ビジネスのプロフェッショナルたちは、数字に強くなることの有効性をこぞって説いています。その際に、しばしば目にするのは「3つの数字」という言葉。
どうやら、デキるビジネスパーソンへの第一歩は、3つの数字を覚えることから始まるようです。数字で考えることの重要性とともに、詳しく説明しましょう。
なぜ数字が重要なのか?
リクルート社員時代は数字に関する社内勉強会で講師を務め、人気講座にした中尾隆一郎氏は、著書『数字で考えるは武器になる』(かんき出版)のなかで、数字で考えるようになると「説得力や伝える力が向上する・儲けるセンスが備わる・仕事のスピードや生産性が向上する」と述べています。
なぜならば、「数字」は曖昧さのない共通言語であり、計算感覚を高めるものであり、投資対効果※への意識向上に役立つから(※時間やお金などのインプットに対する成果のアウトプット)。中尾氏によると、経営者やマネジメント職の人々は、その重要性をしっかりと認識し、実際に「数字で考える」ことを習慣にしているそうです。
必要な「数字は3つだけ」覚えておけばいい
次に、冒頭で述べた「3つの数字」について紹介しましょう。
元 株式会社東レ経営研究所 社長(現 株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ 代表取締役)の佐々木常夫氏も、著書のなかで「数字に強いと仕事スピードが格段に速くなり、信頼や評価を得られる」と述べています。
たとえば「国内アパレルの市場規模はどんな感じですか?」と聞かれ、ただ「横這いみたいですね」と答えるより、
「前年比100.1%の9兆2,239億円です。2年続けて横這い推移のようですね」
と答えたほうが、具体性で理解しやすいですよね。こうした数字を把握できていれば、判断や意思決定までの時間を短縮できるし、「しっかり調べているな」「ちゃんと意識を向けているな」と、相手からも信頼されるはず。
佐々木氏いわく、もしも数字や暗記が苦手なら、自分の仕事現場で必要だと思われる数字を「3つ」だけ覚えておくといいとのこと。たとえば「〇〇を製造している会社」ではなく、
「創業40年で年商30億円、従業員100人の、〇〇を製造している会社」
と、3つの数字を入れるだけでもグッと印象が変わります。
売上や利益、価格と原価、市場規模、競合他社のマーケットシェア、セッション数、ページビュー数、ユーザー数、発行部数、実売部数などなど、ビジネスシーンに登場する数字はさまざまありますが、「3つ覚えるだけ」でいいなら、意外と簡単にできそうではありませんか?
知っておいたほうがいい「3つの “基準” の数字」
もうひとつ、「3つの “基準” の数字」について紹介します。
株式会社新経営サービス シニアコンサルタントの山本崚平氏は、著書『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』(あさ出版)のなかで、取引先や同僚との雑談も大切な仕事のひとつだと伝えています。
その際に重要なのが、「3つの “基準” の数字」なのだとか。 山本氏が説く、ビジネスパーソンとして知っておいたほうがいい「3つの “基準” の数字」は【世界各国のGDP】と【世界各国の国土面積】と【日本経済の地域格差】です。要点を説明しましょう。
1.【世界各国のGDP】
以下は、山本氏の著書(2020年3月6日出版)で紹介された「名目GDP※」です。
- 日本は約500兆円
- アメリカは、約21,00兆円で日本の約4倍
- 中国は約1,300兆円で日本の約3倍
- アメリカ、中国、日本に次ぐドイツは約395兆円で日本の約0.8倍
- その次のイギリスが約280兆円で日本の約半分
山本氏によれば、これらを細かく覚える必要はなく、太字で示したように日本の名目GDPが約500兆円であること、アメリカが日本の約4倍であること、中国が約3倍であることだけを覚えておくと、雑談力がグンと高まるのだそう。
(※名目GDPとは、国内総生産をそのときの市場価格で評価したもの。名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものが実質GDP)/p>
2.【世界各国の国土面積】
- 日本の国土面積は約38万平方キロメートル(377,971㎢)
- 世界一広いロシアは約1,710万平方キロメートルで日本の約45倍
- 2番目に広いカナダは約998万平方キロメートルで日本の約26倍
- 3番目に広いアメリカは約983万平方キロメートルで日本の約26倍
- 4番目に広い中国は約960万平方キロメートルで日本の約25倍
こうして見ると「日本はちっちゃいなぁ」と感じてしまいますが、実際には日本の国土面積は194カ国中61位で、真ん中よりも上位に位置しています。さらにいえば、本州は約23万平方キロメートルあるので、島国に限れば世界第7位の大きさなのだとか。
(参考:前出の山本氏著書と、外務省|(キッズ外務省)面積の大きい国)
たとえば、グローバル化する社会について雑談中に、これらのデータを会話に加えてみるとこうなります。
「日本の約45倍も国土面積が広いロシアや、約25倍もある中国が近隣なだけに、日本は小さな島国だと思われがちですが、一応ランキングは194カ国中61位で中の上なんですよね」
あるいは、
「日本の国土面積は約38万平方キロメートルで世界の61番目ですが、島国に限れば本州の大さは世界第7位なんだそうですね」
といった具合。 相手の興味を引きながら、さりげなく数字に意識的であることをアプローチできそうです。
3.【日本経済の地域格差】
各都道府県当たりどれだけ稼いでいるかを示す、「県民経済計算」という指標があるそうです。山本氏によると、2016(平成28)年度のデータは次のとおり。
- 東京都は約105兆円(1044700億円)で全国1位
- 最下位は鳥取県で約1.9兆円(186407億円)でその差は約55倍
- 大阪府は約40兆円(389950億円)
- 愛知県も約40兆円(394094億円)
また、同指標における県民ひとり当たりの所得(2016年度)は次のとおり。
- 東京都は534万8000円
- 鳥取県は240万7000円と倍以上の差があり
数字は、明らかに東京1強と地方の弱体化を示しています。これらの数字を知ることで、国全体の経済状況を把握でき、他者に説明する際にも役立つはずです。
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仕事を速くして信頼感を高める「3つの数字」と、雑談力をグンと高め、世界と日本の状況把握や説明に役立つ「3つの “基準” の数字」を紹介しました。ぜひご活用くださいね。
(参考)
中尾隆一郎著(2019),『「数字で考える」は武器になる』,かんき出版.
山本崚平著,(2020),『商談・会議・雑談でなぜか一目置かれる人が知っている「数字」のコツ』,あさ出版.
佐々木常夫著(2017),『40歳を過ぎたら、働き方を変えなさい』,文響社.
ZUU online|知っておきたい、雑談で役立つ「基準の数字」3つ
市場調査とマーケティングの矢野経済研究所|国内アパレル市場に関する調査を実施(2019年)
大和ネクスト銀行|今さら聞けない 名目GDPと実質GDPの違いとは何か
外務省|(キッズ外務省)面積の大きい国
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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