「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える、効果的な3つの方法。

「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える方法01

テキストを読んだり動画を見たりして「わかった」はずなのに、いざやろうとするとなぜか「できない……」。一生懸命理解したはずのことがテストや仕事に活かせず、お困りではありませんか? 「わかる」と「できる」のあいだには、なにか見えない壁があるように感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、わかったのにできないという現象が起こる原因を深掘りし、覚えた知識を自在に扱えるようになるコツをご紹介します。

「わかったのにできない」のはなぜか

わかったのにできない――こういったことが生じるのは、「わかる」と「できる」は異なることだからです。

グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏によれば、「単に『わかる』の状態で終わらせてしまうと、インプットしたことはほとんどすぐに忘れてしまう」のだとか。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|「わかる」と「できる」は全然違う。“本当に使える知識” はインプットだけでは身につかない

たとえばコミュニケーションに関する本を読んで「上手な説得の方法がわかったぞ」と思っても、その先何もしなければ、わかったはずの説得術は忘れてしまいます。忘れてしまえば、当然その方法で人を説得できるはずもありません。

では、わかる状態からできる状態になるには、何をすべきなのでしょうか? 田久保氏は、学びが定着しやすい学習方法を知る手がかりとして、下記の「ラーニングピラミッド」を紹介しています。

「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える方法02(画像引用元:同上)

ラーニングピラミッドとは、アメリカの国立訓練研究所が発表した研究結果で、受動的な学びよりも能動的な学びの方が学習定着率が高いというもの。具体的には

  • 講義・読書などでインプットしただけの情報は忘れやすく、
  • 人に教える・体験するなどでアウトプットした情報は脳に深く刻まれる

ことを表しています。

上記の図の数値に関しては諸説あるようですが、みなさんも実際に、「講義で聞いただけの内容は忘れたが、人に教えた内容はよく覚えていた」といった経験があるのではないでしょうか?

こうした現象が起こるのには、脳の仕組みが関係しています。脳科学者の池谷裕二氏によると、脳にインプットされた情報は、「短期記憶」という「一時的な保管場所」に記憶されるそう。そして「海馬」によって「『必要』と判断された情報だけが、大脳皮質に送られて長期保管」されるのだとか。

必要な情報かどうかが判断される基準は「生命の存続に役立つかどうか」。“生命維持に不可欠” とまでは言えない勉強や仕事の知識を、海馬に「必要な情報」と判断させるには、「何度も復習」して重要性をアピールする必要があるそうです。とりわけ「問題集を繰り返し解くような復習法」が効果的だとのこと。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|「復習4回」で脳をダマすことができる

まとめると、「わかっただけ」の状態と、「わかったのちにできるようになる」状態とのあいだには、下記のような違いがあると考えられます。

【わかっただけの状態】→ 知識を頭に入れただけの状態

(例)

  • 参考書を読んで、知識を頭に入れた(しかし、問題を解いてはいない)
  • 先輩から報告書の書き方を聞き、知識を頭に入れた(しかし、実践はしていない)

【わかったのちにできるようになる状態】→ 頭に入れた知識を使いこなせる状態

(例)

  • 参考書を読んだあと、問題を繰り返し解いて知識を使うことで、試験本番でも思い出せるようになる
  • 先輩から教わった知識を活かし、実際に報告書を書くことで、報告書の書き方が身につく

つまり、「わかったことができるようになる」とは、「インプットした知識を実際に使うことで、その知識が長期記憶する」ことだと言えるでしょう。

「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える方法03

「わかった! できた!」へと変える方法1. インプットとアウトプットの比率を「3:7」にする

ではここからは、「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変えるための、3つのコツをご紹介します。

1つめは、インプットよりもアウトプットに時間をかけることです。知識は頭に入れるだけでなく、使うことが重要だ――というのは先述のとおり。その具体的な時間配分として、脳科学にも詳しい精神科医の樺沢紫苑氏は、以下が最適だと伝えています。

インプットが3に対してアウトプットが7」。これが記憶をもっとも効率化する比率。

(引用元:STUDY HACKER|記憶効率を上げる黄金比は「3:7」だ。勉強に脳科学を取り入れるべし。

あくまで目安ですが、たとえば10時間勉強するなら、「インプット(読む・聞く)3時間」「アウトプット(話す・書く)7時間」ということ。思ったよりもアウトプット の割合が多く、驚いた方もいるのではないでしょうか。

仕事なら、業務マニュアルを読むよりも、読んで学んだ内容を同僚に説明したり、メモに書いたりするほうに。勉強なら、ただ教科書を読むよりも、問題を解くほうに。このように、知識を使うプロセスにより長く時間を割いてみてください。脳に入れた知識は何度も引き出し、いつでも使えるものにしていきましょう。

「わかった! できた!」へと変える方法2.  適切なタイミングで復習する

要領よく脳に記憶を定着させるため、「復習するタイミング」も工夫してみませんか?

前出の池谷氏いわく、一度インプットした情報を忘れたとしても、「思い出せなくなっているだけで、実は無意識の世界には保存されて」いるそう。保存期間は「1カ月程度」だとのこと。(カッコ内引用元:前出の「プレジデントオンライン」記事)

つまり、1か月以内に復習すれば、学んだことをムダにせずにすむわけです。

課題ごとに復習のタイミングを管理するのが億劫に感じるなら、「エビングハウスフセン」を使ってみてはいかがでしょう。記憶したことが時間とともにどのように忘れられていくかを示した「エビングハウスの忘却曲線」を参考に、高校生が考案した商品だそうです(参考:脳科学研究者・川島隆太氏の解説「Active Brain CLUB|記憶の定着を促すエビングハウス忘却曲線とは」)。

この付箋には、最初に学んだ日付に応じて、1日後、1週間後、4週間後の日付が書かれています。付箋を該当のページに貼っておけば、「そのページをいつ復習すればいいか」がひと目でわかるのです。筆者も使っていますが、非常に便利ですよ。

学んだ知識をすっかり忘れ去る前に、適切なタイミングで復習を繰り返し、「わかったはずなのに、できない!」事態を回避しましょう。

「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える方法04

「わかった! できた!」へと変える方法3. 人に教えるように説明する

英単語を暗記したのに、テストで書けない。上司から仕事のやり方を聞いて覚えたはずなのに、業務の進め方がわからない。こういったことはありませんか?

原因は、勉強や仕事のテーマを深く理解していないから。リバプール大学の心理学者、レベッカ・ローソン氏は、人が「自分が理解していないことを理解していると勘違いしてしまう」現象のことを、「説明深度の錯覚」と呼んでいます。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「TEDで話題の勉強法」が解説! “独学”最大の落とし穴「わかったつもり」が解決できる技術とは?

ローソン氏の、人の理解度を調べる研究では、身近なはずの自転車の仕組みについて、多くの人が「わかったつもりで理解していなかった」ことが明らかにされました。200人以上の学生と保護者を対象に、自転車の絵を紙にスケッチしてもらったところ、ほとんどの被験者が、自転車の構造がどうなっているか理解していなかったのです。(The University of Liverpool|The Science of Cycology Rebecca Lawsonよりまとめた)

『超・自習法-どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド-』の著者、スコット・H.ヤング氏は、「説明深度の錯覚は、より深い理解の妨げになることが多い」と指摘しています(カギカッコ内引用元:前出の「ダイヤモンド・オンライン」記事)。「わかった!」と思うと満足してしまい、それ以上深く考えなくなってしまうのですね。

そんな説明深度の錯覚を回避し、本質を深く理解するために役立つ方法として、ヤング氏は、「ファインマン・テクニック」を提案しています。

ファインマンとは、ノーベル物理学賞の受賞者であるアメリカの物理学者、リチャード・ファインマン氏のこと。ファインマン・テクニックは、ヤング氏が、ファインマン氏の学習プロセスを定式化したメソッドです。

方法は以下の通り。

  1. 理解したい概念や問題を、紙の一番上に書く。
  2. その下の余白を使って、その概念・問題を他の人に教えるかのように説明する。a.説明するのが概念の場合、それを聞いたことのない人にどのように伝えるかを考えてみる。 
    b.問題の場合、それをどうやって解くかを説明し(ここが重要な点だが)なぜその解法が自分から見て筋が通っていると思うかを説明する。
  3. 行き詰まったとき、つまり自分が明確な答えを書けるほど理解していなかった場合には、教科書やノート、教師、教材に戻って答えを見つける。

(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)

筆者は実際にファインマン・テクニックを使って、本記事のテーマである「わかる」と「できる」の違いについて理解を深めてみました。

「わかったのにできない」を「わかった! できた!」へと変える方法05

まず、テーマについて思いつくまま書き出したあと、説明しきれていない部分を見つけて資料を調べ、水色のボールペンで書き足しました。頭が整理され、わかったつもりでいたものの、じつは理解が不十分な部分をあぶり出せるというメリットが感じられましたよ。

「わかった」という状態を超えて、本質を深く理解し「行動できる」ようになるために、ファインマン・テクニックを利用してみてはいかがでしょう?

***
頭に入れた知識を話して書いて、「わかったはずなのに、できない」もどかしい状況を、抜け出しましょう。

(参考)
STUDY HACKER|「わかる」と「できる」は全然違う。“本当に使える知識” はインプットだけでは身につかない
グロービスキャリアノート|コロナ禍で差をつける!実践につながる社会人の効率的な勉強法
プレジデントオンライン|「復習4回」で脳をダマすことができる
STUDY HACKER|記憶効率を上げる黄金比は「3:7」だ。勉強に脳科学を取り入れるべし。
ダイヤモンド・オンライン|「TEDで話題の勉強法」が解説! “独学”最大の落とし穴「わかったつもり」が解決できる技術とは?
東洋経済オンライン|自分の無知を自覚していない人が残念なワケ
日本経済新聞|『使える脳の鍛え方』-成功する学習の科学
The University of Liverpool|The Science of Cycology Rebecca Lawson
コトバンク|忘却曲線
Active Brain CLUB|記憶の定着を促すエビングハウス忘却曲線とは

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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