文章の上手・下手は、才能や頭のよさによるものだと思い込んでいませんか? よい文章を書くのに必要なのは、ちょっとしたテクニックとコツです。テクニックさえ使えば、誰でも一定水準を超える文章を書くことが可能だといえるでしょう。
今回は「どうしても文章が上達しない」「文章を書くことが苦手だ」と悩んでいる人に向けて、うまく文章を書けない原因と改善方法をお伝えします。
1. 文章が下手すぎる人は「下調べ」をしていない
企画書や報告書、ブログにいたるまで、人に読ませることを前提とした文章を書くのであれば、やはり「最後まで読んでもらえる文章」がもっとも価値があるといえるでしょう。完読される文章を書くにあたって、絶対に必要なのは事前の準備です。
「自分は文章を書くのが下手だ」と自覚している人の多くは、白紙の状態からぶっつけ本番で文章を書き始めています。しかし、どんなに文章が上手な人でも、下調べを一切せずに書きはじめることはありません。
ジャーナリストの池上彰氏は、まず「書くべき要素」を書き出すことが大事だと述べています。
文章を書くのが苦手という人の多くは、この「要素を書き出す」ということをしていないように思います。だから、テーマ、中身、そして話の流れまで、白紙の状態からすべてを同時に考えなくてはいけなくなってしまっているんですね。(中略)ラクをしようとするのではなくて、ちょっと遠回りに感じるかもしれないけれども、「材料を書き出す」ところから始めると、結局は、早く仕上がるように思います。
(引用元:池上彰, 竹内政明(2017),『書く力』, 朝日新書.)
早く仕上げることが目的ではなくても、文章を書くための材料がそろわないまま闇雲に書きつづけていると、結局は目的地を見失ってゴールに到着することすらできません。人によって下調べの方法はさまざまですが、本やインターネットからテーマに合うエピソードを拾い上げて箇条書きにしたり、友人との会話で印象的な話があればメモを取ったりと、探そうと思えばいくらでも書くための“ネタ”は転がっています。
伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏は、「情報収集にあたって『文章を書こう』という意識を持っておくと、アンテナが立ち、自分が欲しい情報が自然と入ってきやすくなり、行動も変わってきます」と述べています。
たとえば、仕事で工場視察のレポートを書かなければならない場合、視察する前に「課題」となりそうなことを想定して書き出しておくといいでしょう。「コストの課題は?」「人員面での課題は?」と注意深く見るべきポイントをあらかじめ絞っておけば、「スタッフのシフトに偏りがあるようだ」などの気づきを得られます。「何について書かなければならないのか」を明確にしたうえで情報を集めることが大切です。
どんなに面倒でも、部品さえそろえてしまえば「上手な文章」を書くスタート地点に立つことができます。自分の記憶やひらめきを過信しないことが文章上達の第一歩だと覚えておきましょう。
2. 文章が下手すぎる人は簡潔にまとめられない
年間10冊以上の書籍のライティングに携わる書籍ライターの佐藤友美氏は、「ビジネスで必要な文章を速くわかりやすく書くのに、文才は必要ない」と断言しています。必要なのは「正しい情報をわかりやすく伝える技術」なのだそう。
情報をあれもこれも盛り込んだ文章は、読む人に想像以上のストレスを与えます。読みにくさ、わかりにくさの原因は、たいてい「構成=文章の組み立て」です。文章を組み立てるコツとして「1. 同じ内容の素材をグループ分けする」「2. それぞれのグループを接続詞でつなぐ」という2点を覚えておきましょう。
まずは集めた素材を付箋などに箇条書きにして、似た要素ごとにまとめてグループ分けします。そして、付箋のグループをどの順番で並べたらもっともスムーズに話が進むかを考えるのです。付箋を並び替えるとき、「さらに」「もちろん」「しかし」「しかも」「というわけで」など、どの接続詞でつなぐといいかを意識すると論理的な構成になります。
たとえば、自社の商品を大手百貨店だけではなくネットショップでも販売するべきかどうか、というテーマで文章をまとめるとします。グループ・接続詞は以下のようになるのではないでしょうか。
素材グループ1:「当社商品はネットショップでも販売すべき」と考えられるヒアリング素材
接続詞:さらに
素材グループ2:「なぜネットショップでも販売するべきなのか」を証明する競合データの素材
接続詞:もちろん
素材グループ3:「ネットショップで販売するデメリット」を示す素材
接続詞:しかし
素材グループ4:「ネット販売のデメリットは最小限で抑えられる」だろうことを示す素材
接続詞:しかも
素材グループ5:「ネットショップでの販売に期待できる相乗効果」を示す素材
接続詞:というわけで
素材グループ6:「ネットショップでも販売するべきだと提案します」(結論)
素材をグルーピングする手法を取り入れると、もっとも効果的な素材の並べ方がわかりやすくなります。接続詞を不自然に感じたら、論理が破綻しているサインなので、素材を見直しましょう。
3. 文章が下手すぎる人は読み返していない
やっとの思いで書き上げた文章。しかし、書き終えたことに満足してそのまま提出したり発信したりしていませんか?
文章のプロは書き終えたら必ず読み返し、何度も修正を加えてブラッシュアップを重ねています。何度も読み返しと修正を行って丁寧に仕上げたものが「よい文章」として多くの人に読まれているのです。
まず、頭から書き始めて、そのまま書き終えたものが、人様に読んでもらえるような文章になっているなんてことは、期待してはいけません。何度も何度も、「こっちの文を先に持ってきたほうがいいか、いや、やっぱり後回しか」と、切り貼りを重ねることで、なんとか「読める文章」になっていきます。
(引用元:同上)
上記のように述べるのは、読売新聞論説委員でジャーナリストの竹内政明氏です。人は自分で書いた文章を客観的に読むことができないものです。心のどこかで「自分の文章は正しい」と思う傾向があり、書き終えた直後の見直しでは間違いや違和感をうまく認識できません。
文章を読み直すときは少し時間をおきましょう。できれば一晩寝かせるのが理想です。一度頭をリセットすることで、自分で書いたという意識が薄れて、書いた直後よりも文章の違和感に気づきやすくなります。
読み返すときに注意すべきポイントは、文章全体を広く浅く俯瞰(ふかん)するように、雑に流し読みをすること。流し読みの過程において、引っかかってスムーズに読み進められない箇所こそ、修正すべき部分です。文章間に整合性がない、主語と述語がかみ合っていない、テーマから逸脱している、論理が飛躍しすぎている、などの違和感を修正するたびに最初から読み直しましょう。
何度か繰り返すうち、全体にまとまりが生まれ、すっきりとした印象の文章ができあがります。
4. 文章が下手すぎる人は言葉のリズムを重視していない
文章をコンパクトにまとめている、主語・述語のねじれもない、構成もしっかりしている。でもなにか物足りない、読んでも印象に残らない……。もしかしたら、あなたの文章がつまらないのは表現がワンパターンだからかもしれません。
文末のバリエーションに気を配るだけで、見違えるほど洗練された文章になります。無意識のうちに「~しました。~しました。~しました。」などと書いてしまいがちですが、「~しました。~しています。~なりました。」と変化をつければ、単調さを回避できて文章にリズムが生まれますよ。
また、「~こと」の重複はくどいので、できる限り別の言葉に言い換えたり、思い切って省略したりするといいでしょう。前出の山口氏は、「くどい言い回し=ぜい肉」がなくなると、情報がストレートに頭に入ってくるといいます。
「自分のことを理解することで、成長することができる」
「自分を理解すれば、成長できる」
「よく運動することが必要だ」
「よく運動する必要がある」
テンポよくリズムに乗って読み進められる文章は、全体の流れを何度も確認したうえで、絶妙なバランス感覚のもとに書き上げられています。前出の池上氏と竹内氏は、文章が持つリズムを感じるのに一番効果的なのは、声に出して読むことだと述べています。声が出せない状況なら口の中でつぶやきましょう。リズムを身体に刻みつける音読は、文章上達の秘訣であり近道です。
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ちょっとしたコツをつかめば、読みやすい文章はすぐに書けるようになります。まずは自分が書いた文章のどこがよくないのか、どんなクセがあるのかを把握するためにも、とにかく声に出して読んでみましょう。スムーズに読めずにつまずいてしまう箇所は、他人が読むときにも必ず引っかかる部分です。
(参考)
池上彰, 竹内政明(2017),『書く力』, 朝日新書.
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