「なぜ、あの人は頭がいいのに失敗したのだろう?」
「なぜ、成績が悪かったあの人が成功したのだろう?」
もしかしたら、その答えは “視点の違い” にあるかもしれません。順を追って説明しましょう。
頭のいい人がはまりかねない落とし穴
『GRIT 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』(日経BP)の共著者、リンダ・キャプラン・セイラー氏はこう説きます――「高成績・高学歴ではなくとも十分に成功するチャンスはある。あなたの10倍頭がいい人より、むしろ、あなたのほうが成功しやすい」
同氏がこう述べる理由は、(子どもの頃から)なんでも容易にできてしまう頭がいい人ほど努力を怠る傾向があり、そんな人ほど大人になって思わぬ障害にぶつかると、すぐに行き詰まってしまうから。セイラー氏によれば、天才と呼ばれた人が成功する確率は、わずか2%なのだとか。
『非学歴エリート』(飛鳥新社)の著者でMCJ社長兼最高執行責任者の安井元康氏も、社会に出たら人間力や行動力、探求心などが重要視されるので、高学歴だからといって将来は安泰ではないと述べています。ちなみに “人間力” は、
- 知的能力的要素:自ら学力や知識を高め続ける・論理的思考・創造
- 対人関係力的要素:コミュニケーション・リーダーシップ・規範意識・他者尊重
- 自己制御的要素:意欲・忍耐・自分らしい生き方・成功への追求
といった要素で構成されるとのこと(※内閣府「人間力戦略研究会報告書」, 2003年4月の資料参考)。
IQには〇〇が反映されていない
また、東京大学先端科学技術研究センター教授の中邑賢龍氏は、これからの社会では現状を把握し、課題解決できることが求められるが、その際に必要な創造性や実行力(物事に取り組み、やり遂げる力)が、いまの知能検査にはあまり反映されていないと述べます。
加えて中邑氏は、「知能検査と同じような課題を練習すれば成績は上がる」といった具合に、IQはさまざまな要因で変動してしまうので、人間の総合的な能力を正しく反映しないとも伝えています。
「頭がよくても失敗する人」「ごく普通でも成功する人」の違いとは?
一方で前出のセイラー氏は、バスケットボール界の “レジェンド” マイケル・ジョーダン氏、元アメリカ合衆国国務長官のコリン・パウエル氏、映画界の巨匠スティーブン・スピルバーグ氏といった名だたる成功者の名前を挙げ、彼らが幼少期にごく普通の子どもだったと伝えています。ただし、彼らにはほかにも共通点があるのだとか。
それは、誰にも負けない情熱、努力、根性、そして忍耐です。セイラ―氏はこれらの要素を「グリット(GRIT)=やり抜く力」と表現します。グリットは、心理学者でペンシルバニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が、「成功には才能やIQや学歴より、個人のやり抜く力こそが重要」と説いた理論です。
じつは、この “やり抜く力” の先には、必ず未来があります。たとえば中部産業連盟の “やり抜く力” を身につける研修では、「やり抜いて成功した未来を描きチャレンジ度を高める体験演習」や、「自分の未来を実現するための対話演習」といったプログラムが掲げられています。先述した人間力や行動力、探求心なども、未来を描くからこそ発揮される力ではないでしょうか。
逆に、IQも学歴も高いのに成功できないと悩むのは、過去からの自分を引きずっている状況だと言えるかもしれません。つまり、「頭がよくても失敗する人」と「成績が悪くても成功する人」の違いは、過去に目を向けているか、未来に目を向けているかの違いというわけです。もちろん成功に向かうのは、未来に向けた視線です。
頭のいい人は “これ” をすれば最強!
では「頭がよくてはダメなのか」と言えば、それはまったくもって違います。頭脳明晰なあなたが、謙虚に努力して物事をやり抜けば、誰よりも素晴らしい成功を収められるはず。頭がよくて高学歴な過去からの自分ではなく、やり抜いて成功した未来の自分に目を向けてみてください。
ちなみに臨床心理士から作家に転身したアリス・ボーイズ博士は、頭がいい人にこんなアドバイスをしています。
自分の弱点である知性以外のスキル(たとえば人間力、行動力、探求心、創造力、やり抜く力など)を習得する際には、自分の強みである知性を存分に活かす。
精神論は気にせず、あなたらしく具体的かつ効率的な改善プランを立てて、実践してみましょう!
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物事がうまくいかないときは、自分が過去ばかりを向いて行動していないかどうか、俯瞰してみてくださいね。
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|知能の高さがキャリアの成功を妨げる5つのパターン
カオナビ人事用語集|【成功者の必須条件】グリット(GRIT)とは?「やり抜く力」に世界が注目
一般社団法人中部産業連盟|自律心と粘り強さを磨き、「やり抜く力」を身につける研修
ダイヤモンド・オンライン|「IQが高い人は頭がいい」という大きすぎる誤解の正体
東洋経済オンライン|「高学歴の真の価値」を知る人と知らない人の差
日経ビジネス電子版|最後に笑うのは「グリット」を持った人だ
文部科学省|「人間力」(PDF)
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