メガベンチャー企業の社長や金融コンサルタントなど、自力で成功を収めた人々の多くが読書家だということは有名ですよね。そんな成功者たちの間で定番の愛読書になっている本が多数存在します。これらの本は、発売から月日が経過しているにもかかわらず、内容が普遍的なものであるため、現在でも成功者の間で人気を博しているのです。
自分の働き方を変えたいと思っている方、収入を大幅にアップしたいと思っている方や、新しい事業を開始しようと考案中の方は、今回紹介する「成功者の愛読書」を一読してみてはいかがでしょうか?
星野リゾート社長愛読『競争の戦略』から学ぶ「新事業で勝つ」方法
アメリカの経済学者、マイケル・E・ポーター氏の書籍は、世界中の経営学大学院でテキストとして使われており、多くのビジネスパーソンの間で必読書となっています。
同氏の『競争の戦略』(ダイヤモンド社)は、星野リゾートの星野佳路社長が愛読。本書籍には、実際にあった企業間のシェア争いの例が記されています。その中からいくつかご紹介しましょう。
アメリカのロブスター漁は、個人経営や零細企業に務める漁師たちが行うのが定番です。しかしP社は「ロブスター漁業のゼネラル・モーターズ(アメリカ最大の自動車企業)」を目指し、最新技術を駆使した漁船を購入してトラック輸送やレストランとの垂直統合を進めました。ロブスター漁業に最新鋭のシステムを持ち込もうとしたのです。
一見完璧に思えたP社のシステムですが、対抗策として漁師たちは自分たちが釣ったロブスターの値段を限界近くまで下げるという猛反撃に出ました。大規模であるため固定費などのコストがかかるP社のシステムに対し、個人事業主に近い漁師たちの事業はコストがかからず、「家族が食べていける」程度の収入があれば充分。そのため漁師たちは大幅な値下げを敢行できたのです。その結果、P社の事業は失敗して操業停止にまで追い込まれました。
また、カミソリメーカーとして有名なJ社が腕時計事業に参入しようとした際も、既存の時計メーカーは値下げを敢行することによって、J社の参入を防ぎました。ポーター氏は、企業の競争としてのアクションとして
- 自社の「防衛力」を高める
- 他社の業界に効果的に「参入」する
の2つがあると唱えています。P社やJ社は新システムを使用して他業種に参入しようとして(2)、漁師たちや時計メーカーは値下げを行うことにより、自分たちの仕事を確保しようとした(1)のです。新事業に参入することがいかに困難かがよく分かりますね。
社員全体が経営の視点を持つことを重視する星野氏は、本書を星野リゾートの社員教育にも用いていると言います。通常の手段では、一日の長がある競合相手に打ち勝つのは簡単ではありません。『競争の戦略』には、新参企業が打ち勝つための手法が記されているので、新事業を考案中の方は特に一度読んでみてはいかがでしょう。
「ユニクロ」社長愛読『プロフェッショナルマネジャー』で経営を学ぶ
アメリカの実業家、ハロルド・ジェニーン氏は、自身が社長をつとめた企業を14年半連続で増益させたという実績を持つ人物です。 ジェニーン氏が手がけた『プロフェッショナルマネジャー』(プレジデント社)は、世界中のビジネスマンに影響を与えた書籍であり、日本では「ユニクロ」を手がけるファーストリテイリングの柳井正社長が「人生最高の経営書」に指定しています。
ジェニーン氏は同書の中で次のように説いています。
本を読むときは、始めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとまったく逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ
(引用元:ハロルド・ジェニーン(2004),『プロフェッショナルマネジャー』, プレジデント社.)
柳井氏は、この言葉を通して「経営とは目標から逆算して、その目標に到達するために考えられる限りのことをいいと思う順から実行していくことである」ということを学んだそうです。
通常、何かを開始する場合、一般の人はスタート地点から物事を考えがちです。しかし、ジェニーン氏が言うように、ビジネスを開始する場合は明確な目標を先に掲げることが肝心だというのは、成功者の間ではほぼ定説になっています。
明確な目標を掲げるための手段として、アメリカでコンサルティング業を営むサイモン・シネック氏が推奨する「ゴールデン・サークル」という方法を紹介しましょう。
ゴールデン・サークルとは、三重の円を描き、一番内側の円にWHY、真ん中にHOW、一番外側にWHATと思うことを書き込むというものです。そして、なぜ?(何をすれば成功するのかな?)と思うことから発展させて、どうやって?(どうやって事業をはじめればいいんだろう?)→なに?(なぜ、私は事業をはじめたいのだろう?)と思うことを書きこめば、ビジネスの成功手段が論理的に浮かび上がるという方法です。
これからビジネスを開始しようとする方は「○○ヶ月以内に独立する」「○○年以内に店舗を拡大したい」など、明確な目標を持つことをオススメします。
自己啓発本の原点『思考は現実化する』で学ぶ「成功の絶対的法則」とは
ナポレオン・ヒル氏がてがけた『思考は現実化する』(きこ書房)は、1937年に刊行されたにもかかわらず、現在でも成功哲学の名著として世界中で発売されています。本書は「鋼鉄王」として有名な実業家 アンドリュー・カーネギーがナポレオン・ヒルに「成功の絶対的法則」を明らかにするよう依頼した結果書かれたもの。自己啓発本の原点とも言われています。
『思考は現実化する』内では、「今起きている現実は、すべて自分の潜在意識が引き寄せていること」と語られています。例えば、あなたが新事業を計画していたとしても、「どうせ失敗する」と諦めていたら、何も始まりません。逆に「いつかは成功する」と考えていたら、仮に失敗したとしても、挑戦し続けることで後年に大成功を収める可能性があります。
同書には、願望を実現化させるための6ヶ条が記されています。
1. あなたが実現したいと思う願望を「はっきり」させること
「お金が稼ぎたい」「偉くなりたい」といった漠然とした欲望ではなく、「○○年までに事業を開始する」など、明確な目標を定めます。
2. 実現したいと望むものを得るために、「何か」を差し出す
例えば、あなたが独立を計画をしていたら、安定した会社員生活を捨て去ることになるかもしれません。何かを得ようとすると何らかの代償が必要です。
3. あなたが実現したいと思っている願望を取得する「最終期限」を決めること
目標を先延ばしにして、結局何もしないというのは、よくあること。独立を計画している場合、「○日後までに退職する!」と明確な日にちを掲げておくとよいでしょう。
4. 願望実現のための詳細な計画を立てること。そしてまだその準備ができていなくても、迷わずにすぐに行動に移ること
何事も行動しなければ始まりません。また、準備に追われるあまり、実行が遅れては元も子もありません。人間が行動を開始すると、「ドーパミン」というやる気をつかさどる脳内物質が発生し、さらに行動がはかどる効果をもたらします。例えば、海外でビジネスを学びたければ「まだ英語力が足りないし……」と躊躇うより先にワーキングホリデーに応募したり、自分に適したスクールを見つけて入学書類を請求してしまえば、必然的に尻に火がつき、英語学習も捗るでしょう。何より行動が大事です。
5. 実現したい具体的願望、そのための代償、最終期限、そして詳細な計画、以上の4点を紙に詳しく書くこと
1〜4で記した内容を書いて見直せば、行動しやすくなるでしょう。
6. 紙に書いたこの宣言を、1日に1回、起床直後と就寝直前に、なるべく大きな声で読むこと。(その願望を実現したものと自分に信じ込ませることが大切である)
成功の秘訣とは「自分を信じ続ける」ことが一番大切なのです。
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成功者たち定番の愛読書を読めば、成功することの秘訣はさほど難しいものではないことが明らかです。自分が成功していないと考えている人の大半は、「能力が低い」のではなく「なにもしていない」のです。今回、紹介した本を一読すれば、あなたの人生は劇的に変化するかもしれませんよ。
(参考)
マイケル・E・ポーター(1995),『競争の戦略』,ダイヤモンド社
DIAMOND online|3分でわかるポーターの『競争戦略』「『攻撃』と『防御』を攻略して競争に打ち勝つ」
AdverTimes|星野リゾートはなぜ社員教育にマイケル・ポーターの名著「競争の戦略」を使うのか
ハロルド・ジェーニン(2004),『プロフェッショナルマネジャー』,プレジデント社
PRESIDENT Online|柳井 正:プロマネ・ノートはこう読んでほしい!
TED|サイモン・シネック・優れたリーダーはどうやって行動を促すか
ナポレオン・ヒル(1999), 『思考は現実化する』, きこ書房
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【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、 ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、 エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEB上 で活用することを目標としている。