「思わず勉強したくなる」学習環境の整え方。“この4つ” で学ぶ力はメキメキ上がる!

個性的な部屋で勉強する女性

新型コロナウイルス感染の影響で自宅学習が増えるなか、「家だと勉強に集中できない」と頭を抱える方は、決して少なくないでしょう。

それなら心機一転して、自宅を「思わず勉強したくなる場所」にしてみませんか? 4つのヒントをお伝えします。

1. 勉強したくなる「光」

JISが推奨する作業別の維持照度(JIS照明基準総則「JIS Z9110-2010」)は、勉強や読書の場合は750ルクス、リビングや寝室での読書は500ルクス、リビングでの団らんは200ルクスです。

750ルクスの目安は、たとえば学校の製図室や、お店のレジスペースといった、誰もが明るいと感じる場所。一般家庭の天井照明がそこまで明るいのは現実的ではないので、自宅学習には手元を照らす照明が必要です。

ちなみに、2016年の早稲田大学卒業研究論文「リビング学習の適正な環境に関する研究 −照明による環境設定の試み−」(茂木みほか氏著,指導 長幾朗教授)では、“スポットライトがあると集中力が高くなる”と報告されています。また、最も学習効果を高めるのは高照度(より明るい)・高色温度(青みや白みを帯びた光色)の照明とのことです。

「フィリップス Hue ホワイトグラデーション」というLED電球の設定を参考にすると、「くつろぐ・本を読む」モードの色温度は赤みが強い2,200~2,700ケルビン。「やる気を出す・集中する」の色温度は青みが強い5,000~6,500ケルビンです。

つまり、5,000~6,500ケルビンの青みが強い光色で、750ルクスくらいの明るい光が、思わず勉強したくなる「光」ということ。クリップ式のスポットライトやスタンドライトなどを用いて、勉強に最適な光を確保してみてはいかがでしょう。

(※輝度=明るさの単位は「ルクス/lx」/色温度=光の色の単位は「ケルビン/K」)

明るい日差しが入るスペースに勉強机。ちゃんとスタンドライトもある

2. 勉強したくなる「新しい〇〇」

UCL認知神経科学研究所のエムラ・デュゼル(Emrah Düzel)氏らが、被験者に画像を見せて、fMRIスキャナーを使用し脳活動を分析したところ、モチベーションなどを調節する中脳領域(黒質・腹側被蓋野)で活動を生み出したのは、馴染みのある画像ではなく新しい画像だけだったのだとか(2006年の8月3日に学術雑誌『Neuron』で発表)。

新しい何かは、私たちになんらかの報酬をもたらす可能性を期待させ、動機を与えてくれるからです。デュゼル博士いわく、完全に新しいオブジェクトだけが中脳領域を活性化し、(意欲に関わる神経伝達物質の)ドーパミンレベルを上げるとのこと。

それなら新しい勉強法をいろいろと試してみるほか、自宅に好みの新しい文房具を取りそろえても、「どう影響するだろう?」「どれほど楽しく勉強できるだろう?」と期待感が高まり、勉強意欲が増すはず。つまり、消耗品で「新しさ」を継続的に取り入れるわけです。

カラフルで楽しそうな文房具

3. 勉強してしまう「スペース」

「家には落ち着いて勉強できるスペースがない」と悩む方も多いのではないでしょうか。そうした状況は、古川武士氏の習慣化理論で解決できるかもしれません。

習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役の古川氏によれば、勉強する場所を決め、以下ふたつの行動をセットにすると迷いが消えスムーズに勉強できるようになるとのこと。

  1. その場所に行く
  2. 勉強する

ただし、重要なのはその場所を勉強専用の場所にすること。いつもマンガを読みながら、スマートフォンをいじりながらくつろいでいる場所はふさわしくありません。勉強するだけのスペースにすることで、「場所」と「勉強行動」がひもづくので、勉強の習慣化が成功しやすくなるとのこと。

ここ! と決めた場所に、たとえば前項で紹介した高照度・高色温度に切り替えられるスタンドライトなどを置くだけでも、効果的な勉強スペースが出来上がります。それにより、「その場所に行けば勉強が始まる」が習慣化するでしょう。

自分が決めた勉強スペースで勉強する女性

4. 勉強モードになる「椅子」

もしも、「座り心地がいい椅子を買えば勉強に集中できる」と考えているなら、もう一度よく考えたほうがよさそうです。医学博士・本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし氏によれば、座り心地がよすぎる椅子は勉強に適していないのだとか。

なぜならば本来「座ること」は人間の「休息モード」を意味するから。心地いいからと座りっぱなしになると脳が休息モードになってしまうので、むしろ座り続けたくない椅子を選んだほうがいいとのこと。そして勉強中は、こまめに立ったり動いたりするといいそうです。

その主張を後押しするのは、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)セメル神経科学・ヒト行動研究所による2018年の報告です。研究者らは、長時間座りっぱなしの姿勢が記憶に関わる脳の領域を薄くして、認知能力を低下させると指摘しています。

つまり、座りっぱなしだと休息モードになるうえ認知機能も低下するわけです。これじゃあ満足のいく勉強はできません。家にある座り続けたくない椅子を選ぶか、もしくはバランスボールを使って同時にコロナ太り対策をしてみては?

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自宅を「思わず勉強したくなる場所」にする4つのヒントをお伝えしました。工事いらずでさほどお金もかからないので、ぜひ気軽に取り入れてみてください。

(参考)
Panasonic|住宅の照明
UCL - London's Global University|Novelty aids learning
GSユアサ ライティング|JIS照度基準についての技術
イチオシ|勉強や仕事がはかどる電球色とは?勉強に集中できる環境づくり
かんき出版の社員研修|“あたりまえに” 勉強ができる人は必ず「時間」と「場所」を決めている。
大学受験パスナビ:旺文社|意欲・集中力&能率が大幅アップ! 受験に成功する“環境”のつくり方
ニッセイ基礎研究所|意識したい『座り過ぎ』の問題ー健康リスクを下げて、生産性を上げる 基礎研REPORT(冊子版)6月号
茂木 みほか(2016),「リビング学習の適正な環境に関する研究 −照明による環境設定の試み−」,早稲田大学基幹理工学部表現工学科,卒業研究論文ライブラリ.

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

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