どうしても勉強する気にならない。勉強を始めても集中できない。でもどうにかしたい! という方に、思わず勉強がしたくなる「5つの判断」を紹介します。ごく自然に勉強へと導かれるはずですよ。さっそく説明しましょう。
【判断1】:私たちは自由に勉強できる
九州大学大学院人間環境学研究院教授の山口裕幸氏によると、人間は自分の考えや行動を自由に決定できる状態を好むそうです。ゆえに、自由が脅かされていると感じると、回復しようと反発するのだとか。これを「心理的リアクタンス(反発)」と言います。
つまり、「勉強しなさい」「勉強しなくてはならない」には、必然的に反発が生じるということ。ならば「勉強すること」=「自分が自由にできること」だと、自分自身に認識させてしまいましょう。
おすすめは、「私はなんでも自由に学べる」「勉強するのは自分の自由」などと書いて、見える場所に貼っておくこと。実際に貼ってみるとわかりますが、想像以上に勉強へのハードルが下がります。
【判断2】:勉強欲は眠れる本能
人間性心理学(Humanistic Psychology)創設者のひとりであるアブラハム=マズローは、著書『人間の動機づけ理論』のなかで、人間は何かの知識を得たとしても、さらに詳しく細かい知識を手に入れたい欲求に駆られるほか、広範な知識への欲求にも突き動かされると述べています(参考:Yushi INABA Official Site - International Christian University, Tokyo, Japan|A THEORY OF HUMAN MOTIVATION -J (Project Sugita Genpaku))。
私たちは、「知りたくて仕方がないのに勉強する意欲が湧かない」という矛盾を抱えているわけです。ならば勉強欲は私たちの眠れる本能だと判断し、「わからないことノート」をつくりましょう。しっかりと理解できていないこと、わからないことなどをまとめ、知りたい欲求を刺激するのです。
書き方は、税理士、講師、ビジネス書著者の石川和男氏が勉強に必要だと説く「間違いノート(問題集などで間違えた箇所を書いておく)」を参考にしてみましょう。ポイントは次の3つです。
- 十分に余白をとる(あとで補足や気づきを書き足せる)
- 大きい字で書く(汚くてもいい)
- 書名やページ数など出典情報を書く
株式会社NLPラーニング代表・NLP(神経言語プログラミング)トレーナーの山崎啓支氏によれば、人間の脳には “思わず空白を埋めたくなる「空白の原則」” があるそうです。
空白があると⇒よくわからないことだと判断し⇒よく理解できていないことは危険だと判断し⇒空白を埋めようとするのだとか。余白たっぷりの「わからないことノート」が、勉強欲を目覚めさせてくれるのは間違いありませんね。
(※ノートの内容:小泉修平著(2012),『ビジネス心理学入門』,三恵社.より)
【判断3】:勉強は連続しないでいい
授業の50分間は集中できるのに、自宅ではどうしても机に向かい続けることができず悩んでいた学生が、「10分間勉強⇒2分休憩」のスタイルに変えたところ、グッと集中できるようになったそうです(「マナビジョン(Benesse)」で紹介されていた実体験より)。
「10分だけ頑張ればいい」という気楽さが意欲と集中力を高めてくれるほか、2分間だけの休憩がダラダラ休みを抑止してくれます。そのスタイルを繰り返せば、結果としてトータル時間は目指していた勉強時間に届くはず。
勉強の継続は必要ですが、勉強時間は連続しないでいいのです。どのくらいの時間で区切るかは、自分に合うかたちで調整しましょう。
【判断4】:キリが悪くても休憩する
メンタリストのDaiGo氏によれば、あらかじめ勉強時間を短く区切り、「あともう少しやりたかったのに」というところで勉強を中断すると、「焦らし効果」が生まれるそうです。 途中で終わってしまった感覚を残すため、「早くあの続きがしたい」と休憩中もモチベーションを保つことができ、再開時もスムーズに集中できるとのこと。
これは、心理学者のK・レヴィン氏と、当時は留学生だったB・ツァイガルニク氏が実証した「ツァイガルニク効果」にも通じます。
レヴィン氏らが被験者に複数の作業を与え、定期的に作業を妨げたところ、完成できた作業よりも、完成できなかった作業のほうが、より強く被験者の印象に残っていたそう。「キリが悪いけど疲れたから休憩しちゃおう」という判断は正解なのです。
【判断5】:15分経ったら立ち上がる
米カリフォルニア大学・ロサンゼルス校の研究(2018)によれば、長時間座りっぱなしの姿勢は、記憶に関わる脳の領域を薄くして、認知能力を低下させるそうです。こうした悪影響は、どんなに強い運動をしても相殺されないのだとか(ニッセイ基礎研究所レポートより)。
前出のDaiGo氏も「15分以上座っていると認知能力や集中力が低下する」と示す研究報告について言及しています。頭がクリアになれば集中もスムーズです。ときどき立ち上がる習慣は勉強行動へと導くはず。
また、多くのビジネス書を出版するライブパーソンジャパン代表取締役の金田博之氏によれば、スタンディング・ミーティングを取り入れると「早く終わらせたい」という気持ちが高まり、無駄がなくなるとのこと。
立ち上がったついでに休憩してもよし、立ちながら勉強を続けてもよしです。ときどき立ち上がることが可能な状況であれば取り入れてみてくださいね。
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食事は血となり肉となり、勉強で得たものは人生の一部をかたちづくります。自らが判断し、自由自在に勉強できる感覚を楽しみましょう。
(参考)
オージス総研|第21回 効果的な説得的コミュニケーションのあり方をめぐって(3)-説得と心理的リアクタンス(反発)の関係に注目して-
リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない
STUDY HACKER|アイデアがどんどんあふれる「16分割メモ」がすごい。空白のマスが脳をフル回転させてくれる
STUDY HACKER|勉強がはかどる方法12選! やる気・集中力がないときはどうする?
Yushi INABA Official Site - International Christian University, Tokyo, Japan|A THEORY OF HUMAN MOTIVATION -J (Project Sugita Genpaku)
マナビジョンラボ(Benesse)|みんなで高校生の未来を考える場所|3つの「チェンジ」を実践!ダラダラ防止の集中力アップ法
PHP研究所|PHPオンライン 衆知|メンタリストDaiGoが教える小刻み集中法!仕事や勉強は切りの“悪い”ところでやめる
ダイヤモンド・オンライン|流行の「立ってやる会議」はこの道具を使えば速攻で慣れられる
ニッセイ基礎研究所|意識したい『座り過ぎ』の問題ー健康リスクを下げて、生産性を上げる 基礎研REPORT(冊子版)6月号
小泉修平著(2012),『ビジネス心理学入門』,三恵社.
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STUDY HACKER 編集部
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