よく本を読み、セミナーや勉強会に参加し、知識やスキルを身につけてはいるけれど、いまひとつ成果が上がらない。これ以上、いったい何をしたらいいのだろう……?
そんな悩みがあるならば、「リフレクションノート」をつけてみてはいかがでしょう。自分が積み重ねてきた経験を、うまく活かせるはずですよ。
筆者が実践した内容を交えながら、「リフレクションノート」を紹介します。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
「リフレクションノート」とは?
人材育成の分野で「リフレクション(reflection)」は次を意味します。
- 自分自身をかえりみて、良し悪しなどを考える「省察」
- 自分が仕事などで積んできた経験を、しっかりと「振り返る」
- 自分の考えや言動、状態などをかえりみる「内省」
よりよく対処・行動していくために、過去の経験から有用な知識や知恵などを見出そうとする方法論なのだそう。
成人教育三大巨匠のひとりであるジャック・メジロー氏が、「リフレクション」について説明した内容を端的に述べると、「自分の経験への理解と評価のプロセス」となります。
なぜ「リフレクションノート」が必要なのか?
男子中学生のなりたい職業1位が「YouTuber」になり、「eスポーツ」市場が活気づき、「AI」が一般家庭のコンシェルジュとなり、「ロボット」がバリスタとなってカフェラテを淹れる今は、先の読めない “不確実な時代” といわれています。
その中で、株式会社スタイリッシュ・アイデア代表取締役の新井宏征氏が、唯一 “確実” だと考えているのが、学び続けることなのだそう。仕事における学びには、次の3段階があるといいます。
- 何も知らない:「知識がインプットされていない状態」
- 人、本、インターネット、セミナーや研修などで学ぶ:「知識が入った状態」
- 知識をもとにやってみた、経験から学ぶ:「実践できる状態」
3番目の「実践できる状態」になることが学びの第一到達点だとすれば、失敗であれ、成功であれ、経験から学ぶことが重要だとわかります。
そして、経験から学ぶことこそが「リフレクション」であり、仕事の経験から得た “気づき” を、言語化する取り組みが「リフレクションノート」なのです。
気づきを “見える化” して、仕事における自分のバイブルをつくるわけですね。
「リフレクションノート」は本当に効果的なのか?
東亜大学人間科学部スポーツ健康学科の准教授であり、パラバドミントン日本代表の専任コーチングディレクターとして当時東京2020パラリンピックの出場を目指していた山﨑将幸氏が2018年に執筆した紀要論文には、「リフレクションノート」の有用性が示されています。
じつは2007年の時点で、(教員を目指す学生の)教員としての資質向上には「リフレクション」が効果的であると報告されているそう。
そこで、山﨑准教授らは受講生28名を対象に、体育実技の模擬授業実践のあとに「リフレクションノート」を用いて検討したそうです(2017年4月~7月)。
「リフレクションノート」は、
- 模擬授業終了直後に書いた場合
- 模擬授業終了後、翌週にビデオ映像で省察会を行なったあと書いた場合
の2パターンで検討されました。
結果、模擬授業終了直後に書いた「リフレクションノート」より、翌週に書いた「リフレクションノート」のほうが、より多く “気づき” を得られていたそうです。
“気づき” は、新井宏征氏が述べた「経験で学ぶ」ことにほかなりません。
つまり、いかによくリフレクション(省察、振り返り、内省)できるかが重要であり、リフレクションにおいて最適な方法が「リフレクションノート」であると示されたわけです。
では、筆者もさっそく挑戦してみます!
「リフレクションノート」のやり方
新井宏征氏が「リフレクションノート」で省察する際、KDAというフレームワークをよく使うそうです。内容は次の通り。
- 【K・保つ/Keep】:うまくいっていること、今後も続けていくこと
- 【D・切り捨てる/Discard】:よくなかったこと、今後はやめること
- 【A・追加/Add】:経験を踏まえ、新たに始めようと思うこと
思いつくまま気にせずどんどん書いていくのもよし、KDAそれぞれの欄をつくり書き出すのもよし、付箋などに書き出したあと、ペタペタと分類していくのもよしです。
「リフレクションノート」をやってみた
筆者の場合はごく普通のシンプルなノートと、KDAそれぞれの欄に書き出していく方法を選びました。思いつくまま書くので、日付は西暦のみ。
ノートの片頁を縦に3等分し、上部にK(保つ)、D(捨てる)、A(追加)と書きます。
それぞれを印象づけてリズムができるように、行頭文字を次のように工夫しました。
- K(保つ)は「〇」
- D(捨てる)は「×」
- A(追加)は「☆」
この極めてシンプルなフォーマットで、数日間思いつくまま書き続けます。
「リフレクションノート」をやってみた感想
最初は、何を書けばいいのか少し戸惑いましたが、気負わず書こうと決めたら筆が進み、不思議と次から次へと思い出すことや、思いつくことがありました。
書き始めることで、連鎖的に記憶や考えが浮かんだのです。とはいえ、一見それらには脈絡がありません。
たとえば――
「仕事(記事の執筆)」について書いているうち→→→「仕事中にクラシックピアノとクラシックギターを聴くと集中できるが、オーケストラは気が散った」ことなどを思い出し、それらを書いているうちに→→→なぜか「最近の問題解決における“気づき”:あえて順序立てず、目的や目標だけを据え置いてフレキシブルに考えること」を思い出した。
――といった具合です。
最後の問題解決にいたっては、思い出したというより、考えがまとまったと表現するほうが正しいかもしれません。
本人が意識していないところで、記憶がつながっているのでしょうか。いずれにせよ、書くことで芋づる式に記憶や気づきを引っ張り出せるのは、大きな効果といえます。
また、A(新たに始めようと思うこと)に書き込むと、考えや意思が明確になり強くなると感じられました。
ちなみに、K(今後も続けていくこと)と、A(新たに始めようと思うこと)は多少混乱しますが、いずれも今後取り入れていくことなので神経質にならず、どちらに入っていてもいいくらいに書いていけばいいと思います。
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今回は、経験を学びにする「リフレクションノート」を紹介しました。実際に筆者が感じた効果は、次の5つです。
- 経験を芋づる式に引っ張り出せる
- 気づいたことが明確になる
- 考えがまとまる
- アイデアが浮かぶ
- 意思が明確になる
ぜひお試しくださいね!
(参考)
山﨑将幸(2018),「リフレクションノートを用いることによる教員志望学生の資質向上可能性について : 保健体育科教育法の模擬授業実践から」, 東亜大学紀要, vol.26, pp.133-138.
カレイドソリューションズ株式会社|省察、内省、反省、振り返り
東亜大学|東亜大学が応援しているパラバドミントンの紹介が朝日新聞(5月中旬)に掲載されます
キャリコネニュース|男子中学生のなりたい職業1位「YouTuber」、2位「プロゲーマー」 男子高校生は「社長」になりたい人が増加
THE21オンライン|急成長する人が実践している「リフレクション」とは?
日本の人事部|「リフレクション」とは?
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