記憶力は何歳からでも鍛えられる。カギとなる「シナプス可塑性」強めるには何をするべきか?

シナプス可塑性01を強める

もっと上を目指したいけど、自分はそれほど頭が良くないし、記憶力も悪いからきっと無理。ぜーったい無理。

――いやいや、そんなことはありませんよ。

「学習力」や「記憶力」が先天的なものだといった誤解を解きつつ、学習と記憶の質を向上させる「シナプス可塑性」について説明します。

「学習力」や「記憶力」は生まれつきのものではない

米国ワシントンのシンクタンク「センター・フォー・アメリカン・プログレス」の上級研究員であるウルリッチ・ボーザー氏によれば、「学習力」は先天的なものではなく、後天的に形づくられていくものなのだだそう。多くの研究で明らかになりつつある、とのことです。

「学習力」に特化したトレーニングを計画的に行なうことにより、専門知識を速く効果的に身につけられるようになるのだとか。

「2019年度 記憶力日本選手権大会」の優勝者であり、日本人初の「世界記憶力グランドマスター」獲得者でもある池田義博氏も、「記憶力」は何歳からでも鍛えられると述べています。

そんななか、東洋大学生命科学部・児島伸彦教授の場合は、シナプスの可塑性(※後述)」をうまく活用できれば、「学習力」や「記憶力」を高められると説明します。

シナプス可塑性を強める02

「シナプス可塑性」とは?

わたしたちの脳のニューロン(神経細胞)は、ニューロンとニューロンの間の接合部分となるシナプスを介してつながり、さまざまな情報を伝達しています。

じつはこのシナプス、あらゆる経験や学習で変化するのだそう。大きくなったり、小さくなったりすることで、情報の伝わりやすさを操作しているそうです。その変化をシナプスの可塑性といいます。

学習や記憶の質は、シナプスの可塑性」を活発にすることで向上できるのだとか。

シナプス可塑性を強める03

「シナプスの可塑性を活性化」させるには?

児島伸彦教授は、生涯にわたり脳に新しい刺激を与え続けることが、シナプスの可塑性」を強めるとアドバイスします。活動的に過ごそうとすることや、いつでも何かを吸収しようとすることが大切なのだそう。

また、『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』の著者であるデイヴ・アスプリー 氏によれば、運動は次の作用を生むのだとか。

  1. 運動すると筋肉が FNDC5 というタンパク質を放出
  2. FNDC5の生成が高まると海馬のBDNF(脳の肥料)濃度が高まる

BDNFは、脳神経発生や保護、新しい記憶の形成や保持、そしてシナプスの可塑性を起こさせるそうです。

以上を踏まえながら、児島伸彦教授のアドバイスをもとに「シナプスの可塑性を活性化させる方法」を挙げると次の通り。

  • 適度な運動をする
  • 趣味や生きがいを持つ
  • 人と関わりをもつ
  • 新しいことにチャレンジする
  • 積極的に頭を使う(計算やプランなど)

整った食生活で高血圧や高血糖にならないよう気をつけ、ストレスがたまらないよう心がけて、質の良い睡眠をとることも重要とのことです。

ちなみに質の高い睡眠は、学習時間を50%短縮する効果があると、研究で示されているそうですよ。

シナプス可塑性を強める04

「学習力を伸ばすための方法」

なお、ウルリッチ・ボーザー氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー』の中で、次のことが示されたマルセル・ヴィーンマン博士の研究(2008年)を紹介しています。

――新しい専門知識を習得する際、先天的な知能の高さよりも、メタ認知スキルの高さのほうが重要である可能性――

メタ認知スキルとは、自分が知覚・判断・解釈していることや、自分の言動、自分の能力などを客観的に把握し、その後の自分の言動をコントロールしていく能力のこと。

ボーザー氏は、そうしたヴィーンマン博士の研究にもとづき、「学習力を伸ばすための方法」を3つ紹介しています。

  1. 目標の整理
  2. 認知を認知
  3. 学びの熟考

シナプス可塑性を強める05

それぞれを簡単に説明すると――

1.目標の整理

漠然と「何か学ぼう」「いい仕事をしよう」と考えている人に比べて、「TOEIC900点をとろう」「売上前年比1割増を目指そう」といった具合に、明確な目標がある人は高い成果を上げると研究で明らかになっているそうです。その都度その都度に、的をしっかりと絞ったうえで学習しましょう。

2.認知を認知

ボーザー氏によれば、何か突出した専門的知識を持つ人は、メタ認知的活動が定着しているとのこと。

  • 学んだことを本当に理解しているか?
  • 学んだことを人に説明できるか?
  • 何の目標に向かって学ぶのか?
  • さらなる知識のインプットが必要ではないか?

などと自問するクセをつけましょう。

3.学びの熟考

深い理解がともなう学習(単に暗記するだけではないもの)ほど、精神的な平穏が必要なのだとか。ただ延々と学ぶだけではなく、いったんそこから離れ、学習したことを熟考してみる時間もつくりましょう。きっと理解を深めてくれるはずです。

よろしければ、ぜひ取り入れてみてください。

***
児島伸彦教授は人々に、生涯学習をすすめているといいます。「シナプスの可塑性を活性化させる方法」と、「学習力を伸ばすための方法」を活用し、どんどん学んでくださいね!

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|HBR.org翻訳リーダーシップ記事|学ぶ力は才能ではなく、学びによって成長する
サンマーク出版|見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル
LINK UP TOYO (リンクアップトウヨウ)東洋大学|医学博士に聞く、記憶力・学習力アップに影響する脳機能「シナプス可塑性」とは?
STUDY HACKER|脳が働かないときにやるべき10のこと。“まず笑う” のが良いという意外な事実。
ResearchGate | Find and share research|Giftedness: Predicting the speed of expertise acquisition by intellectual ability and metacognitive skillfulness of novices
カオナビ人事用語集|メタ認知とは? 意味、重要性、具体例、高める方法について【メタって何?】
脳科学辞典|シナプス

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