忙しすぎて大事な仕事に手が回らない……。家で資格勉強に打ち込みたいが時間がない……。このように、やるべきことがなかなか進まず悩んでいる人も多いはず。でも、こういった悩みは、意外とシンプルな方法で解決できるかもしれませんよ。
ヒントとなるのは、東京大学合格者数全国1位(2019年度)を誇る超進学校「開成高校」の野球部。地区予選1回戦敗退を繰り返していた同校は、普段の練習に “ある工夫” を取り入れることで、ベスト16へ大躍進したのです。
その工夫とは、「やらないことを決めて、やることを絞る」ということ――とてもシンプルですが、物事で成果をあげるための重要原則が、ここに隠れていました。
練習を「バッティング」に全振り→ベスト16へ大躍進
“第一に勉強” という校風のためか、開成高校野球部のグラウンド練習は週1回の2時間のみ。当初はキャッチボールすら満足にできない部員もいたのだそう。地区予選1回戦敗退が繰り返されるのも当然……。「勝てるわけがない」と考えるのが普通でしょう。しかし、その状況を変えたのが、監督を務めていた青木秀慶氏でした。
スポーツ名門校とは異なり、練習時間が大きく限られている開成高校野球部。そこで、守備練習や実戦形式の練習は行なわず、ひたすらバッティング練習をさせるという方式にシフトしたのです。大量に点を取られても取り返せばいい。結果、チームの打撃力は大きくアップし、打ち勝つスタイルでベスト16に勝ち進んだのでした。
もちろん、毎日グラウンドで練習できて、バッティングだけでなく守備や実践練習にも取り組めたほうがいいのは言うまでもありません。しかし、開成高校野球部は「時間が限られている」という動かしようのない悪条件があったからこそ、そのなかで最大の成果をあげるための方法を考え抜き、実行に移しました。
これは、私たちの仕事や勉強においても大いに参考になるのではないでしょうか。時間があり余っている人なんて、そう多くはありません。私たちは「限られた時間内でどう成果をあげるか?」という命題から逃げ続けることはできないのです。そのシンプルな解が、まさに「やることを絞る」ということなのではないでしょうか?
仕事で「やることを絞る」方法
かつてH&Mジャパンの社長を務めたこともある、ジバンシィ・ジャパンCEOのクリスティン・エドマン氏は、「日本人は100点満点を求めて『やることリスト』が広がりすぎる傾向がある」と指摘します。
たしかに、仕事は次から次へと降ってくるものです。しかし、それらはそもそも重要なものなのでしょうか。すべてをこなそうとするあまり、本当に大切な仕事が後回しになってしまっては本末転倒です。
多くの仕事は、1から10まで順番にすべてやらなくても、2くらいまでやれば80%の成果が出るものです。残りの8つをやっても20%の成果しか出ないのであれば、やらなくてもいいと判断します。
(引用元:プレジデント・ウーマン|上司が休んで成果が上がる組織のつくり方 ※太字は筆者が施した)
では、本当にやるべき仕事を見極めるには、どうすればいいのでしょうか。ここで参考にしたいのが、経営コンサルタントであるスティーブン・コヴィー氏が手がけた名著『7つの習慣』に載っている、時間管理のマトリクスです。
【第1領域】緊急かつ重要(締め切り直前のタスクやクレーム処理など、急いで処理しなければならない大切なこと)
【第2領域】緊急ではないが重要(締め切りまでまだ時間があるタスクや将来の計画など、急いでやる必要はないが大切なこと)
【第3領域】緊急だが重要ではない(急な誘いやメール対応など、急いで処理しなければならないが大切ではないこと)
【第4領域】緊急でも重要でもない(世間話や長い休憩など、急いでやる必要がなく大切でもないこと)
このように、私たちのタスクは大きく4つの領域に分かれます。そしてコヴィー氏によれば、第2領域の「緊急ではないが重要」なタスクがおろそかになってしまう人が多いのだそう。
たしかに、緊急性が低いと、つい後回しにしてしまいがちですよね。そして、第1領域(緊急かつ重要)や第3領域(緊急だが重要ではない)のタスクに手が伸びてしまうものです。第1領域は重要なのでまだいいのですが、重要ではない第3領域のタスクにばかり追われているようでしたら、注意しなければなりません(もちろん、第4領域はもってのほかです!)。
自分が抱えているタスクを棚卸しするためにも、ぜひ1日のはじめや1週間のはじめなどに、すべてのタスクをマトリクスに当てはめてみる習慣をつけてみましょう。そうすれば、「まだ締め切りまで余裕がある企画書」や「大きな商談で必要なプレゼン資料の作成」など、第2領域に該当するタスクも炙り出されてくるはず。
ぜひそれらに先んじて取り組み、逆に優先度の低いものは積極的に削っていくようにしてみてください。仕事が一気に効率化するでしょう。
勉強で「やることを絞る」方法
勉強も同様に、限られた時間のなかで成果をあげたいものです。でも、仕事が忙しすぎて思うように勉強時間を確保できない、試験日まで数日しかないのに全然進んでいない……なんてこともあるはず。参考書を最初から最後まで同じようにこなしていたら、とても間に合いそうにはありません。いい方法はあるのでしょうか。
資格試験対策をオンラインで提供する「資格スクエア」を経営する弁護士の鬼頭政人氏は、試験勉強は「ヤマをはること」が大切だと語ります。
例えるならば、ギャンブルにおけるチップが、受験勉強では時間です。持っているチップの量(時間)はみんな同じですが、それをどう使うかは自分次第なので、空気を読んで一番勝てそうなところにベットするという点は、ギャンブルも試験勉強もよく似ていると思います。
(引用元:ITmedia|数々の難関試験を突破した“効率の良い試験勉強”とは?)
学生時代の鬼頭氏は、テストをつくる教師の過去問を見て、「テストに出そうだな」と予想した箇所を集中的に勉強したら、好成績をあげられたのだそう。ただし、ただなんとなく過去問を読むだけではNG。鬼頭氏いわく、「出題者の考えや気持ちを理解する」のが、ヤマをはるコツとのことです。
これまで630個を超える資格を取得した実績を持つ、資格コンサルタントの鈴木秀明氏も、同様のことを述べています。
たとえば「このワードとこのワードはごっちゃになりやすいから、これらを入れ替えて誤りの内容とするような正誤判定問題が出るのでは?」「自分はAだと思い込んでいたけど正しくはBなのか、知らなかったなあ……。多くの人は誤解してAだと思ってそうだから問題として出そうかも?」などと考えながら勉強を進めていくことで、出題の「勘どころ」をつかむ力が磨かれます。
(引用元:StudyHacker|「“ヤマかけ” はむしろ積極的に!」 資格Hacker 鈴木秀明のシカクロード for StudyHacker【第18回】)
勉強中に「ここは難しいな」「ここは引っかかりやすいな」と感じる部分があったら、そこが問題になる可能性が高そうだと予想できます。
ヤマをはるのは「勉強の過程で積極的に行なっていくべき」というのは鈴木氏の言葉。参考書を隅から隅までやみくもに同じ密度で勉強するのではなく、多少はメリハリをつけるのもいいかもしれませんね。
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「やることを絞る」という戦略は、案外有効です。仕事と勉強で、ぜひやることを絞って、効率化を図りましょう!
(参考)
高校野球ドットコム|第49回 開成高等学校(東京)
プレジデント・ウーマン|上司が休んで成果が上がる組織のつくり方
スティーブン・R・コヴィー (1996),『7つの習慣-成功には原則があった!』, キングベアー出版.
ITmedia|数々の難関試験を突破した“効率の良い試験勉強”とは?
StudyHacker|「“ヤマかけ” はむしろ積極的に!」 資格Hacker 鈴木秀明のシカクロード for StudyHacker【第18回】
【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。