脳が衰えやすい人の「危険な仕事習慣」。脳は何歳になっても成長する一方で、老化も速い

加藤俊徳先生「新しい発見で脳を成長させる」01

一般的に、「年齢を重ねるごとに脳は衰える」と言われます。でも、それは完全な間違いであり、「いくつになっても、使えば使うほど脳は成長する」と指摘するのは、脳内科医の加藤俊徳(かとう・としのり)先生です。

でも、その一方で「脳は衰えるのも速い」のだとか。脳を衰えさせることなく成長させ続けるにはどうすればいいのでしょうか。加藤先生は、「新しい発見」をキーワードに挙げます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

年齢にかかわらず、使えば使うほど脳は成長する

「脳細胞は一度死ぬと再生しないため、年齢を重ねるごとに脳は衰える一方だ」。そんな話を聞いたことがあると思います。たしかに、死んだ脳細胞が再生することはありません。でも、だからといって脳が衰えるだけというのは間違いです。使えば使うほど脳は成長するからです。

私は過去に1万人以上の人の脳を診断・治療してきましたが、最近の例で言えば、2020年に8人の学生の脳を分析しました。その学生たちには、1ヶ月間にわたって1日に2時間、好きなラジオを聴いてもらいました。そのあと、脳をMRIで見てみると、8人全員の脳が成長していたのです。

しかも、おもしろい事実もありました。学生たちはラジオを聴いていたのですから、私自身、脳の言語能力をつかさどる部分が発達するかと予想していたのですが、なんと非言語能力をつかさどる部分が特に発達していたのです。これは、パーソナリティーの姿や表情が見えないために、それらを脳が補完しようとした結果ではないかと推測しています。

もちろん、こういった例は学生など若い人だけに限られたものではありません。私の患者のなかに、「先生、もっと私にやることはないですか……?」とこぼす80歳の人がいました。これまでもとても活動的な人だったということで、これまでやったことがないドラムをその人にすすめてみたのです。単純に、毎日をもっと楽しめるのではないかと思ったからです。

ドラムを叩くには、両方の手足を同時に使い、かつ違ったリズムで動かす必要がありますから、初心者にとってはとても複雑な作業です。そして、ドラムを始めた1年後、その人の脳は、両手足の動きをつかさどる部分がすごく成長していました。こういった例は数えきれないほどあり、年齢にかかわらず、使えば使うほど脳は成長するのです。

加藤俊徳先生「新しい発見で脳を成長させる」02

成長が速い反面、脳は「衰えも速い」

しかし、喜んでばかりもいられません。先の学生のケースは、ほんの1ヶ月で脳が成長したことを示しています。そのように成長が速いということは、脳には高い柔軟性があるということ。つまり、脳は「衰えも速い」とも言えるのです。

インフルエンザにかかったりしつこい風邪をひいたりして1週間ほど仕事を休んだあとで久しぶりに会社に出勤したときに、「どうも仕事がはかどらなかった」「普段なら考えられないようなうっかりミスをしてしまった」といった経験はありませんか? それは、いつもの仕事から1週間離れたことで、その仕事をうまくこなすための脳が衰えたことが原因です。そのあと、また以前のように仕事ができるようになるのは、再び脳が成長し直したと見ることができます。

でも、仕事に関することで言えば、若いうちはそれほど心配する必要はありません。なぜなら、仕事においては次々に新しい情報に触れることが多いからです。同じ会社に勤めていたとしても、違う部署への異動があれば仕事の内容はがらりと変わります。あるいは、同じポジションだったとしても、顧客や携わるプロジェクトは変わっていくものです。まったく同じ仕事を延々と続けるだけの人は少数派でしょう。

ですが、出世して役職に就くと話は変わります。もちろん人にもよりますが、出世すればするほど、現場に行かない、新しい情報に触れない、書類に判子を押すだけ……というケースも珍しくありません。そうしてラクをし続けると、脳はどんどん衰えていくことになります。実際、40代後半くらいから、脳の使われない部分の新陳代謝が悪化して老廃物が沈着し、老化が進むことも研究からわかっています。

加藤俊徳先生「新しい発見で脳を成長させる」03

脳の成長に欠かせない「自分にとっての新しい発見」

もちろん、「自分はまだ若いから大丈夫」とたかをくくってはいけません。たとえ若くとも、なんのチャレンジをすることもなくマンネリした仕事をただこなすだけでは、当然ながら脳は衰えていくことになります。

大切なのは、常に「新しい発見」をし続けることです。ここで言う「新しい発見」とは、何か世界的な新しい発見をすることなどではなく、「自分にとっての新しい発見」です。自分にとって新しいものに触れ、「何これ?」「おもしろそう!」というふうに新鮮さを味わうのです。

そうすると、私が「潜在能力細胞」と呼んでいる脳細胞が活動を始めます。潜在能力細胞とは、胎児の頃から使われずにいる未熟のままの脳細胞のことを指し、これらが活動を始めることで、大人になってからも脳は成長できるのです。逆に言えば、「新しい発見」がいっさいなければ、やはり脳は衰える一方になってしまうでしょう。

みなさんは、日々、「新しい発見」をしていますか? 仕事に限らず、プライベートでのことでもかまいません。職種によっては、流れ作業のようなマンネリしやすい仕事に携わっている人もいるでしょう。そうであるなら、プライベートで「新しい発見」を探してみてください。そうすることが、あなたの潜在能力細胞を活性化させ、脳の成長を促すことにつながります。

加藤俊徳先生「新しい発見で脳を成長させる」04

【加藤俊徳先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
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センスは脳で磨かれる

センスは脳で磨かれる

  • 作者:加藤 俊徳
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【プロフィール】
加藤俊徳(かとう・としのり)
1961年、新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家であり、「脳番地トレーニング」を提唱する。小児から高齢者まで1万人以上を診断・治療。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後、慶應義塾大学、東京大学などで脳研究に従事し、「脳の学校」を創業。また、加藤プラチナクリニックにて、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法により、薬だけに頼らない脳トレ処方を行う。『ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本』(メイツ出版)、『「優しすぎて損ばかり」がなくなる 感情脳の鍛え方』(すばる舎)、『大人の発達障害 話し相手の目を3秒以上見つめられない人が読む本』(白秋社)、『1万人の脳を見てわかった! 「成功脳」と「ざんねん脳」』(三笠書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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