「自分のキャリア、どうすれば?」とモヤモヤする人に何より必要な「○○性」の磨き方

「自分のキャリア、どうすれば?」とモヤモヤしている女性

若手のビジネスパーソンであれば、先の人生が長いだけに自分の「キャリア構築」について悩んでいる人も少なくないはずです。

「自分のキャリアはこれからどうなるのだろう。どんなキャリアを歩むのが正解なのかまったくわからない……」そんなモヤモヤを抱えるビジネスパーソンに向けてアドバイスをくれたのは、日本における「非認知能力」のパイオニアとして知られるボーク重子(ぼーく・しげこ)さん。「どう生きればいいのか」という悩みに、ボークさんはこう答えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「正解」とされるものがなくなった時代

これからのキャリア構築に対してモヤモヤしている人のお悩み解決に有効なものは、「非認知能力」のなかの「主体性」です。主体性とは、「誰かからなにか言われるまでもなく、『自分がやりたいからやる』力」のことです。

具体的にアドバイスをする前に、そもそも非認知能力とはなにかということからお伝えしましょう。近年ではメディアで取り上げられることも増えていますから、すでに知っている人も多いかと思いますが、非認知能力とは「認知能力」の対極にある力のこと。認知能力とは「認知できる能力」ですから、テストの点数や偏差値など、数値化できる能力のことです。

一方の非認知能力とは、「認知できない能力」。具体例には枚挙にいとまがありませんが、私が特に重要だと考えているものなら、自己肯定感、自分軸、成功体質、オープンマインド(柔軟性)、共感力、プランド・ハップンスタンス(偶然力)、そして主体性といった、いずれも認知能力と対照的に数値化できない能力のことです。

では、キャリア構築に対して「どうすればいいんだろう……」とモヤモヤしている人に有効な非認知能力が、主体性だという理由について解説していきます。いまは、「激変の時代」と言われますが、そんな時代において、むしろ「モヤモヤしていない人」なんているのだろうかと思うほどです。

でも、かつては違いました。キャリアや人生に、「これが幸せのかたちですよ」という「正解」があったからです。女性の場合なら、結婚して家を守り、夫を出世させるために徹底的に奉仕をする。そして夫の地位が上がれば自分の地位も上がり、それこそが幸せだ、といった具合です。

男性の場合なら、まずはいい大学に入っていい会社に就職する。そして、結婚したら、「男子厨房に入らず」という言葉もあるように、家庭は妻に任せて、とにかく仕事に打ち込んで稼ぐ。そうした「正解」とされるものがあったため、モヤモヤする余地などなかったのです。

いまは「正解」とされるものがなくなった時代だと語るボーク重子さん

自ら主体的に考えて、選択肢を選び取っていく

でも、いまはそんな時代ではありません。激変し続ける時代のなか、「正解」というものがなくなりました。代わりにたくさんの生き方の選択肢が生まれました。そのため、多くの人が「どう生きればいいのか」といった思いを抱えてモヤモヤしているのです。

終身雇用制や年功序列制は崩壊したと言われ、いい大学に入っていい会社に就職すれば一生安泰という時代はとっくに過去のものとなりました。女性だって、主婦として家を守っていれば一生安泰な時代は終わり、経済的自立、そして自己実現の側面からも自らのキャリアや人生を自分自身で切り開いていくことがデフォルトになりつつあります。

ところが、私も含めていまの大人はそのための訓練を受けてきていません。疑問をもつことなく、親や学校の先生の言う「正解」だとされることだけやっていればいいと、いわゆる「いい子」であることを求められ、その箱のなかで生きることが良しとされてきたからです。そして、それを忠実に守ってきました。

まさに主体性そのものである、「誰かからなにか言われるまでもなく、『自分がやりたいからやる』」ことが「間違い」だと教え込まれてきたのです。

ですが、いまはかつて存在した絶対的「正解」というものがありません。ましてや3年先がどうなるかわからない激変の時代に、誰かが「正解」を示してくれることなどありません。

そんななかで、自分のキャリアや人生をよりよいものにしていくには、「自分はなにがしたいのか?」「どんな人生を生きていきたいのか?」と自ら主体的に考えて「これがしたい」「こんな人生をつくりたい」と選び取っていかなければならないのです。激変の時代では、これまでの「指示待ち体質」から「自らやる」という主体的な体質へのシフトが求められています。

主体的な体質へシフトすることが大切だと語るボーク重子さん

「モヤモヤしている」ことをポジティブにとらえる

では、その主体性を伸ばすにはどうすればいいでしょうか。それは、「好奇心」「これってなんだろう?」「なぜこうなっているんだろう?」「これしか方法はないのだろうか?」など不思議に思うこと、興味をもつことを日常の習慣にすることです。なぜならそれが好奇心であり、主体性のベースとなるからです。

だけど、こんな経験はありませんか? たとえば子どもの頃、気になったものがあってうろちょろしていたら、「じっとしていなさい!」「余計なことしないで!」なんて叱られた経験がある人も多いでしょう。そんな経験が重なって自然と指示待ち体質になっていく。

私たちは本来、あらゆることにとっても興味津々な存在なのです。だから、そこに立ち返ればいいだけです。大人となった私たちに「うろちょろしないで」なんて叱る大人はいません。代わりにいるのは、「いまさら遅いよ」「好きなことなんてどうせ見つからない」「やりたいことがわからない」とモヤモヤしている自分。

だからこそ、子どもの頃のワクワクをぜひとも取り戻してほしい。そのために有効なのは、情報に触れることです。私たちは、「知らないこと」に対して「やりたい!」なんて気持ちをもつことはありません。その存在を知るからこそ、「やりたい!」という気持ちをもつのです。

そういう意味では、いまはいい時代になったと言えます。みなさんの手にスマホがあるからです。依存症を招くなどとして悪者にされることも多いスマホですが、その存在によってかつてとは比べようもないほど膨大な情報に触れられるようになりました。このことを活かさない手はありません。

スマホなどのデバイスから多種多様な情報に触れ、少しでも心に引っかかったことは徹底的に調べてみる。そうするうちにあなたの好奇心は磨かれ、「こんなものがあったのか」「これを仕事にしたい!」「こんな生き方をしてみよう!」というふうに主体性が育まれ、進むべき道も見えてくるのではないでしょうか。

最後に、「モヤモヤしている」ことをぜひともポジティブにとらえてほしいとも思います。モヤモヤして悩んでいるということは、それだけ選択肢が多いということにほかなりません。「正解」がない時代である反面、自分の選択次第でどんなふうに生きてもいいのですから、これからの人生に大きな可能性を秘めているのです。

ですからある意味、過渡期で混沌とした時代は、「いい時代」でもあるのではないでしょうか。

カメラに向かってほほ笑むボーク重子さん

【ボーク重子さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「なぜかうまくいく人」と「何もうまくいかない人」。決定的違いは「夢の見方」にあった
「幸せなキャリアを築ける人」がもつ「巻き込む力」。伸ばすためのシンプルな心がけとは

【プロフィール】
ボーク重子(ぼーく・しげこ)
福島県出身。Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。1998年に渡米、結婚し娘を出産する。非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生」に選ばれる。子育てと同時に自身のライフワークであるアート業界のキャリアも構築、2004年にはアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年、アートを通じての社会貢献を評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。現在は、「非認知能力育成のパイオニア」として知られ、140名のBYBS非認知能力育児コーチを抱えるコーチング会社の代表を務め、全米・日本各地で子育てや自分育てに関するコーチングを展開中。大人向けの非認知能力の講座が6か月の予約待ちとなるなど、好評を博している。『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)、『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(文藝春秋)、『「パッション」の見つけ方』(小学館)、『世界基準の子どもの教養』(ポプラ社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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