「SNSで常に誰かとつながっている状態が息苦しく感じる」
「ウェブ会議だと発言の意図を読み取れず、気苦労が絶えない」
このように、オンラインでのコミュニケーションに疲れている人はいませんか? コロナ禍による自粛生活で人と直接話せる時間が減ったために、疲れを感じやすくなった人もいるかもしれませんね。
そこで今回は、人とのやり取りで疲れたときにできる「10のしないこと」を考えてみました。「するべき」ではなく「しないこと」なので、精神的な負担が少なく気軽に実践できますよ。では、さっそく見ていきましょう。
1. 楽しくない付き合いを無理に続けない
日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子氏は、「ケンカしたわけでも、嫌がらせを受けたわけでもない」けれど「話し終わったらどっと疲れる」人との付き合いは思いきってやめたほうがいいと言います。たとえば、次のようなことをしてくる相手とは付き合い続けるべきではないとのこと。
- こちらの話をきちんと受け止めない
- 全部、自分の話にすり替える
- 何かと自分のほうが優れているとマウントをとる
ビジネスの付き合いだと完全に断つのは難しいかもしれませんが、プライベートなら距離を置くといった対策ができます。不快な感覚を無視せず、いま一度、自分の人間関係を振り返って整理してみましょう。
2.「即レス」に縛られない
ビジネスシーンでは特に、「即レスする人=仕事ができる人」という風潮があるため、「早く返信しなくては……」というプレッシャーは大きくなりがちです。しかし即レスできているということは、言い換えれば仕事をいちいち中断しているということ。大室産業医事務所代表の大室正志氏は、即レスをすると複数の作業を同時にこなすマルチタスクの状態に陥るため、脳は疲れてしまい、作業効率が落ちると言います。
もしあなたが即レスに縛られて人とのやり取りに疲れているなら、つながりを断つ時間を意識的に設けるとよいのだそう。たとえば仕事中なら、「この時間は作業に集中しているから返事ができない」と、あらかじめメッセージを送ってしまうのです。そうすれば、疲れが軽減されて作業もはかどるようになるため一石二鳥ですよ。
3. SNSの通知をオンのままにしない
主にプライベートでのコミュニケーション過多に疲れているなら、SNSの使い方を見直すとよいと、大室氏は言います。
特に通知設定には注意が必要で、同氏によればなるべくオフにしたほうがいいとのこと。たしかに通知を常時オンにしていると、「いいねを押さないと」「リプライしないと」「こちらも何か投稿しないと」と追い込まれてしまうかもしれませんね。
SNSの通知は便利な機能です。しかし人とのやり取りに疲れているときは逆効果。通知設定を上手に使いこなして、快適な状態を保ちましょう。
4. 空気を読んで言いたいことを我慢しない
経済コラムニストの大江英樹氏によれば、相手の表情などがどうしてもわかりにくいオンライン上でのやり取りは、発言の真意が伝わりにくい面があるのだそう。「話の内容がわかりにくいが、聞き返すのも気まずい」「発言していいタイミングかな?」と困った経験をしているのはあなただけではないのです。
そこで、組織改革支援を行なう株式会社スコラ・コンサルトは、次のような方法で意見を述べることをすすめています。
- 話の内容が理解しにくい場合
→「○○ということで合っていますか?」と要約して確認する。 - 発言したいことがあるもののためらってしまう場合
→「テーマから少しそれてしまうかもしれませんが」と枕詞を添える。
少なくとも、伝えたいことはしっかりと伝えられるようにすれば、疲れもきっと軽減されるに違いありません。
5. 相手の顔色をうかがわない
ウェブ会議中に発言して相手が無反応だったとき、「これでよかったのかな」「怒らせてしまったのかな」と、相手の顔色をうかがう人もいるはず。しかし、それは意味のないことだと心理カウンセラーの大嶋信頼氏は述べます。なぜなら、人の心は白黒の両極端だけで表せるほど単純なものではないからです。
そんなとき、前出のスコラ・コンサルトによれば、「どういった問題点がありますか」「コメントをお願いします」と意見を具体的に求めるとよいそう。相手の顔色をうかがうことをやめれば、疲れることはなくなるでしょう。
6. 設備環境が悪い状態を放置しない
経済コラムニストの大江英樹氏によると、オンラインでのやり取りは、通信回線やカメラ、マイクの性能といった設備環境の影響を受けやすいのだそう。いくら積極的にコミュニケーションをとろうとしても、回線が遅かったり、雑音が多かったり、画質がクリアでなかったりすれば、伝わる力は弱まります。
オンラインでのやり取りに疲れている人は、自分がどう振る舞うかだけでなく、物理的な環境を見直すとよいかもしれませんね。
7. メールの作成に時間をかけない
メールはチャットと比べて長文になりがち。だからこそ、どうやって書いていいかわからないと過度に緊張することがあると、ブックライターの上阪徹氏は述べます。
特にビジネスメールは、「失礼のないように丁寧に書かなければ」と思い余計に疲れてしまいやすいもの。そこで、メールの作成時間をコンパクトにして疲れを減らす工夫をしてみましょう。ビジネスインストラクターの鈴木真理子氏は、次の3点を取り入れるだけでも時間を短縮できると言います。
- タイトルに結論を入れる(例:調査結果のご報告)
- 先に結論を書く
- 箇条書きにする
簡潔すぎて心証を悪くしそうだと心配な場合は、「取り急ぎ、要件のみ失礼します」といったひとことを添えると安心ですよ。
8. 誘われるのを待たない
「人の誘いを断れない」「人の誘いにスケジュールを乱されたくない」という人は、いっそのこと自分が「誘う側」になったほうが気は楽になると公認心理師・産業カウンセラーの大美賀直子氏は言います。
もし誘う側になれたら、あなたの気が向いたときに誘うようにすればいいだけ。無理に相手の誘いに乗ることなく「この日は都合が悪いから、今度こちらから連絡するね」と自然に言えるようになることでしょう。
9. 相手の都合を無視して連絡をしない
たとえば仕事が忙しいとき、急ぎでない要件のメールや電話が来たら相手はどう思うでしょうか? 上阪氏は、たとえビジネスの話であっても「いま連絡する必要があることなのか」と印象を悪くする可能性があると言います。そうなると、ギスギスした疲れるやり取りになってしまいかねません。
どうしても相手にとって忙しい時間帯に連絡する必要があるなら、「忙しいタイミングで申し訳ありません」といったひとことを添えるようにしましょう。よい関係を続けるためには、連絡をするタイミングにはしっかり配慮したいものです。
10. 家でこもりっきりにならない
大室氏によると、「同じことの繰り返し」は脳の同じ部分ばかり酷使してしまうため、脳疲労の原因になるのだそう。特に、コロナ禍で自粛生活が続く昨今は「人と話すといえばオンラインばかり」「パソコンやスマホで長時間SNSを見ている」といったように同じ状況が続きやすく、疲れを感じやすいのも当然。
そこで簡単に始められる打開策が散歩です。外を歩いて景色を眺めるだけでも脳の幅広い部位に刺激を与えられますよ。疲れているからと家にこもりっきりになるのは、むしろNGです。
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それでは、これまでにご紹介した “人とのやり取りで疲れたときの「10のしないこと」” を振り返ってみましょう。
過度なコミュニケーションから孤独まで、人とのやり取りに疲れる原因はさまざまですが、どれも「しないこと」を決めるだけで負担を軽減させられます。さっそく、できることから始めてみてください。
(参考)
東洋経済オンライン|「疲れる友人」となぜか付き合い続ける人の心理
ダイヤモンド・オンライン|コロナ収束後もオンラインでの「会議、セミナー、飲み会」は定着する?
Precious.jp|「オンラインだと上手く発言できない…」テレワークやWEB会議での困りごとの解決策は「アレ」がポイントだった
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【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。