「仕事が早く終わる人」3つの特徴。スタバ思考・コンドル思考・オーウェル思考って何のこと?

吉田幸弘さんインタビュー「仕事が早く終わる人と終わらない人の違い」01

働き方革命の浸透や人手不足などにより、いま、「仕事効率アップ」がビジネスパーソンにとって重要な課題とされています。

そこでお話を聞いたのは、著書『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』(あさ出版)が話題のコミュニケーションデザイナー・吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さん。吉田さんによると、仕事が早く終わる人とそうでない人には、仕事術そのものではなく、仕事に対する「思考」に大きな違いがあるのだとか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

吉田幸弘さんインタビュー「仕事が早く終わる人と終わらない人の違い」02

柔軟性がある「スタバ思考」とマニュアル厳守の「マック思考」

仕事が早く終わる人、終わらない人の思考の違いとして最初に挙げたいのは、いわゆるマニュアルに対する考え方です。これを私は、それぞれ「スタバ思考」と「マック思考」と呼んでいます。

スタバとはもちろん、スターバックスのこと。スターバックスには、調理などについての基本のマニュアルはありますが、接客に関するマニュアルはありません。ですから、客の雰囲気や要望に合わせて、従業員それぞれがある程度自由な接客をすることができる。沖縄の店なら「海にはもう行かれましたか?」、新幹線の停車駅である静岡駅の店なら「何時の便に乗られるんですか?」というふうに、かけてくれる挨拶も変わります。

一方、マックとはマクドナルドのことです。マクドナルドには接客法も含めた厳格なマニュアルがあり、基本的にはマニュアルどおりの対応しかしてはいけないという特徴があります。

これを仕事に当てはめると、スタバ思考の場合なら、客の要望に合わせて柔軟に対応することになる。イレギュラーのことが起きた場合にも、その場で個人である程度の判断をして仕事を進められることにもなります。

それに対して、マック思考の場合はそういったことはできません。マニュアルに沿って仕事をしたほうがスムーズに進められそうだと思う人もいるかもしれませんが、マニュアルというルールを守ることを先行させてしまうのです。すると、イレギュラーの要望があった場合には、「それでは、会社に持ち帰って、上の者の判断を仰ぎます」といった具合に、どうしても仕事が停滞することになる

そう考えると、これらの思考に関しては、個人というより組織での意識改革が必要だといえるかもしれません。

吉田幸弘さんインタビュー「仕事が早く終わる人と終わらない人の違い」03

仕事全体を俯瞰する「コンドル思考」と場当たり的な「カメ思考」

次に挙げるのは、「コンドル思考」と「カメ思考」。

コンドルは、上昇気流に乗ってはるか上空にまで上昇することができる鳥です。つまり、コンドル思考とは、仕事全体を俯瞰する思考のことを指します。言い換えれば、ゴールを最初から確認し、そこから逆算する考え方です。

クライアントが求める資料をつくるのなら、クライアントがなぜその資料を求めているのかというゴールを、まずは確認してはっきりさせるということ。ですから、その明確なゴールを目指して効率的に資料をつくることができます。

一方のカメ思考は、「ウサギとカメ」の童話に表れているように、決して悪いことばかりではありません。地道にコツコツと仕事をこなし、目の前で起きた問題をその都度きちんと解決していくのは、たしかにいいことでしょう。ですが、地面を這っているだけに、その「目の前」しか見えていないことが大きな問題点となります

先の資料をつくる例なら、資料をつくるという目の前の作業に集中してしまい、クライアントがなぜその資料を求めているのかというゴールは見えていません。そのため、どんなに丁寧できれいな資料をつくったとしても、クライアントが求める意図をくめていないために、つくり直さなければならないということが出てきてしまうのです。

また、全体の工程が見えているかどうかという点にも、両者の思考には違いが表れます。

コンドル思考なら、具体的な作業に入る前に全体の工程を見て、「ここは時間がかかりそうだぞ」「もしかしたら、ここではイレギュラー対応が発生するかも」というふうに考え、事前に準備ができる。ですから、結果的に効率的に仕事を進められます。でも、カメ思考の場合は、やはり問題が起きてから後手後手で対応することになるため、時間がかかってしまうのです。

そのカメ思考から脱却するには、たとえまだ立場が下で上司や先輩の指示を受けて仕事をする場合にも、「やれと言われたから」ではなく、「この仕事は何のためにするのか」ということを逐一考える習慣を身につけるのが大切です。

吉田幸弘さんインタビュー「仕事が早く終わる人と終わらない人の違い」04

感情に惑わされない「オーウェル思考」とイライラしがちな「マスト思考」

最後に取り上げるのは、「オーウェル思考」と「マスト思考」です。

マストについてはよく耳にする言葉でしょう。「〜すべき」という意味を表す英単語「must」です。このマスト思考に陥ると何が問題かというと、イライラすることが増えます。

先のマック思考にも通じることですが、「この場合はこうしなくちゃいけない」というルールに縛られると、それから逸脱することを許せずに、イライラすることが増えるのです。すると、そのイライラが頭のなかを占めてしまい、仕事に集中できなくなる。そうして、仕事がどんどん遅れていくというわけです。

一方のオーウェルという言葉については、あまり知られていないかもしれません。これは「oh well」というイディオムで、「まあいいか」という意味を表します

先のマスト思考に対して、ルールから逸脱することや予定外のことが起きても「まあいいか」ととらえるのですから、イライラすることはありません。「まあいいか」というといい加減だと思われるかもしれませんが、イライラすることがないぶん、結果的には、まじめに思えるマスト思考の人間より仕事を早く進められるのです。

まじめな人ほど、マスト思考からオーウェル思考に切り替えることは難しいでしょう。そういう人は、少しずつ自分の心の許容範囲を広げることを心がけてください。マスト思考の人は、自分だけではなく、他人に対しても「〜すべき」という考えを押しつけがちです。

たとえば、「待ち合わせには約束の時間の15分前には到着するべき」と思っている人がいるとします。クライアントを訪ねる際に後輩が10分前に集合場所に到着したら、そういう人は後輩を叱って自分もイライラしてしまいます。

でも、よく考えてみてください。後輩が10分前に集合したことで、はたして誰かに迷惑をかけたでしょうか? マスト思考の人は、自分で勝手に決めたルールで他人を縛り、自分も縛られていることが多いものなのです。

また、このオーウェル思考とマスト思考は、自分なりの時短術を考える際にも大きなヒントとなるものです。世に時短術はたくさん出回っていますが、その多くは仕事自体のスピードをいかに上げるかといったテクニカルな部分に着目したもののように思います。

しかし、人間は感情に左右される生き物。どんな時短術を使っても、イライラや不安を抱えた状態では台無しになってしまう。自分の感情の起伏を抑えるような方法を模索することが、最終的には仕事の効率を最も上げてくれるのではないでしょうか。

吉田幸弘さんインタビュー「仕事が早く終わる人と終わらない人の違い」05

【吉田幸弘さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「仕事が遅い人」がやりがちな5大NG行動。“優しすぎる” と仕事は全然進まない。
一流になりきれない二流リーダーは “この5つ” をしてしまっている。

【プロフィール】
吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)
1970年3月12日生まれ、東京都出身。コミュニケーションデザイナー。人材育成コンサルタント。上司向けコーチ。成城大学在学中は体育会ボート部に所属し、その頃からメンバーに対するリーダーシップ論を学ぶ。卒業後、大手旅行会社を経て学校法人へ転職。1年間で70件以上の新規開拓をして広報リーダーとなるも、自身の「怒ってばかりの不器用なコミュニケーション」によってチームを崩壊させてしまう。結果、職場を去ることとなり、外資系専門商社に転職。転職後も周囲のメンバーとうまくコミュニケーションが取れず、降格人事を経験してクビ寸前の状態となる。悩んだ揚げ句に体調を崩し入院。見舞いに来てくれた友人のすすめで学んだ交渉術を駆使して劇的に営業成績を改善し、マネージャーに再昇格。その後、社外での営業コンサルタント・コーチとしての活動を経て、2011年に独立。現在は経営者・中間管理職の人材に向けてコーチングの手法を使った人材育成、チームビルディング、売上改善法のコンサルティング活動を行う。また、営業力アップ、モチベーションアップ、褒め方・叱り方・伝え方をベースにしたコミュニケーション等の各種セミナーも開催している。著書に『部下に9割任せる!』(フォレスト出版)、『リーダーの「やってはいけない」』(PHP研究所)、『誰でもすぐ使える雑談術』(さくら舎)、『西郷どん式 リーダーの流儀』(扶桑社)、『リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)、『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』(ダイヤモンド社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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