「事前に相当準備してからでないと話せない。口下手で頼りない人だと思われているかも……」
「自分をアピールするのが苦手だから、仕事の成果も評価されにくいのかな……」
自分自身のことを “どちらかといえば物静かで、内向的なタイプ” だと思っている人のなかには、上記のような悩みを抱える人もいるかもしれませんね。ですがじつは、内向的な人が職場で愛され、よい評価を得られる納得の理由があったのです。
今回の記事では、その理由を3つご紹介します。内向的な人が職場でよりよく振る舞うコツについてもお伝えしますので、ぜひご一読ください。
1. 物静かな人は「社内調整がうまい」
感情豊かにテンポよく話せる人を見て、「うらやましいなぁ。自分はあんなふうには話せない……」と落ち込むことはありませんか。そう思いがちな内向的な人は、じつは交渉に向いているのです。
コミュニケーション・交渉術の講師で『内向型人間のすごい力』著者のスーザン・ケイン氏は、ある内向的な人物に対し、こう述べたそうです。
おそらく、あなたは誰よりも準備を重ねているはず。語り口は静かだが、しっかりしている。考えなしにしゃべることはまずない。柔らかい物腰を保ちながらも力強く、時には攻撃的とさえ思える立場に立って、理路整然と話す。そして、たくさん質問をし、答えに熱心に耳を傾ける。
(引用元:+αオンライン|ベストセラー『「静かな人」の戦略書』著者が5日で3回も読み返した感動の書『内向型人間のすごい力』)
そして、こうした特徴は「交渉に強くなる秘訣」であるとも。つまり、内向的な人は、内向的だからこその強みを、交渉の場で発揮できるということです。
「交渉っていっても、自分は取引先との駆け引きみたいなものとは縁がないし……」と思ったでしょうか。交渉力を活かせる場は、もっと身近にあります。それは、会社で他部署の人などを相手に行なう「社内調整」です。
ビジネススキル・スクールのコミュトレが、社内調整がうまくいかないことで生じうる悪い状況の例として、以下のものを挙げています。
「あの人/部門は自分の都合ばっかりで、自分たちのことをわかってくれない!」という不満がつのってしまい、不穏な空気が流れたり、感情論のぶつけあいになったりしてしまいます。
(引用元:コミュトレ|社内調整を成功させる交渉力3つのポイント)
上記のようなことは、上司・部下どの立場にいる人でも、起きうるもののはず。たとえば、
他部署と交渉中に、「至急回答を」ととりあえず強気に言ってみたところ相手を不快にさせたようで、「対応できかねる」と突き返されてしまった。数日後に回答は得られたが、あまりにそっけないものだった……。
こんな状況を回避する力が、内向的な人にはあるのです。ケイン氏が挙げていた、「考えなしに話さず、静かな語り口で、物腰やわらか」という特徴をもつ人は、相手を刺激しないはず。また、「力強く理路整然と話せる」ため、主張が弱すぎるということもないでしょう。
さらに「事前準備が得意」という特徴も、交渉には有利に働きます。前出のコミュトレが、交渉をうまく進めるコツのひとつとして「相手の状況を理解する」ことをすすめています。把握すべきものは以下です。
- 「現在の業務状況」
- 「要求内容に対する状況」
- 「相手側の理想的な着地点」
(同上資料より)
たとえば、自分の部署が繁忙期に入り、他部署に応援を頼みたいとしたら、
- 「業務に余裕がありますか?」
~現在の業務状況を確認 - 「こちらに2名来ていただいた場合、そちらに支障はありますか?」
~自部署の要求内容を相手部署が受け入れる場合に想定される状況を確認 - 「来週中に1日だけ応援に来ていただくのであれば、無理がないでしょうか?」
~理想的な着地点を確認
という具合に伝え、相手の状況を理解する姿勢を見せるのです。
スムーズに交渉を進めるコツは、テンポよく話したり、強気で積極的な姿勢を見せたりすることではなく、相手に配慮することだと言えそうですね。自分が内向的だと思う人は、ぜひ社内調整で強みを発揮してください。社内での交渉をスムーズに進めたい場面で、きっと頼りにされるはずです!
2. 物静かな人は「謙虚である」
聞き役になりがちで、自分の話を積極的にできない――そんな特徴を短所だと悩む人もいるでしょう。ですが、内向型の人のキャリア支援を行なうジル・チャン氏は、そうした内向的な人の態度を「謙虚さ」ととらえ、評価しています。
チャン氏がともに仕事をしてきた、成功したアーティストたちには、
スタッフやチームメンバーに配慮を欠かさず、ファンに対しても思いやりの気持ちを持ちつづける。
おだやかな態度で相手の話をじっくりと聞き、周りからの信頼を得る。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「謙虚でも自然に評価される人」がしている1つのこと)
といった謙虚さがあったそうです。そしてこれは「エンターテインメント分野や個人のキャリアにかぎった話ではなく、あらゆる仕事でも、そしてチーム戦でもまったく同じ」とのこと。ですから、聞き役になりがちな内向的な人は、謙虚さゆえの気配り力や傾聴力で、チームを成功に導き、仲間から厚い信頼を得ることが可能なはずなのです。
そうはいっても、常におとなしく聞き役でいるわけにもいきません。人事評価の際など、自分の成果をアピールすべき場面もありますよね。チャン氏は、次の3つが「謙虚に自分をアピールするうえで大切」だとしています。
- 「データを使う」
- 「間接的に表現する」
- 「準備をしておく」
(同上資料より)
新規開拓に励む営業の人が、人事評価の面談で成果を伝えるとします。「大口契約をとった」「商談が成功した」とアピールすべきなのに、気が引けてうまく伝えられない……そんなときは、
- 「A社から〇〇万円の契約をいただきました」
~データで示す - 「担当者と会話が弾み、後日改めて会食することになりました」
~エピソードを通して間接的に表現する - ⇒ こうしたデータやエピソードは、事前に準備して頭のなかに入れておく
いかがでしょう。このような伝え方であれば、成果を直接的にアピールするよりもずっと気が楽な気がしませんか?
内向的な人らしい謙虚さを保ったまま、自分の成果を確実にアピールするコツを紹介しました。ぜひ試してみてくださいね。
3. 物静かな人は「あとから努力が評価される」
周囲とコミュニケーションをとりながら仕事をするのが苦手なので、黙々と作業することが多い。こんな自分は、やっぱり「暗い人だな」と思われているかな……。
そう不安に思うかもしれませんね。でも大丈夫。職場の仲間は、あなたの努力をきちんと見てくれています。
心理学者の内藤誼人氏が、こう述べています。
寡黙な人は、たしかに初対面のときには、あまりよい印象を与えないかもしれません。しかし、それでも2カ月、3カ月が経つ頃には、他の人にも、「あの人って、黙々とよく頑張ってるよな」ということは認知されていきます。
(引用元:PRESIDENT WOMAN Online|「外交的な人」より「内向的な人」の方が、最後には認められやすい理由)
無理して口数を増やさなくても、努力していればちゃんと評価されるのです! こう聞くと安心しますね。
ただ、できることなら好印象はもたれたいもの。そこで心がけたいのが、意識的に笑顔をつくることです。臨床心理士の関本文博氏が「内向的な人がした方がいいこと」のひとつとして挙げています。
非社交的な内向的な人は、黙っていたりリアクションが控えめだったりすることから、暗い人と誤解されがちです。
そういった印象がマイナスに働くことも社会生活を送る上では多いので、なるべく笑顔で機嫌よく振舞えるようにしておくのは有意義でしょう。
(引用元:東京カウンセリングオフィス|内向的な人)
ですから、「まわりからどう思われているだろう……」と不安になっても、わざわざ外向的な性格を演じて雑談の輪に入ろうとしたり、会議や打ち合わせで発言を増やそうとしたりする必要はありません。目の前の業務を確実にこなしてチームに貢献すれば、仲間はあなたの努力を認めてくれるはず。
さらに、人前では口角を上げるなどしてなるべく笑顔でいることを心がけること。これで、「口数は少ないけど、性格は明るい人なんだろうな」とポジティブな印象をもたれるでしょう。自信をもってくださいね。
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物静かで内向的な人が職場で愛される理由についてご説明しました。長所を存分に活かして自分らしく活躍していただけたら幸いです。
(参考)
+αオンライン|ベストセラー『「静かな人」の戦略書』著者が5日で3回も読み返した感動の書『内向型人間のすごい力』
コミュトレ|社内調整を成功させる交渉力3つのポイント
ダイヤモンド・オンライン|「謙虚でも自然に評価される人」がしている1つのこと
PRESIDENT WOMAN Online|「外交的な人」より「内向的な人」の方が、最後には認められやすい理由
東京カウンセリングオフィス|内向的な人
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。