仕事や勉強のパフォーマンスを高めるには、小まめな休憩が必要だといわれています。最新の研究によると、新しいスキルを習得する際の短い休憩は、トレーニングそのものに匹敵するのだそう。
「パソコン作業の生産性を上げたいので、速くタイピングできるようになりたい」「タイピングテストがあるので練習しようと思っている」
そんな方々に、“ものすごく短い休憩”がスキル習得に役立つ理由を説明します。
休憩と睡眠は学習に欠かせない：過去の研究
休憩と睡眠の重要性は、以前より明らかにされています。2012年7月24日に『Psychological Science』で発表されたエディンバラ大学などの研究では、新たに何かを学習したあと、（起きたまま）10分ほど休憩するだけで、学習内容が定着しやすくなると示されました。
また、2016年8月16日に同ジャーナルで発表されたリヨン大学などの研究では、勉強と勉強のあいだに睡眠をとると、学習力が高まることが発見されました。途中で睡眠をとることにより、少ない勉強量で効率的に吸収できるようになり、記憶が維持しやすくなるとのことです。それどころか、最新の研究では、10秒という非常に短い休憩時間には学習そのものに匹敵する効果があるとわかりました。
短い休憩は学習の役割を果たす：米最新研究
生物学全般の学術誌『Current Biology』上で2019年3月28日に発表された、アメリカ国立衛生研究所（NIH）の研究は、驚くべき事実を示しました。27人の被験者に「数字を10秒間タイピング→ 10秒間休憩」を繰り返させ、脳波を調べたところ、タイピング中よりも休憩中のほうが脳波の変化が激しかったそうです。
多くの人は、文字や数字をタイピングしているうちにトレーニングの効果が現れ、タイピングがどんどん上手になっていくのだろうと考えるはず。しかし、この実験では、トレーニングを10秒間継続したあとよりも、10秒間休憩したあとのほうが上達するとわかったのです。実験の結果は、スキルを習得するトレーニングの休憩中に、脳が勝手に働いてその後の動作に作用すること、つまり休憩が練習そのものであることを示唆しています。
スキル習得時に短い休憩を取り入れるコツ
上で紹介した研究によると、短い休憩中にタイピングスキルが大幅に向上したことには、脳の「前頭ー頭頂ネットワーク（FPN）」の「ベータ波の振動」が関連していたのだそう。FPNは集中の状態を示し、ベータ波は能動的で活発な思考や集中と関係しています。つまり、私たちが休憩しているとき、脳は勝手に集中して、スキルを習得しているわけです。
研究で取り上げられたのはタイピングという単純な運動課題なので、より複雑なスキルを習得する際にも「短い休憩」が重要であるかどうかは、まだわかっていません。しかし、少なくともタイピングの習得には効果が見られたわけです。タイピングを練習する際、次のとおり短い休憩を取り入れてはいかがでしょう。
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練習→ひと息→練習→ひと息→練習→ひと息
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「短時間の休憩がスキル習得に効果的である」という効果は、まだスキルが上達していない初期のみに発揮されるそうです。早い段階で取り入れてみてくださいね。目と脳を休ませる、「長めの休憩」もお忘れなく！
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スキルの習得とは少し違いますが、筆者は記事を書く際、この短い休憩を取り入れるようにしています。人間は、考えるとき無意識に手を止めるものですが、それを意図的に行うのです。方法は、PC作業中に手を止め、PCモニターから目を離すだけ。
ベータ波の振動のおかげなのか、ずーっと書き続けているよりも、執筆速度が上がります。ぜひお試しください！
（参考）
Research Digest｜Taking Tiny Breaks Is Key To Learning New Skills
National Institutes of Health (NIH)｜Want to learn a new skill? Take some short breaks
Current Biology｜A Rapid Form of Offline Consolidation in Skill Learning
SAGE Journals｜Brief Wakeful Resting Boosts New Memories Over the Long Term - Michaela Dewar, Jessica Alber, Christopher Butler, Nelson Cowan, Sergio Della Sala, 2012
SAGE Journals｜Relearn Faster and Retain Longer: Along With Practice, Sleep Makes Perfect - Stéphanie Mazza, Emilie Gerbier, Marie-Paule Gustin, Zumrut Kasikci, Olivier Koenig, Thomas C. Toppino, Michel Magnin, 2016
STUDY HACKER｜アイデア力に悩む人に「妄想」をおすすめする納得の理由。脳の回復にも効果的！
Wikipedia｜ベータ波
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STUDY HACKER 編集部
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