習慣化に3日で挫折する人としない人では「サボったあとの対処の仕方」が全然違う

中島輝さん「挫折しない人がやっているサボったあとの対処の仕方」01

古くから三日坊主という言葉があるように、習慣化が成功するか失敗するかを分ける山場は、習慣化に取り組み始めて数日後に訪れます。この時期を「習慣の反発期」と呼ぶのは、最新刊『習慣化は自己肯定感が10割』が注目を集める心理カウンセラーの中島輝(なかしま・てる)さん

私たちはなぜ三日坊主になってしまい、どうすればその山場を乗り越えられるのでしょうか。中島さんは、自己肯定感を支える要素のひとつ自己受容感を高めることこそが何より大切だと言います。

構成/岩川悟・清家茂樹 写真/川しまゆうこ

習慣化の失敗を招きやすい「習慣の反発期」

習慣化は自己肯定感を高めながら行なうとうまくいく。習慣化成功までの66日間の過ごし方』でお伝えしたように、習慣化のプロセスには6つのステップがあり、それぞれが、自己肯定感を支える「6つの感」と深く関連しています。「6つの感」とは、「自尊感情」「自己受容感」「自己効力感」「自己信頼感」「自己決定感」「自己有用感」の6つ。

そのうち特に悩む人が多いと思われる三日坊主の問題が訪れるのは、自己受容感(ありのままの自分を認めて受け入れる感覚)が関わる2つめのステップです。新たな習慣に取り組み始めて、2日、3日すると、誰もが「なんか面倒くさいな」「今日は忙しいから後回しにしよう」といったぼんやりした拒否感とともに、習慣の反発期を経験します。なぜかと言うと、脳は現状維持が大好きだからです。

中島輝さん「挫折しない人がやっているサボったあとの対処の仕方」02

人間の脳は変化を嫌がり安定を求める

前回の『習慣化は自己肯定感を高めながら行なうとうまくいく。習慣化成功までの66日間の過ごし方』で、「長期増強」について触れました。新たな習慣を持続させるうちに、脳内の神経細胞と神経細胞の結びつきが強くなっていく、と。この現象について、神経心理学者ドナルド・ヘッブは、「お互いに発火した神経細胞はつながり合う」と表現し、「ヘッブの法則」として知られています。

習慣化が実現すると、脳内でもはっきりと物理的な変化が起きているという現象は、非常にロジカルで納得できるものです。しかし、ここにはひとつ問題があります。それは「お互いに発火した神経細胞はつながり合う」という「ヘッブの法則」を起こすには、大きなエネルギーが必要になってくるということです。

ところが、起きているあいだは途切れることなく膨大な情報量を受け取り、処理しなければならず、眠っているあいだも情報と記憶の整理に勤しむ私たちの脳は、基本的に省エネモードで働くようできています。つまり、脳は過去の記憶に基づき、無意識のうちに行動できる状態=すでに習慣化されたやり方を好むのです。

もちろん、脳があなたに語りかけてくることはありませんが、もし、話したら? と仮定すると……、習慣化を始めて2日め、3日めと意志の力で新習慣に取り組む姿を見て、こんなふうにつぶやくはずです。

「そんなに頑張って新しいことをしなくても、いままでのやり方でなんとかなってきたんだから、いいじゃない」
「勉強なんかやめて、ほら、いつもみたいにぼーっとスマホを見ようよ」
「負荷のかかる運動はしんどいよ。ごろごろしなよ」

これが三日坊主の原因で、脳の仕組みから考える自然な反応ですね。こうしたささやきに説得されて、自分で決めた新習慣への取り組みをサボってしまうのはめずらしいことではありません。

でも、この小さな挫折のあとに習慣化のサイクルの大きな分岐点が待っています。そのまま「もう、どうにでもなれ」と、意志の力で頑張った数日間の取り組みを手放し、新習慣を忘れてしまうのか。翌日には、「昨日は昨日、休んじゃう日もあるよね」と切り替えて、再び習慣化のサイクルに戻るのか。このとき、どちらのルートを選ぶか、三日坊主になってしまうかどうかに強い影響を与えているのが、ありのままの自分を認める自己受容感です。

中島輝さん「挫折しない人がやっているサボったあとの対処の仕方」03

まじめに考える人ほど息抜きをしよう

反発期にやってくる新習慣への反動に対して「絶対にやらねばならない」というマインドで対抗しようとすると、気持ちが折れて、習慣も途切れてしまいます。それは、どうしても誘惑や用事、心のささやきによって小さな挫折はやってくるからです。

大切なのは、1日、2日とサボってしまったあと、自分を責め、自己嫌悪に陥ってしまわないことです。心理学の研究でも、サボった事実よりもそのあとの対処の仕方が習慣化を頓挫させる大きな要因になっていることがわかっています。

たとえば、自己肯定感に関する私のセミナーに通っている受講生のHさんは、さまざまなダイエット方法にチャレンジしてはうまくいかず、悩んでいました。私やスタッフからすると「ダイエットが必要かな?」と思う体型なのですが、本人は身体を引き締めたいという思いが強く、話題の方法をいろいろと試しているそうです。

糖質制限ダイエット、特定の食べ物を使った○○ダイエット、自重トレーニングダイエット……。でも、どれも習慣化せず、本人の納得のいく成果にはつながりませんでした。頑張ってもうまくいかない理由はどこにあると思いますか? Hさんからそんな質問を受けたとき、彼女のダイエット習慣への取り組みを聞き、すぐに気づいたのが、小さな挫折のあとの対処でのしくじりです。きまじめな人ほど、挫折のあとにより厳しい目標を掲げてしまいます

「今日はケーキを食べてしまったから、明日からはこんにゃくだけで糖質ゼロ生活!」
「朝、忙しくてトレーニングできなかったから、夜、倍の負荷をかけよう!」

するとどうなるでしょう? 無茶な目標へのチャレンジは間違いなく失敗します。その結果、ますます自分を責め、自己嫌悪が増していき、自己受容感が低下。防衛本能が働き、取り組んでいた習慣そのものを中止することで、自分を守ろうとするのです。

Hさんのように「習慣の反発期」に習慣化が頓挫しやすい人は、きまじめで決めた習慣を守ろうという意志の強いタイプです。でも、それが自己受容感の低さにもつながっています。なぜなら、誰にでも起こる小さな挫折をうまく受け止められず、自分を責めてしまうからです。

逆に、自己受容感が満たされている人は、失敗し、つまずいたときも、それを受け止め、気持ちを切り替え、再び目指している方向に歩み出すことができます。これは「たまには休んでもいいよね」「完璧を求めすぎないことも必要なんだよ」「そうだよね、サボっちゃうときもあるよね」と、しくじりはしくじりとして柔軟に受け止めてしまえるからです。

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できなかった自分にもOKを出す感覚を養う

自己受容感は「I'm OK, I'm not OK」と「できる自分/できない自分」のどちらも認める感覚なので、「昨日はできない自分だったけど、今日はできるかも」と切り替えながら反発期を乗り越えていく力になります。

習慣化のプロセスにおいて、習慣の種から芽吹いたばかりの苗が若木になっていくあいだと言えるこのステップは、最もトラブルが生じやすい時期。だからこそ、自己受容感を満たすような心理テクニックを使い、丁寧にお手入れをしながら習慣の苗を大切に育んでいきましょう。

そこで、これから自己受容感を満たしていく心理テクニックを紹介します。それは「セルフ・コンパッション」を養う「フォー・グッド・シングスというテクニックです。コンパッションは共感や同情を意味し、セルフ・コンパッションは「自分を受け入れる、自分を思いやり、慈しむ感覚」のこと。つまり、自己受容感を満たすのに重要な役割を担っている感覚です。

セルフ・コンパッションをもつのに大切なのは、自分を必要以上に責めないおおらかさを育むこと。そのためにおすすめしたいのが、「フォー・グッド・シングス」。これは1日の終わりに、その日にあった3つのいいことを思い出し、ノートに書き出すという「スリー・グッド・シングス」というメソッドの改良版です。

「スリー・グッド・シングス」では……

「朝、駅に向かう道すがら見えた景色がきれいで、清々しい気持ちになった」
「近所の保育園の子どもたちのお散歩と遭遇して、ほっこりした」
「書店でおもしろそうな本と出会い、買ってきた」

といったように、ささやかながらもよかったことを書き出していきます。「フォー・グッド・シングス」では、よかったことを4つに増やし、1つのよくなかったことを書き出していきましょう

やり方としては、まずその日にあったネガティブな出来事を1つノートに書きます。そのあと、書き出したネガティブな出来事を囲むように、その日あったポジティブな出来事を4つ書いていきます。強く印象に残っているネガティブな出来事1つを、4つのグッド・シングスで包み込むようなイメージです。

中島輝さん「挫折しない人がやっているサボったあとの対処の仕方」05

ネガティブとの対比でポジティブが際立つ

たとえば……

「ダイエットしているのに、我慢できずパフェを完食しちゃった!」

  1. でも、本当においしかった!
  2. 我慢してきた気持ちが晴れて、スッキリした
  3. 持ち帰りのケーキを買わなかった自分は、偉いと思う
  4. 明日からまたダイエットがんばろう! とやる気になった

というふうに、ネガティブな出来事に前後してあったポジティブなことをピックアップしてもいいですし……

「ダイエットしているのに、我慢できずパフェを完食しちゃった!」

  1. 朝、いつも通り一駅分歩いたら、途中で愛嬌のある猫に会えた
  2. 仕事はばっちりタスクを消化できた
  3. 同僚から「このあいだの仕事よかったね」と言われた
  4. パフェが本当においしかった

ネガティブな出来事とは直接関係ないトピックを選んでもかまいません。大事なのは、たとえ習慣を途切れさせてしまう行動をとってしまったとしても、それ以上のよい出来事が自分にはたくさん起きていると自覚することです。すると、失敗を悔やみ、自己嫌悪を繰り返すネガティブな反すう思考に陥らず、気持ちを切り替えることができます。

スリー・グッド・シングスとフォー・グッド・シングスの違いは、ネガティブな出来事を中心に据えることで対比され、ポジティブが際立つ点です。その結果、「できる自分/できない自分」のどちらもあって当たり前と感じることができ、失敗や挫折を経験した自分を受け入れられるようになっていきます。つまり、セルフ・コンパッションが養われるのです。

セルフ・コンパッションは自己受容感を満たし自己肯定感を高くします。そうすると、身体までもしなやかになり、楽しくラクに「習慣の反発期」を乗り越えられます。習慣はあなたの新しい人生の一歩になります。楽しく反発期を乗り越えましょう。

中島輝さん「挫折しない人がやっているサボったあとの対処の仕方」06

※今コラムは、中島輝 著『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)をアレンジしたものです。

【『習慣化は自己肯定感が10割』より ほかの記事はこちら】
結果ありきの習慣は自己肯定感を下げる。「習慣化したい、でも続かない」人の大きな問題点
習慣化は自己肯定感を高めながら行なうとうまくいく。習慣化成功までの66日間の過ごし方

【プロフィール】
中島輝(なかしま・てる)
「トリエ」代表。「肯定心理学協会」代表。心理学、脳科学、NLPなどの手法を用い、独自のコーチングメソッドを開発。Jリーガー、上場企業の経営者など1万5000名以上のメンターを務める。現在は「自己肯定感の重要性をすべての人に伝え、自立した生き方を推奨する」ことを掲げ、「肯定心理学協会」や 新しい生き方を探求する「輝塾」の運営のほか、広く中島流メンタル・メソッドを知ってもらうための「自己肯定感カウンセラー講座」「自己肯定感ノート講座」「自己肯定感コーチング講座」などを主催。著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)など多数。
https://ac-jikokoutei.com/

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