「私の心は絶対に折れません」は逆にキケン。心の “ちょうどいい強さ” は感情ラベリングで身につけよ。

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ビジネスや教育の場では、逆境に負けない心=「レジリエンス」が注目を浴びています。くじけず何度でも立ち上がる心は、強ければ強いほどいい印象ですが、じつは強すぎるのも問題なのだそう。

何があってもへこたれないよう頑張ってはいるが、一向に状況が好転しないと感じている方に、詳しく説明します。

レジリエンスとは?

レジリエンス(resilience)とは、ストレスフルな状況になってもへこたれない、心理的回復能力のことです。

ポジティブ心理学を教育に応用した「ポジティブ教育」の中でも、かなり重要とされているのだそう。欧米では、教育カリキュラムに取り入れている学校も多いといいます。

コロンビア大学で心理学を教えるジョージ・A・ボナーノ(George A. Bonanno)教授は、レジリエンスを、「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡(つり合いがとれている)状態を維持することができる能力」と定義しました。

Facebookの最高執行責任者であるシェリル・カラ・サンドバーグ(Sheryl Kara Sandberg)氏と、心理学者のアダム M・グラント(Adam M. Grant)氏らは、共著『オプションB』で、レジリエンスを「異変が起こると力を発揮する、心の筋肉のようなもの」と表現しています。

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レジリエンスが弱すぎると?

精神保健福祉士の川島達史さんによると、心理学では、立ち直る力が強いほど心身が健康になるとわかっているそうです。つまり、弱いほど不健康になるということ。

思春期の158名を対象にした2015年の研究では、レジリエンスがあると逆境に置かれても成長することができる一方、レジリエンスがないと抑うつ的(気分が落ち込んで何もできない・したくない)になりやすい、と示されました。

心理学者のバーバラ・L・フレドリクソン(Barbara L. Fredrickson)教授による2003年の調査でも、同様の結果が示されたといいます。

レジリエンスが弱いと、次のような状況を引き起こす可能性があるそう。

  • 変化や新しいことを避けがちになる
  • すぐに諦めてしまうようになる
  • なにかとイライラしやすくなる
  • ストレスやプレッシャーに弱くなる

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レジリエンスが強すぎると?

一方で、マンパワーグループ チーフ・タレント・サイエンティストのトマス・チャモロ・プレミュジック(Tomas Chamorro-Premuzic)氏と、ビジネス心理学者のデレク・ラスク(Derek Lusk)氏は、レジリエンスが強すぎると、明らかに達成不可能な目標に固執してしまう可能性があると指摘しています。

非現実的な目標を追いかけて、かなりの時間を浪費している人が相当数いるとした、科学的な評価もあるのだとか。

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また、強すぎるレジリエンスは、「逆境の受け入れすぎ」を引き起こす可能性もあります。本来ならサッサと見切りをつけていい仕事や物事を、必要以上に我慢し続けてしまうのです。たとえば、

  • 延々と続く無意味で退屈な仕事
  • まったく意欲がわかない仕事
  • 過酷なパワハラがある職場の仕事

といった「生産的で明るい未来がほとんど望めないこと」を、自分の限界や、物事の必要性が見えなくなっている状況で延々と続け、“心が折れては回復する”を繰り返していくのは大問題ではないでしょうか。

つまり、あまりにも強すぎるレジリエンスは、自分の行動を改めるチャンス・成長のチャンス・リスク回避のチャンスを失ってしまう原因にもなり得るということです。

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本来の、竹のようなレジリエンスに

レジリエンスを鍛える方法として、次の行動が有効だといわれています。

  • 周囲と良好な関係を維持する
  • 困難を “耐えがたい問題” として見ない
  • 自信を深める
  • マインドフルネスを取り入れる

また、自分の感情を言語化する「感情のラベリング」もいいそう。

不安になったら「不安ちゃん、どうしたの?」と、苦しかったら「苦痛くん、大丈夫?」と、あらかじめ名前をつけておいた感情に対し、友だちのように声をかけるのです。

そうすると、自分の感情と距離を置いて「客観的」になれるため、ストレスを軽減できるのだとか。感情そのものを落ち着かせることもできるそう。立ち直る準備を整えてくれるわけです。

じつは、この「感情のラベリング」が、弱すぎず、強すぎないレジリエンスに整えていく方法でもあります。なぜならば――

本来のレジリエンスは、しなやかに物事をとらえて受け止め、視点を変えて立ち直っていく力。しかし、プレミュジック氏とラスク氏らが示した「強すぎるレジリエンス」を持つ人々は、客観性に欠き、自分の行動を俯瞰(ふかん)できていません。

しかし、もしも「感情のラベリング」で自分を客観視でき、違う観点で物事をとらえることができれば、“気づき”を生みやすくなり、実際にぶつかっている問題を解決しやすくなるはずです。

  • ああ、またダメだった。なぜいつもダメなんだろう。(自分)
  • どうした? ガックリ君。(もうひとりの自分)
  • AもBもCもDもチャレンジしたけど、全部ダメだった。(自分)
  • そうかぁ。(もうひとりの自分)
  • よし、仕切り直しだ! EもFもGもHもチャレンジしなきゃ。(自分)
  • それともAaとBbとCcとDdとか。(もうひとりの自分)
  • えッ?(自分)
  • それとも……、ちょっとだけ休んでみるとか。(もうひとりの自分)
  • ……。(自分)

――と、こんな感じでしょうか。

跳ね返す力に必要なのは、硬い鉄板のような強さではなく、竹のように弾力性・柔軟性・強靭性に富んだしなやかな強さです。その強さに不可欠な、客観的視点を失わないよう心がけましょう。

***
レジリエンスは弱すぎても、強すぎても問題があることについて説明しました。自分の行動を俯瞰しつつ、逆境を乗り越えていってくださいね。

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|レジリエンスが強すぎるとどうなるか  
教育新聞|逆境に負けない心 レジリエンスを身につける(1)レジリエンスとは何か  
STUDY HACKER|不安もイライラも他人事に。心の弾力性 “レジリエンス” を高める「感情ノート」のすごい効果 
ダイレクトコミュニケーション|レジリエンスの心理的な影響と論文研究3
NCBI|What Good Are Positive Emotions in Crises? A Prospective Study of Resilience and Emotions Following the Terrorist Attacks on the United States on September 11th, 2001

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