心のこもった謝罪の仕方で相手からの信頼を勝ち取る人がいる一方で、せっかく謝ったにもかかわらず、相手との関係性をさらに悪化させてしまう人がいます。気がついたら後者になっていた……、なんてことにならないよう、「絶対にやってはいけない謝り方」を把握しておきましょう。
- ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方1:謝罪ワードの連発
- ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方2:とりあえず「すみません」
- ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方3:悪気はなかったんです
- ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方4:誤解を与えてしまい……
ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方1:謝罪ワードの連発
『その気遣い、むしろ無礼になってます!』(すばる舎)の著者で、接遇力アップを中心とした研修や講演を行なう三上ナナエ氏によると、「ごめんなさい」「申し訳ございません」「本当にすみません」といったワードを連発する謝罪の仕方は、むしろ逆効果なのだそうです。「その場しのぎで言っている」「口先だけで反射的に言っている」ように聞こえてしまうからです。
三上氏によれば、(謝罪の言葉を繰り返すより)何に対してのお詫びなのか、具体的に言葉で示すほうがいいとのこと。三上氏のアドバイスを参考に、NG例とおすすめの謝罪の仕方をひとつずつ挙げてみましょう。
- NG例:「この度は誠に申し訳ございませんでした。(相手の言葉に応じて)はい、すみません。(相手の言葉に応じて)はい、本当に申し訳ございません」
- おすすめ:「当方からの見積りの提出が遅れてしまったため、御社のスケジュールに支障をきたしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
この謝罪の仕方は、仕事関係だけでなく身近な人にも有効とのことです。
ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方2:とりあえず「すみません」
“すみません” という言葉には、謝罪の「すみません」、ありがとうの「すみませんね~」、人を呼ぶための「あの、すみません」、恐縮する気持ちを込めた「すみません、通してください」など、さまざまな使い方があります。
明治大学文学部教授の齋藤孝氏はこの “すみません” について、あまりにも汎用性が高すぎるため、謝罪に用いると相手に軽い印象を与えてしまうと説明します。
慣れた相手に対し、いつも、とりあえず便利な「すみません」で謝罪を済ませているなら要注意。このような謝罪の仕方を繰り返すうち、相手は “軽んじられている” と感じてしまうかもしれません。
だからこそ齋藤氏は、「謝罪でしか使えない言葉」を用いる方法をすすめています。よく知る仕事関係者に謝ることを想定したNG例と、謝罪専門の言葉を用いたおすすめの謝罪の仕方を見てみましょう。
- NG例:「依頼内容が二転三転してしまい、本当にすみませんでした」
- 齋藤氏のおすすめ:「不徳の致すところ」
【意味】自分の非や未熟さが原因と認め反省。
【例】「私の不徳の致すところにより、依頼内容が二転三転してしまい、誠に申し訳ございませんでした」
また、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏は、「申し訳ございません」と一緒に使える謝罪フレーズとして、次の言葉を挙げています。
- 山口氏のおすすめ:「弁解の余地もございません」
【例】:「依頼の内容が二転三転してしまったのは、弊社の情報伝達ミスによるもので、弁解の余地もございません。誠に申し訳ございませんでした」
齋藤氏、山口氏はほかにも例を挙げていますが、そのなかから比較的使いやすい言葉を謝罪の仕方としてピックアップしました。よろしければ、謝罪の仕方のヒントにしてみてください。
ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方3:悪気はなかったんです
どんなに謝罪の言葉を並べても、そのなかに「悪気があってやったことじゃないんです」という言葉が入ってしまうと、謝罪というより自分擁護の印象が強くなってしまいます。
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実氏いわく、自分を擁護する言動を繰り返していると、自身の評判も、価値も下げてしまうとのこと。
とはいえ、「本当に悪気はなかった」と相手に伝えたい場合もあるかもしれません。そんなときは、次のように自分の非を完全に認めたうえで謝罪し、「悪気はなかった」というニュアンスだけ伝えてみてはいかがでしょう。
- NG例:「〇〇さんも忙しいのに、私の仕事を手伝う羽目になってごめんなさい。たまたま部長に〇〇さんがこの件について詳しいと伝えただけで、まったく悪気はなかったんです」
- どうしても悪気はなかったと伝えたい場合のおすすめ:「私の不用意な発言のせいで、〇〇さんが私を手伝う羽目になってしまったこと、本当にごめんなさい。こんなふうに大変な迷惑をかけてしまうなど、思いもしませんでした。心から謝罪します」
ビジネスでやってはいけない謝罪の仕方4:誤解を与えてしまい……
日本電気グループのシステムインテグレーター「NECネクサソリューションズ」サイト内の「スマート総務人事術」では、自分に責任がない場合でも、謝罪の言葉は必要だとアドバイスされています。ただし、その際は責任について言及せず、不快な思いをさせてしまったことに対して謝罪するといいとのこと。
また、相手に間違いや勘違いがあったとき、「どうやら誤解を与えてしまったようで」などと言いたくなってしまいますが、これは謝罪の仕方として不適切なのだとか。「自分は間違っていないが、そちらが勝手に誤解した」というニュアンスを含んでいるからです。
取引先が打ち合わせ日時を勘違いして、ずっとイライラしながら来るはずのない相手を待っていた場合を想定し、謝罪の仕方の例を挙げてみましょう。
- NG例:「打ち合わせの日時について、誤解を与えてしまったようで……」
- おすすめ:「弊社との打ち合わせに関することで、不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」
どんな状況でも、真摯な態度を崩さず挑みましょう。
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相手との関係を損ねてしまう「絶対にやってはいけない謝り方」4選と、おすすめの謝罪の仕方を紹介しました。面と向かって謝るときはもちろん、メールで謝る際にも有効です。謝罪の相手といい信頼関係を結べるといいですね。
(参考)
リクナビNEXTジャーナル|仕事のピンチをチャンスに! 知っておいて損しない“謝罪フレーズ”とは?―山口拓朗の『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』
NECネクサソリューションズ|謝り方ひとつでその後の運命まで左右される! その謝り方で大丈夫?
PRESIDENT Online|デキる人はやや大げさな「謝罪語」を使う 謝って許されたら素直に受け入れる
アドットコミュニケーション株式会社|真に信頼される人は、間違いを認めて謝罪できる人
@DIME|知らないうちにやっている!?かえって無礼になりかねない過剰な気遣い事例集
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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