パソコンで資料を作成する。ノートとペンでアイデア出しをする。本を読んで知識を仕入れる。私たちは日々さまざまな “作業” をしますよね。
じつは、作業の性質に応じて、適した場所や環境があることをご存じですか。それを踏まえて臨機応変に場所を選べば、作業がもっと捗るかもしれませんよ。
今回は、デキるビジネスパーソンやクリエイターが熟知している「作業別おすすめ場所」を3つご紹介しましょう。
1. 持ち帰ってきた仕事には「カラオケボックス」が適している
リモートワーカーとして働いている人はもちろん、持ち帰ってきた仕事を進めたりする場合、カフェやファミリーレストランなどに足を運ぶ人も多いことでしょう。しかし、公認会計士で数々のメディアへの出演や連載がある平林亮子氏は、17年のノマドワーカー生活を経て、仕事をするうえで最も快適な場所はカラオケボックスだと話します。
カラオケボックスは、昼間であれば料金が非常に安く、カフェなどと違って広いテーブルのある部屋をまるごと自由に使うことができます。ドリンクやフードも充実していますし、少し疲れたら仮眠をとったりリフレッシュのために歌ったりすることだってできます。「まわりがうるさいのでは?」と思われるかもしれませんが、部屋のカラオケ機器の音声を切れば、ほかの部屋の音などは、飲食店の騒音よりも静かなので気になりません。
そして、カラオケボックスだと仕事が捗る最大の理由は「時間制限」にあります。カラオケボックスでは、入店時に利用時間を決めますよね。精神科医の樺沢紫苑氏は、はじめに終了時刻を決めておくことの脳科学的メリットを次のように述べています。
人は追い込まれると、脳内でノルアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンは、集中力を高め、学習能力を高め、脳を研ぎ澄まします。結果として、脳は最高のパフォーマンスを発揮して、制限時間内に仕事を完了させることが可能になります。
(引用元:CANARY|簡単!速い!仕事がはかどる!精神科医が教える4つの時間術)
カフェやファミレスなどで仕事をすると、「この仕事は終わらせたい」と考えるものの、仕事を終える判断を自分でしなければならず、気づけば想定時刻をオーバーしていたりします。一方でカラオケボックスは、時間になったら部屋から出なければならないため、ダラダラと長時間仕事をしてしまうことが防げます。制限時間があるからこそ、集中力が発揮できるのです。
2. アイデア出しには「トイレ」が適している
ひらめきが起きる場所として、中国の古典『帰田録』では「三上」が紹介されています。これは「馬上(ばじょう)、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)」のことを指し、現代語の言葉に置き換えると、それぞれ「乗り物」「ベッド」「トイレ」となります。ここでは3つめの「トイレ」に絞ってご紹介しましょう。
アイデア出しの作業に、トイレの個室で座ることが効果的だと説明しているのは、脳科学者として幅広い活動を行なっている茂木健一郎氏です。茂木氏によれば、ひらめきは “集中したあとのリラックス” で生まれるとのこと。脳を整理整頓して集中するための回路は「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれますが、これはスマートフォンなどから切り離された環境によって活性化するのだそうです。
たとえば、仕事中にアイデアが出なくて行き詰まったときは、トイレに移動して個室にこもってみてはいかがでしょうか。メモ帳とペンを持ち歩くようにすれば、その場でひらめいたアイデアもストックできますね。
3. リラックスしながらの読書には「森」が適している
読書をする場所を明確に決めている人は少ないかもしれません。通勤時の電車の中、寝る前のベッド、休日のランチタイムなど、空いた時間に読もうというスタイルの人のほうが多いのではないでしょうか。
しかし、やはり読書にも最適な環境というものがあります。それは「森の中」です。
特に小説やエッセイを読む場合、勉強や仕事とは異なり、集中だけでなくリラックスできる環境が適しています。そして、森林などの緑には、心理学的に気持ちを穏やかにしてリラックスさせ、柔軟性を持たせる効果があるのです。
脳科学評論家の澤口俊之氏は、インタビューで「木々から発散されるフィトンチッドという物質がストレスを緩和する」と話しています。また「緑の多い自然を歩くことで、ネガティブな反復思考を引き起こす脳の前頭眼窩皮質(ぜんとうがんかひしつ)の活性化が収まる」とのこと。
「のんびりとリラックスしながら読書がしたいな」という人は、ぜひ本を片手に、近くの森など自然豊かな場所へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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ひとりで作業をするからといって、必ずしも自室やカフェが良いとは限りません。作業の内容を考えて、それに適した場所に身を置くことが大切なのですね。
(参考)
東洋経済オンライン|カラオケボックスで進む「意外な使われ方」
CANARY|簡単!速い!仕事がはかどる!精神科医が教える4つの時間術
日経クロステック|三上で行こう
ウェブ電通報|思いつく、は才能なのか?
環境省-エコジン|2016年6・7月号 VOLUME.53 エコジン・インタビュー
【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。