イエスバット法とは? 会話の基本テクニックを丁寧に解説。

イエスバット法とは1

イエスバット法とは、相手の意見を「Yes,」と肯定したあと、「but」と否定する話法。反論したいけれど、相手の気分を害したくない……というときに使うテクニックです。

交渉や話し合いの場で「反論するのは失礼かな」「不快に思われたらどうしよう」と不安になり、なかなか自分の意見を言い出せないことがあるはず。かといって、反発を恐れて何も主張できないままでは、相手のペースで話が進んでしまいます。

そんなときは、イエスバット法を使ってみませんか? 今回は、イエスバット法の概要や使い方だけでなく、5つの便利な「クッション話法」を、イエスバット法と比較しつつご紹介します。

イエスバット法とは

イエスバット法とは、相手の意見をいったん「そうですね(yes)」と肯定してから、「しかし(but)」と自分の意見(反論)を伝える話法。

たとえば、友だちに「今日はお寿司(すし)を食べにいこうよ」と誘われたものの、あなたは「お寿司よりは、焼肉を食べたい気分だなぁ」と思っているとします。とはいえ、「いや、僕は焼肉のほうがいいな」とすぐに否定したら、相手は少なからず嫌な思いをしてしまいますよね。

そんなとき、イエスバット法の出番です。イエスバット法では、まず相手の意見を受け入れるという「ワンクッション」をはさんでから、自分の意見を展開します。

今回のケースなら、「お寿司もいいね。でも、今日は焼肉の気分かなぁ」と伝えたらどうでしょうか。反論の前に肯定的な言葉がはさまることで、かなり言葉の印象が柔らかくなりますよね。

イエスバット法のように、反論する前に相手の意見を肯定してワンクッション置く話し方は、「クッション話法」と総称されます。イエスバット法のほかに「イエスアンド法」「イエスイフ法」「イエスハウ法」などがありますよ(詳しくは後述)。

クッション話法は、相手に不快感を抱かせずに自分の意見を伝えたい場面、つまり交渉や説得などで使うと効果的です。たとえ自分の反論がどれほど真っ当だとしても、相手の意見をいきなり頭ごなしに否定してはいけません。多くの人は腹を立て、最悪の場合、「もうあなたの話なんか聞きたくない」と心を閉ざしてしまうかもしれないからです。

臨床心理士の山名裕子氏によると、クッション話法を用いて相手の言葉を肯定すると、相手によい印象を与えられるだけでなく、自分の中の反発心も軽減できるのだそう。ふだん、つい反射的に相手の意見を否定してしまったり、思ったことをズバズバ口に出したりしてしまう傾向があると自覚している方こそ、イエスバット法をはじめとするクッション話法を常に念頭に置いておきましょう。

イエスバット法とは2

イエスバット法の会話例

イエスバット法の具体的な会話例を、シーン別に見ていきましょう。

セールス

まずは、顧客に商品を売り込むセールスの場面です。

相手「この商品、ちょっと値段が高いなぁ」
あなた「そうですよね。少し高いと感じられるかもしれません。しかし、24時間サポートや3年間保証がついていることを踏まえると、とてもお買い得になっていますよ」

この会話では、まず「値段が高い」という顧客の意見を受け入れ、ワンクッションを置いたうえで、商品のさらなるアピールに移っています。

社内で企画を通す

次もビジネスの例。今度は顧客相手でなく、上司に企画を提案する場面です。

相手「この企画、あまりウケないような気がするけどな」
あなた「たしかに、一見ツカミが弱そうですよね。しかし、市場調査の結果を見ると、このような数値が出ているので、需要はたしかにあるはずなんです」

客観的なデータをもっているぶん、「いや、それは違います」とすぐ反論したくなる場面ですが、ぐっとこらえることで、上司の顔を立てながら意見を述べることに成功しています。

議論をする

イエスバット法は、議論をするときにも役立ちます。友だちと映画の感想について話す場面を例にとってみましょう。

相手「あの映画、全然おもしろくなかったよ」
あなた「たしかに、ストーリー的な盛り上がりは弱かったよね。でも、映像や音楽はとてもきれいで、よかったと思うなぁ」

真っ向から反論するのではなく、「たしかにストーリーはよくなかった」と一部同意することで、かえって自分の意見の説得力が増しているように見えます。映画の感想などは水掛け論になりそうなものですが、イエスバット法により相手の意見を受け入れることで、議論がより生産的になりうるのです。

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イエスバット法以外のクッション話法1:イエスアンド法

イエスバット法は、クッション話法のうち最もシンプルですが、必ずしも万能ではありません。コミュニケーションスキルの専門家・箱田忠昭氏によると、肯定というクッションをはさむとはいえ、結局は「しかし……」と明確に反論するため、相手に不快感を与えてしまう場合もあるのだそう。

そんな問題を解決できるクッション話法が、イエスアンド(yes and)法。イエスアンド法とは、否定の接続詞を使うことなく自分の意見を伝える方法です。イエスバット法とは違い「しかし……」と明確に反論をしないぶん、より言葉を柔らかくすることができます。イエスバット法をアップデートした話法だといえるでしょう。

イエスアンド法では、イエスバット法の「バット」を、「それなら」「実は」といった肯定的な接続詞に置き換えます。以下のようなものが、イエスアンド法の会話例です。

日常

相手「今日はお寿司を食べにいきたいなぁ」
あなた「お寿司もいいね。それなら、この焼肉屋もおいしそうじゃない?」

文法的には「でも、この焼き肉屋も……」と言うほうが自然でしょうが、あえて「それなら」という肯定的な接続詞を選ぶことで、相手に不快な印象を与えることなく自分の意見を提示しています。少し文法的に不自然かもしれませんが、話し言葉として聞く分には、あまり気にならないはずです。

ビジネス

相手「その商品、ちょっと僕には高すぎるなぁ」
あなた「そうですよね、少し高いと感じられるかもしれません。実は、この値段には理由がありまして……」

本来なら「でも、この値段には理由が……」と言いたいところですが、イエスバット法の「バット」を「実は」に置き換えることで、相手の意見を否定している印象が一気になくなります。

イエスバット法とは4

イエスバット法以外のクッション話法2:イエスイフ法

イエスイフ(yes if)法とは、相手の意見を肯定したあと、イエスバット法のように反対意見を述べるかわり、「もし……ならどうか」と条件を提示する話法です。

経営コンサルタントの小林守氏によると、交渉をするうえで大切なのは、顧客に寄り添い不安を解消してあげながら、「買わない理由」をひとつずつ取り除いていくことなのだそう。イエスイフ法を使えば、顧客と対話をしながら、納得してもらえる具体的な条件を探ることができます。イエスイフ法の会話例を以下に示すので、参考にしてみてくださいね。

日常

相手「今日はお寿司を食べにいきたいなぁ」
あなた「お寿司もいいね。もし気が変わりそうなら、焼肉も選択肢に入れておいてよ」

「もし気が変わりそうなら……」という条件つきで自分の意見を提案しているので、相手はそれほど抵抗感なく、あなたの意見を受け入れてくれるはずです。

ビジネス

相手「その商品、ちょっと僕には高すぎるなぁ」
あなた「そうですよね、少し高いと感じられるかもしれません。もしも、もう少し価格が安くなれば、ご検討いただけますでしょうか?」

「もしも価格が安くなれば」と値引きの可能性を示すことで、譲歩しています。イエスバット法と違い、相手に質問を投げかけているので、スムーズに会話が続きそうですね。

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イエスバット法以外のクッション話法3:イエスハウ法

イエスハウ(yes how)法とは、相手の意見を肯定したあと、イエスバット法のように反論するかわり、「どうすれば……できるか」と相手が納得できる条件をヒアリングする話法。経営コンサルタントの川崎裕介氏によると、セールス担当者の本質的な役割は「顧客が抱えている問題を解決すること」であるため、ヒアリングを通じ具体的な課題やニーズを探ることが重要なのだそう。イエスハウ法の会話例は以下の通りです。

日常

相手「今日はお寿司を食べにいきたいなぁ」
あなた「お寿司もいいね。僕は焼肉を考えてたんだけど、どうすればあいだをとれるかな?」

「どうすれば……できるか」と相手の希望を聞いて歩み寄ることで、お互いが納得する結論に近づきやすくなります。この場合は、寿司と焼肉の両方を食べられる店に行く、肉寿司の店へ行く、今回はどちらかが折れ、次回はもう一方が希望する店へ行く、などの妥協案が考えられるでしょう。

ビジネス

相手「その商品、ちょっと僕には高すぎるなぁ」
あなた「そうですよね、高いと感じるのも無理はないと思います。では、どのような価格帯をご希望でしょうか?」

意見をぶつけ合うのではなく、相手の希望をヒアリングすることで、「価格を下げる」「より安いプランを提案する」などの妥協案を提示できます。オープンクエスチョンを使い、相手に考えさせている点で、イエスバット法ともイエスイフ法とも異なるのです。

イエスバット法とは6

イエスバット法以外のクッション話法4:イエスワット法

イエスワット(yes what)法は、イエスバット法と異なり、相手の意見を肯定したうえで、その内容をより具体的に聞き出す話法。経営コンサルタント・コーチの森本菜都美氏によると、whatを含む質問を投げかけることで具体的な返答が得られ、相手とより明確に認識を共有できるようになるのだそう。以下のようなものが、イエスワット法の会話例です。

日常

相手「今日はお寿司を食べにいきたいなぁ」
あなた「お寿司もいいね。ほかには何か、食べたいものはないの?」

ひょっとすれば、お寿司というのは一案にすぎず、ほかにも食べたいものがあるかもしれません。相手の食べたいものをヒアリングした結果、あなたの意見と一致する「焼肉」が出てくれば御の字ですし、もし一致しなくても、そこから「実は、僕は焼肉を食べたいんだけど……」と自然に話をもっていくこともできるでしょう。

いずれにせよ、まずは相手の意見を詳しく聞くことから始めるのが、イエスワット法のアプローチなのです。

ビジネス

相手「その商品、ちょっと僕には高すぎるなぁ」
あなた「そうですよね、高いと感じるのも無理はないと思います。ほかには、商品に何かご不満はございますか?」

相手の希望を詳しく聞くことで、妥協点を探る手がかりを得られます。もし、顧客が商品の品質などに不満をもっているなら、保証や特典をつけるなどの対策をとる必要がありますし、不満がないのなら、値引きをするなどちょっとした一押しで契約が成立するかもしれません。イエスバット法のように「反論」をせず、むしろ相手から意見を聞き出すのが特徴です。

イエスバット法とは7

イエスバット法以外のクッション話法5:イエスソーザット法

イエスソーザット(yes so that)法は、イエスバット法とは反対に、相手の意見を肯定するだけでなく、むしろ自分の意見の根拠として引き込んでしまう話法です。

イエスソーザット法では、「しかし」を「だからこそ(so that)」に置き換えます。経営者・コンサルタントとして活動する笹田裕嗣氏によると、多くの顧客は自分の意思だけで決断するのを怖れているため、何らかの理由づけとともに背中を押してもらうことで、購入への最後の一歩を踏み出しやすくなるのだそうです。

イエスソーザット法の会話例は以下の通りです。

日常

相手「今日はお寿司を食べにいきたいなぁ」
あなた「お寿司、僕も好きだよ。だからこそ、特別な日のためにとっておきたいなぁ。今日は焼肉にしようよ」

相手が出した「お寿司案」を肯定しながら、それを根拠として、焼肉という自分の案へ論理的につなげています。

ビジネス

相手「その商品、ちょっと僕には高すぎるなぁ」 あなた「ちなみに、家計だと何にたくさんお金がかかっていますか?」
相手「子どもの養育費がね」
あなた「そうですよね、養育費を捻出するのはさぞ大変だと思います。そんな○○さんだからこそ、この商品をぜひ使っていただきたいんです」

この例では、お金が捻出できない理由をヒアリングし、顧客から出た「養育費」という問題に共感(yes)したうえで「だからこそ使っていただきたい」と話をつなげています。イエスバット法と違い、反論されないどころか自分の意見を根拠に話を展開されるので、相手は反発しづらいはずです。

イエスバット法以外のクッション話法も使いこなすことで、言葉の引き出しが増え、より有利に交渉を進めることができますよ。

***
交渉・説得の場面で役立つイエスバット法や、その他のクッション話法について解説しました。「でも」「しかし」という言葉は、反射的に口から出てしまいやすいものですが、その前に相手の話を受け入れたり、否定的でない別の接続詞に置き換えたりすることで、お互いによい気分で話し合いを進めることが可能になるのです。

特にセールスや接客など、お客さんと話す機会の多い職種の方は、今回ご紹介したクッション話法をぜひ活用してみてくださいね。

(参考)
Life and Mind+|【営業のプロが教える】応酬話法とは?商談を成功へ導く8つの応酬話法
ダイヤモンド・オンライン|「だって」「でも」を言いたくなったら、「クッション話法」を使う
リクナビNEXTジャーナル|相手の機嫌を損ねないように「反論」し、自分の主張を納得させる3つのステップ
セールスハックス|営業活動ですぐに使える!25のオープンクエスチョン
成果報酬型営業代行のささだ|営業の切り返しを楽にするクッション言葉と6つの反論処理パターン
コンラボ|オープンクエッションを駆使し会話を盛り上げる方法 〜豊富な質問例付〜

【ライタープロフィール】
佐藤舜
中央大学文学部出身。専攻は哲学で、心や精神文化に関わる分野を研究。趣味は映画、読書、ラジオ。人生ナンバーワンの映画は『セッション』、本は『暇と退屈の倫理学』。好きな芸人はハライチ、有吉弘行、伊集院光、ダウンタウン。

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