「本はたくさん読んでいるのに、内容をすぐ忘れて何にも活かせない」
「そもそも本の内容が頭に入ってこないから、読書は苦手だ」
こんな悩みを抱えているなら、本の内容をしっかり覚えるべく、「読書後」にちょっとしたルーティンを取り入れてみませんか。3つご紹介しますので、自分に合ったものをお試しください。
1. 読書後「40秒以内」に内容を復唱する
イギリス・サセックス大学の研究チームは2015年、情報をインプットした直後に「復唱する」と長期的に記憶できるということを、実験で明らかにしました。
実験で研究チームは、大学生の被験者へ26本のショートビデオを見せたそう。26本のうち20本については、ビデオを見せたあとに40秒の時間を被験者へ与えて、内容を頭に思い浮かべたり声に出して説明したりすることを求めました。一方で、残りの6本を見せたあとには時間を与えず、次の動画へすぐ切り替えたそうです。
さらに2週間後、研究チームは、動画の内容を覚えているかチェックするテストを被験者に対して行ないました。すると、視聴後に40秒間で内容の復唱を求めた20本の動画については、要点だけでなくかなり詳細なポイントまで被験者の記憶に強く残っていたとのこと。残りの6本の動画の内容は、記憶にほとんど残っていなかったそうです。
実験において主任研究員を務めたクリス・バード氏によれば、情報を記憶する際に活性化する脳の後帯状皮質という領域が、情報を復唱したときにも同様に活性化していたのだとか。長く記憶するには、情報をインプットした直後に復唱することがカギだったのです。
このことは読書においても当てはまるはず。本を読んだあと、40秒以内に内容を頭のなかで思い返したり、言葉で説明したりすることをルーティンにしてはどうでしょうか。せっかく読んでも内容をすぐ忘れてしまいがちという人は、一度試してみるとよいでしょう。
2. 重要なポイントは「歩きながら」思い返す
『「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術』著者であり、30代の10年間に毎年400冊を読破した経験をもつ弁護士の木山泰嗣氏は、著者が本で紹介している重要なポイントを忘れないために、本の内容をちゃんと覚えているか、歩きながらチェックしていると言います。
なぜ「歩きながら」チェックするのかというと、内容を忘れていてもすぐに本を読み返せない状況をつくり出すため。「本を開けないなんて、意味がない」とも思えますが、じつはここがミソ。
たとえば歩いている最中に「3つあるポイントのうち、最後の1つが思い出せない」と気づいたら、読んだ文章の文脈やストーリーを思い返しながら記憶をたどるようにするそう。そして、どうしても思い出せないときは、「自分なら何を重要なポイントとして挙げるか」を考えるのだと言います。
するといろいろなアイデアが出てくるので、そこで本に書かれている正解に至れればそれで良し。考えてもダメなら、読めるタイミングが来てからようやく本を開いて振り返るのです。木山氏いわく、そうしたプロセスを経て、本の内容が記憶に定着しやすくなるのだとか。
歩きながら本の内容を考え続けることは、脳科学的に見ても有意義であると言えそうです。脳科学的根拠に基づいた勉強法で2度も東京大学に合格した医学博士の福井一成氏によれば、歩くと足の筋肉が縮んだり伸びたりし、そのポンプのような動きによって脳への血のめぐりがよくなるのだとか。さらに、足裏の「気持ちいい」という感覚がβエンドルフィンという神経伝達物質の分泌を脳内で促し、海馬・側頭葉・前頭葉などに分布するA10神経を活性化。これにより記憶力が高まるのだそうです。
もし重要なポイントを忘れたくないなら、本を読んだあとに散歩しながら思い出す習慣を身につけてはいかがでしょうか。通勤電車のなかで本を読み、電車を降りたら歩きながら思い出す、というのもいいですね。
3.「SNS」でアウトプットする
速読トレーニングを提供する株式会社瞬読代表取締役の山中恵美子氏は、「アウトプット」を読書後に行なうと、本を読む効率が上がると伝えています。
アウトプットとは、読んだ本の内容を人へ伝えたり、重要なポイントをまとめたりといったようなこと。山中氏いわく、読書後のアウトプットを習慣づけると、ポイントを的確に把握しながら読もうとする意識が自然と働くそう。加えて、アウトプットの過程では、自分が深く理解している部分、逆によくわかっていない部分が明確になり、頭のなかで内容が徐々に整理されていくと言います。
また、ベストセラー『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』の著者である西岡壱誠氏も、アウトプットの重要性を伝えています。自分自身で情報を整理し、短文にまとめ直してアウトプットする――そんな「能動的な読書」が大切だとか。たとえば「著者が伝えたかったことは何か」をひとことに要約して表現できなければ、それはただわかった気になっているだけなのだそうです。
山中氏は、アウトプットの手段としてSNS、特にTwitterをすすめています。1ツイート140文字以内という短さが、気軽にアウトプットするのに向いているからです。たしかに、普段ツイートをするのと同じ感覚で、抵抗感なく実践できそうですよね。ただし書きたいように書いてしまうと字数がオーバーしますので、西岡氏が説明しているように、本の内容に関する要約から始めてみましょう。
さらに、ハッシュタグ機能も活用するとよい、と山中氏。たとえば「#読書日記」「#読書記録」といったタグで検索すれば、自分と同じように、読んだ本についてアウトプットをしている人のツイートを見ることができます。自分のツイートにもそうしたタグをつけて、可能であれば、他者と議論したりフィードバックをもらったりする時間を、読書後に設けるとよいでしょう。そうすれば、「読んでも忘れる」という悩みとは無縁になれるはずですよ。
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読書後に行なうべきルーティンを3つ紹介しました。読んだ内容を忘れないためには、実践して損はないものばかりです。読んだ本の記憶がすっぽり抜け落ちてしまうことで悩んでいる方は、どれかひとつでもぜひやってみてくださいね。
(参考)
University of Sussex|Sussex study reveals brain mechanism for creating durable memories
BBC|Improve your memory in 40 seconds
東洋経済オンライン|本を「読んだ端から忘れる人」が知らない記憶術
福井一成 (2018), 『改訂版 東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法』, KADOKAWA.
ZUU online|東大生が無意識のうちに実践する読書術とは?西岡壱誠(現役東大生)
株式会社瞬読|読書アウトプットを何倍も効率化する驚くべきその方法とは?
株式会社瞬読|頭の良い人が実践している9つの読書術とは?効率的に知識を得る読書術のご紹介
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。