ほとんどの社会人には、上司や先輩といった目上の存在がいますよね。しかし、“自分の上に立つ人” から評価を得ることができずに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
ビジネスパーソンが努力を実らせて出世していくためには、上司や目上の人から「優秀でよい部下」と認められる必要があります。認められる部下と認められない部下の決定的な違いは、いったいどこにあるのでしょうか?
上司から気に入られない「残念な部下」に欠けている、重要な “4つのスキル” を紹介しましょう。
1. 残念な部下は「アクティブリスニング」ができていない
ビジネスパーソンの評価に影響を与えるのは、仕事の成果だけでなく、会話を通じたコミュニケーションです。しかし、友人や同僚との会話に比べ、役職や世代の違う上司との会話は難しいもの。もしかしたら、意図せず悪い印象を与えてしまっているかもしれません。
上司からよく思われるために必要とされる、好意的な会話のスキルについて、リーダーシップ・コンサルタントの大西みつる氏は次のように解説しています。
相手の話に積極的に耳を傾けることを、「アクティブリスニング(積極的傾聴)」といいます。相手の話を注意深く聴いている姿勢を、「言葉」と「態度」で表すことで、相手が話しやすい状態をつくることです。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|ビジネスの必須スキル「聴く力」を強化するコツ ※太字は筆者が施した)
会話において “聴く姿勢を持つ” のは当然ですが、目上の人との会話がうまくいかない人は、「聴く」という意識をより強く持つ「アクティブリスニング」ができていないのです。アクティブリスニングをするには、次の4点を押さえましょう。
- 相手の話に耳を傾けて、最後までしっかりと聴く。
- 相手の話を途中でさえぎらない、否定しない。
- 表情やしぐさ、声のトーンなど、相手の様子に注意を払う。
- 相手の言葉を受け止め、理解し、共感する。
たとえば、上司が仕事のリテイクを求めつつ、ダメ出しやアドバイスを始めたら、決して話をさえぎってはいけません。否定や言い訳はせず、表情やしぐさなど “非言語” の部分にも注意しながら、「なるほど」「その発想はありませんでした」などとあいづちを打ち、相手が話し終えるのを待ちましょう。
話の聴き方ひとつで、印象は大きく変わるものです。話を真剣に聴こうとしている意思が伝われば、相手も真剣に話そうとするもの。より丁寧で具体的なアドバイスをくれたり、活発な議論につながったりするかもしれませんよ。
2. 残念な部下は「3つのあいづち」ができていない
「話の聞き方」について、もうひとつ。上司や先輩から武勇伝を語られ、反応に困った経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
上司の苦労話や自慢話を聞かされたときに、「面倒だな」と適当にあいづちを打っていると、面倒だという気持ちは相手に伝わってしまいます。ビジネス書ライターの杉山直隆氏は、武勇伝へのあいづちについて次のようにアドバイスしています。
(前略)注目重視型の上司に多いのが、「武勇伝を語ること」。最初は耐えられても、だんだんうんざりしてくるかもしれない。ただ、上司との関係を良好に保ちたいなら、ぐっとこらえて、気持ちよく話してもらうようにしたい。
(引用元:東洋経済オンライン|「嫌いな上司」とうまく付き合うための処方箋-勝負型、注目型…タイプ見極め苦手意識克服 ※太字は筆者が施した)
また、企業研修の開発・実施を手がける株式会社らしさラボ代表の伊庭正康氏は、あいづちのコツとして、「相手の言葉を反復する」「感情に同意する」「間をあける」という3つを挙げています。
たとえば、上司が「昔は毎朝7時に出勤していた」と武勇伝を語ったなら、「7時ですか! すごいですね!」と反復して、上司が主張したい部分を共有します。共感を示したあとに「でもしんどかったんだよ」と続けられたら、「たしかに朝はしんどいですよね」と感情に同調し、上司の苦労を理解しているとアピールするのです。また、「努力だけは誰にも負けなかった」などと成果を強調して話してきたら、「……すごいですね……」と少し間を空けて、感服しているように返しましょう。
上司や先輩と接するなかで、避けては通れない武勇伝。たとえ興味がなくても、丁寧にあいづちを打って聞き入っている姿勢を見せることは、大切な処世術のひとつですよ。
3. 残念な部下は「クッション言葉」が使えていない
会社では、上司や先輩から急に仕事を頼まれることも多々ありますよね。ぜひチャレンジしたいものですが、自分があまりにも忙しいときには、無理せず断ったほうがよい場合も。
しかし、仕事を断るときに、ただ「厳しいです」とぞんざいな拒否をしてしまうと、あなたの印象が悪くなりかねません。相手は「非協力的な人だ」と思うだけでなく、「自分より下の人間に反抗された」と不快に感じ、無理難題を押しつけてくる可能性だってあるのです。
ビジネス心理研究家の神岡真司氏は、無理な要求を角が立たないように断るコツとして、「クッション言葉」の活用を提唱しています。
特に大事なのが「今すぐ、お手伝いしたいところなのですが」という“クッション言葉”。「お忙しいのは承知していますが」「お気持ちはよくわかりますが」とワンクッションをはさむことで、「断る」という自己主張の印象を和らげます。
(引用元:プレジデント・オンライン|嫌われない「断り方」4つの便利な"枕詞"-ムチャ振り上司も笑顔で許す)
相手が頼み事をするのは何かしらの理由があります。忙しいから代わりにやってくれる人を探している、部下の能力に期待している、さらなる成長を促すために難題に挑戦させる、など。いずれにせよ、相手の事情を考慮したうえで、上記のクッション言葉を使って丁重に断るようにしましょう。
たとえば、スケジュールにまったく余裕がない状態で何かをお願いされたとき、「忙しいから無理です」と言うのはNG。「今すぐお手伝いしたいところなのですが」と前置きを述べたうえで、「いま抱えている案件が非常に重く、時間を確保するのが難しいのです……」などと、正直に事情を話してみましょう。真っ向から断るのと比べれば、上司が不愉快な気持ちになる確率はだいぶ下がるはずです。
4. 残念な部下は「上司の上司」を知らない
「上司は誰ですか?」と聞かれたとき、あなたが思い浮かべるのは、普段接する機会の多い直属の上司でしょう。
ですが、直属の上司にも上司が存在することも忘れてはなりません。あなたの上司は「上司の上司」の指示を仰いで仕事をしており、上司には頭が上がらないのです。
組織コンサルティングを手がけるプロノイアグループ株式会社代表取締役のピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、上司の上司を知ることが、直属の上司と関わるうえで大切だと話しています。
社内でも社外でも、合意を取り付けるときは、まずは自分の目の前にいる相手の上司の立場に立つ。この鉄則を忘れないようにしてください。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|根回しを成功させたければ、「上司の上司」の目線を身につけろ!)
上司があなたに任せる仕事は、もとをたどれば上司のさらに上司から任されたもの。たとえば、あなたが新しい商品やサービスのアイデアを考えてほしいと上司から依頼されたとします。自分なりの「よいアイデア」を提出しても、「上司の上司」が好むアイデアでなければ、却下されてしまいます。
しかし、仕事の発注元である “上司の上司” が何を求めているのかを考えれば、どのようなアイデアを出せばよいか、おのずと方向性が浮かんでくるのではないでしょうか。
上司の上司が保守的な思想であれば、冒険せず会社の方向性に沿ってアイデアを練る。奇抜で新しいものを好むなら、冒険的で新しいアイデアを提案する。「上司の上司」に合わせた戦略も時には大事なのです。
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「自分は上司から気に入られるために仕事をしているわけではない」という人もいるかもしれませんが、今の組織内でステップアップしていく以上、上司から高い評価を得ることは避けては通れない道です。「残念な部下」になってしまわないよう、お伝えした4つのポイントに注意してみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|ビジネスの必須スキル「聴く力」を強化するコツ
東洋経済オンライン|「嫌いな上司」とうまく付き合うための処方箋-勝負型、注目型…タイプ見極め苦手意識克服
プレジデント・オンライン|嫌われない「断り方」4つの便利な"枕詞"-ムチャ振り上司も笑顔で許す
ダイヤモンド・オンライン|根回しを成功させたければ、「上司の上司」の目線を身につけろ!
【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。