人間関係で動揺した心をひとり静かにクールダウンさせるコツ。“ある言葉” で冷静になれる

人間関係で動揺した気持ちに対処するために、1日の終わりに回想ノートを書いてみたもの

「もしかして私、嫌われてる?」「なにあの言い方。腹が立つ」――こういった些細な人間関係の動揺は、誰にでも経験があるのではないでしょうか。この程度のことなら、すぐに忘れてしまう人も多いかもしれません。

ただ、小さな不安やイライラも、積み重なればやがて大きなストレスとなります。そのせいで相手に怒りをぶつける、泣き出す、詰め寄るなどとっさに反応してしまったら、相手との関係性が悪くなるだけでなく、その場所で仕事がやりづらくなってしまうでしょう。

そうならないよう、人間関係で動揺したビジネスパーソンが、ひとりでこっそりクールダウンしたり、未来に向けて前向きになったりする方法を紹介します。

1.「コーピング・マントラ」をもつ

心の動揺をどうにか鎮めたいとき、その場ですぐにできる方法があります。それは、“自分の心を落ち着かせる言葉” を唱えるというもの。

参考になるのが、アンガーマネジメントにおける対処法です。(※アンガーマネジメントとは、怒りと上手に付き合うための心理的な教育およびトレーニング)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介氏は、ムカッときたときの対処法について、次のようにアドバイスしています。

怒りを感じたときは相手に反論するのではなく、たとえば心のなかで「大丈夫、大丈夫」「気にすることじゃないよ」「ドンマイ」「落ち着こう」などと、自分の気持ちを落ち着かせる言葉で、自分自身に語りかける

上記のような言葉をコーピング・マントラというのだとか(コーピング=切り抜ける、マントラ=呪文)。自分の心を落ち着かせるなら、どんな言葉でもいいとのこと。大切な人の名前を繰り返しつぶやくのもいいそうです。

(参考およびカギカッコ内引用元:Future CLIP/富士フイルム|言葉の力で、「毎日の怒り」をコントロールしよう。

動揺を覚え、コーピング・マントラを唱えているビジネスパーソン

“自分の心を落ち着かせる言葉” であるならば、怒りに特化せずとも、あらゆる心の動揺に使えるのではないでしょうか。

たとえば日本アンガーマネジメント協会認定・アンガーマネジメントファシリテーターの小野汐里氏は、「so what?」(だから何?)という言葉を、自身のコーピング・マントラとして愛用しているそう。

心の中で唱えると「小さなことにくよくよするのはやめよう!」と気持ちを落ち着かせるきっかけに

(参考およびカギカッコ内含む引用元:【公式】日本アンガーマネジメント協会|魔法の言葉でクールダウン

なると、小野氏は言います。

そこで筆者も、人間関係のさまざまな動揺に対処するべく、自分のコーピング・マントラを考えてみました。「これだ!」と思ったのは、物事にまったく動じない、強靭な自己肯定感の持ち主である友人の(以下)口癖と口調でした。

自分のコーピング・マントラを動じない友人の口調・口癖にしてみた絵図

「へー、そうなんだー。わー、すごーい」と真顔で淡々と抑揚なく言い
「本当は興味がない」とアピールする感じ。

実際に、他者とのコミュニケーションで動揺を覚えたとき(周囲に人がいなかったので小さな声で)つぶやいてみたら、なんだか「別にどうってことない」と思えて、少しだけ冷静さを取り戻すことができました。みなさまも、ご自身のコーピング・マントラを用意してみてはいかがでしょう。

2. 物理的に「相手との距離」をとる

人間関係のことで動揺したとき、もしも身動きがとれる状況であれば、その場から離れることをおすすめします。動揺の “元” を目の前にしたままで、心を落ち着かせることはそう簡単ではないからです。

前項で紹介したアンガーマネジメントにおけるクールダウンといえば、“6秒待つと理性が働き始めて冷静になれる” という「6秒ルール」が有名ですよね。ちなみに前出の小野氏は、イラっとしたとき6秒待つあいだ、前項で紹介した同氏愛用のコーピング・マントラを自分に言い聞かせるそうです(参考元:同上)。

ただ――6秒待ってもなお、相手が目の前で不快な言動を繰り返している場合、「むしろ、6秒我慢した分、逆に勢いがついてしまう」こともあると、元・陸上自衛隊衛生学校心理教官、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太氏は注意を促します。そして、同氏いわく

怒りの感情をやり過ごすには、6秒ルールよりも、直ちに「その場を離れる」。それが最も効果のある方法です。

とのこと。同氏の説明をもとに、その理由をまとめてみました。

  • 相手から攻撃されうる距離感⇒危険な状態⇒戦闘モードを解けない
    ⇒⇒⇒つまり、怒りが収まらない

  • 相手の攻撃が届かない距離感⇒危険が減少⇒戦闘モードを解ける
    ⇒⇒⇒つまり、怒りのピークが収まる

したがって、たとえばトイレに行ったり、コンビニに行ったり、電話のふりして席を外したりして、対象者から距離をとれば、自然と怒りが収まってくるそうです。

(参考およびカギカッコ内含む引用元:PRESIDENT WOMAN Online|「6秒間我慢しても逆効果」自衛隊メンタル教官が教える怒りを一瞬で消す"最も効果的な方法"

「頭にきた」とまではいかなくても、誰かの言動でわずかな心の動揺を覚えたら、さりげなく相手から距離をとり、自分のなかの警戒心を解いて、冷静に考えてみてはいかがでしょう。

 「動揺したらその場から離れろ!」 という教訓を文字とイラストで示したもの

3. 懐かしい記憶をたどってみる

なお、その場でいったん動揺を鎮められたとしても、あとでそのことをグルグルと考えてしまう場合があります。そんなときは昔を懐かしんでみるといいかもしれません。

東北大学教授、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長の瀧靖之氏によると、「過去を振り返るという行為は、同時に未来に向かって生きる力をつけるポジティブな行為ではないかと推測される」そうです。

なぜならば、過去の記憶をたどる際によく働く脳の領域(※)が、未来を想像している際に働く脳の領域と共通しているから(※前頭葉・側頭葉・後部帯状回など)。

(参考およびカギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「懐かしい」という感覚がストレス解消になる理由

楽しい記憶は未来への期待となり、ワクワクするような未来の想像は、楽しい記憶に基づいているのでしょうか。いずれにせよ、ネガティブな出来事のグルグル思考防止に一役買ってくれそうです。また、先述のとおり「対象から距離をおくこと」がクールダウンに有効なら、過去の回想もある意味、現在から距離をおくことになるかもしれません。

そこで、1日の終わりに楽しい思い出を懐かしみながらたどり、回想日記を書いていくことにしました。そうして実際にやってみたら――

過去の楽しかった・うれしかった記憶をたどり、それを回想日記に書いていく

十代のころ、田舎の友達と大都会の喧騒のなかでバッタリ会った過去を回想し、
それを3mm方眼罫のコンパクトなノート「Marumanのセプトクルール」に書いたもの。

なんだか、私小説を書いているような気分になりました。嬉しい記憶をたどるせいか、現在の気がかりな記憶はいったん消え、気分が高揚します。

1日の終わりにクールダウンするために書いた回想ノート

加えて、懐かしい記憶に癒された感覚もありますし、この先「なんとかやっていけそうだ」という少しの自信も不思議と湧いてきました。栄養たっぷりの食事のように、気分のいい記憶は、回想するだけでも私たちのエネルギーとなるのですね。そして、いい思い出づくりが、いかに大事かわかりましたよ。

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今回は、人間関係で動揺したビジネスパーソンが、ひとりでクールダウンする方法として、コーピング・マントラをもつこと、相手との距離をとること、懐かしい記憶をたどることを紹介しました。少しでもお役立てたら嬉しいです。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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