成手順は2ステップ。
【ステップ1】表(マトリックス)を「疑問」で埋める
たとえば、左上端のマスから考えてみましょう。テーマに沿って「現在(is/does)」かつ「物(What)」を対象とした疑問を考え、記入します。筆者は「今、何を決断する・したいのか」という疑問にしてみました。そして、その下のマスには、「過去(was/did)」かつ「物(What)」を対象とした疑問が入ります。
このようにして、タテとヨコの条件に沿って順に回答を埋めていくと、以下のように「疑問」でマスが埋められました。
疑問作成のステップだけでも、自分の思考が整理されていく感覚があります。ただ、今回設定したテーマは少し抽象度の高いものだったため、疑問を考えるのに少し時間がかかりました。実践の際、それぞれの疑問の内容が被らないよう注意するとよいでしょう。自分の成長のヒントを得る機会は、考えた疑問の数に比例していきますよ。
【ステップ2】疑問に対する「答え」を埋める
次に、また左上端のマスから、ステップ1で作成した疑問「今、何を決断する・したいのか」に対する答えを埋めていきます。今回の場合、「就職についてどうするか」が私の答えです。
ステップ1と同じようにして、全部のマスを答えで埋めることができれば、「Question Matrix」の完成となります。
柔軟な回答を心がけるため、少し抽象度の高い疑問に対してすべての状況に当てはまるよう答えることに気をつけました。そうすると、疑問を作成しているときと同じく、答えを考えている瞬間にも、「自分が問題点について普段どのように考えているか」を知ることができます。
「Question Matrix」を実践すると、思考を整理できた!
実際に「Question Matrix」を作成してみた感触としては、まず、「自分という人間」を理解しやすくなったように思います。今回はテーマを抽象的なものに設定していたこともあり、自分の思考のクセに気づくことができました。
たとえば、「決断には何を注意すべきか」という疑問に対して「あとで後悔するかどうか」という答えをあてたことから、自分が悩んで決断を先送りにしてしまうのは「後悔したくないから」だと気づいたのです。
そして、この思考のクセに気づいたあとは、「では、後悔をしないようにするにはどうすればよいか」と問題点をさらに具体的なものへ発展させ、「自分のためになるかどうかという基準を用いて決断を下せばいいんだ」という示唆を得ることができました。
テーマが抽象的で実践が難しいかと思われた「Question Matrix」でしたが、終わってみれば、予想以上に「自分への解答」を得ることができる結果だったと思います。
また、今回やってみて難しいと感じたのは、ステップ1で行なった「疑問」の作成です。似た答えになってしまう疑問や、「誰が決断するのか」といった答える意味がなさそうな疑問とならないよう、気をつけながら考えていく作業がやや大変でした。
「Question Matrix」を実践するときには、たとえば「仕事で〇〇が気になってしまう」など、疑問を簡単に思いつくような具体的な悩みや問題点を設定しておくと、効率良くマトリックスを作成することができるでしょう。
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何らかの悩みや問題点を抱えているなら、「Question Matrix」を用いて分析することで、自分自身に対する理解を深めることができると同時に、解決方法にもきっとたどりつくはずです。そうすれば、新たな行動を生むきっかけになり、主体性を持って前に進めるようになりますよ。ぜひみなさんも、時間があるときに「Question Matrix」を作成して、成長の足がかりにしてみてくださいね。
(参考)
Chuck Wiederhold(1995), Cooperative Learning & Higher Level Thinking: The Q Matrix, United States, Kagan Cooperative Learning
久保田修介, 高橋幸司, 高畑保之(2011),「マトリックス思考フレーム」を用いた大学生の生き方,学び方の意識変化について, 工学教育, 59, pp124-129.
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【ライタープロフィール】
YOTA
大学では法律学を専攻。塾講師として、中学~大学受験の6科目以上の指導経験をもつ。成功者の勉強法、効率的な学び方、モチベーション維持への関心が強い。広い執筆・リサーチ経験で得た豊富な知識を生かし、効率を追求しながら法律家を目指して日々勉強中。