「日々勉強を頑張っているけどなかなか身にならない」というあなたのお悩みは、自分に合ったアウトプット方法を試すことで解決できるかもしれません。さっそく、上のチャートをたどってみてください。
勉強ではアウトプットこそが重要。精神科医の樺沢紫苑氏によると、学習内容を記憶に定着させるには「インプット3:アウトプット7」の割合が最も効率的なのだそう。つまりインプットの倍以上、アウトプットに時間を割く必要があるのです。
しかし、ひとくちにアウトプットといっても方法はさまざま。せっかくなら、自分にピッタリなやり方で勉強したいですよね。チャートでたどり着いたものがあなたに最適なアウトプット術! では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【1】マインドマップ
「勉強は読書が中心」の人で「絵や図を描くのが好き」という方には、「マインドマップ」による読書後のアウトプットがおすすめです。特に「本を読んでも、自分の意見やアイデアが膨らまない」とお悩みの方は必見ですよ。
マインドマップとは、イギリスの教育者トニー・ブザン氏が提唱した、頭の働きを活性化させるアウトプット方法。紙の中心に主題を書き、そこから連想した言葉やイメージを放射状につなげて書いていきます。
人には、頭に浮かんだ意見やアイデアをすぐに忘れてしまう習性があります。これは、自然と連想が広がって思考が次々変化するという脳の働きによるもの。そんな思考の過程を、マインドマップではそのまま書いて見える化します。そのため、本来すぐ忘れてしまう意見やアイデアもあとで細かく振り返ることができるのです。
具体的なやり方として、教育業を手がける株式会社i Motivations代表、粂原圭太郎氏がすすめる手順をご紹介しましょう。
- A4の紙とペンを用意する
- 紙の中心に「この本から何を学びたいか」という目的を設定する(読書前)
- 本から得た知識や気づきを放射状に書いていく(読書中もしくは読書後)
上記の方法で筆者が以前作成したマインドマップもご覧いただきましょう。こちらは、ジェームス・W・ヤング氏の著書『アイデアのつくり方』の読了後に作成したものです。
(画像引用元:STUDY HACKER|シンプルな勉強技術で学習効率上げまくり! 「紙1枚」でまとめる勉強法3選 ※振り返りがしやすいように「目的:赤、本から得た知識:黒、気づき:緑」で色分けをしました)
このようなマインドマップを読んだ本とセットで保管しておけば、勉強したことを復習しやすくなるだけでなく、学んだ内容から自分なりのアイデアを膨らませるきっかけもつくれますよ!
【2】アウトプット要約
「勉強は読書が中心」の人で「絵や図を描くのがあまり好きではない」という方には、本の内容を極限まで端的な言葉にする「アウトプット要約」がおすすめです!
アウトプット要約は、教育支援事業の株式会社カルペ・ディエム代表取締役、西岡壱誠氏が提唱する方法。やることは非常にシンプルで「読んだ本の帯コメントを30字以内で考える」というものです。
西岡氏によると、アウトプット要約は以下のふたつの理由から、本の内容の深い理解につながるそう。
- 帯コメントは本の内容を知らない人に向けて書くもの。「誰が見てもわかる要約」を書くには、本の内容をしっかりかみ砕いて、自分の言葉に直さないと書けない。
- 帯コメントとして字数を短くまとめるためには、著者の主張を的確に理解しなければ書けない。
とはいえ、いきなり「帯コメントをつくれ」と言われても難しそうですよね。そこで西岡氏は、コツを2点紹介しています。
- わざと「?」で終わらせてみる
- 「ではなく」というフレーズを使ってみる
筆者も実際に、西岡氏の著書『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』で勉強した内容を帯コメントとして要約してみました。
読む力=人の考えに寄り添う力。本と「会話」してますか?(27文字)
今回は「?」で終わらせるというテクニックを実践。西岡氏が言っていたコツを意識するだけで、グッと実践のハードルが下がりました。考えた帯コメントを実際に人に見てもらい、読みたくなったかどうか聞いてみると、より効果もありそうですね。
【3】エアー授業
読書だけでなく、問題演習や講義、セミナーなどでの学習もするといった「勉強は読書に限らない」人で「自宅でひとりで勉強することが多い」という人には、「エアー授業」というユニークなアウトプット方法をご紹介します。
エアー授業とは、「自分が先生になったつもりで架空の生徒に質問する→生徒役として自分で答えてみる」という流れを、声に出して行なうというもの。坪田塾を運営する坪田信貴氏などが、理解の深まる勉強法としてすすめています。周囲を気にせずしゃべれる「自宅でひとり」の環境でこそ実践できる方法です。
冒頭の樺沢氏によると、エアー授業のような「話す」アウトプットは学習内容の記憶定着に有効だそう。世界史の年号や人名といった知識を覚えてもすぐに忘れてしまいがちなのは、「意味記憶」という忘れやすい記憶の状態だから。しかし「××年に○○が〜したあと、次に△△が出てきて…」というように話す(説明する)ことにより、「エピソード記憶」という忘れにくい記憶に移行できるのです。
たとえば、あなたが営業の仕事で必要な商品の売り込み方の知識を、セミナーで勉強したとしましょう。「営業に大事なのは『商品の価値を伝えること』だ」と学んだ場合、以下のようなエアー授業の台本が考えられます。
先生:
営業で大事なのは「商品を買わせる」意識ではなく「商品の価値を伝える」意識です。たとえばここに「血糖値を測定できるコンタクトレンズ」があるとします。「血糖値が測定できます」「安いです」という売り込み方が前者のものだとしたら、後者の売り込み方はどんなものになりますか?
生徒:
「血糖値測定の苦痛や、命の危険にさらされるリスクを軽減するもの」と売り込みます。
実際につくってみると、先生役がする質問を考えるところがミソだなと感じました。このプロセスにより、重要事項を確実に忘れにくくなると思います。たとえひとりでも声に出すのはちょっと……と感じる場合は、台本をつくってみるだけでも効果がありそうですよ。
【4】付箋ノート
読書による勉強だけでなく、問題演習をしたり講義を受けたりと「勉強は読書に限らない」人で、「自宅以外で勉強することも多い」というあなたには、黙々と行なえて内容も場所も選ばない「付箋ノート」をつくることがおすすめです。
付箋ノートとはその名のとおり、勉強内容や気づきを書いた付箋をノートに貼りつけていくというもの。『1冊の「ふせんノート」で人生は、はかどる』の著者坂下仁氏によると、付箋ノートを使った勉強には以下のようなメリットがあります。
- 要約力が上がる
→付箋という小さい面積のなかに情報をまとめるため、自然と要約力が身につく。 - 色分けが容易
→複数色のペンを使い分けるよりも、付箋そのものの色を変えるほうが、視覚的にインパクトのある色分けが簡単にできる。 - 貼り直ししやすい
→自由に並べ替えができ、まとめやすい。
やり方もとてもシンプルです。ノートとペン、付箋を用意したら、あとは勉強したことなどをどんどん付箋に書いてノートに貼るだけ。
(画像引用元:STUDY HACKER|「付箋ノート」はもう試した? 脳力アップと情報整理に役立つ “最強ノート術” のやり方)
エアー授業が「話す」アウトプットであったのに対し、こちらは「書く」アウトプット。樺沢氏によると、「書く」アウトプットには「自分の得たい情報を収集しやすくなる」というメリットがあるそう。これは、書くことで脳のRAS(脳幹網様体賦活系)という神経ネットワークが刺激され、書いた情報に対する集中力が高まるから。
たとえば上の画像の例のように、「ドーパミン」というキーワードを付箋に書きノートに貼っておくと、その後の学習でも「ドーパミン」についての情報に注意が向きやすくなります。そして新たな情報を得るたび付箋に書き込み、貼り直しをしながらまとめていけば、より知識が深まるはず。「話す」より「書く」ほうが好みという方に、ぜひ試していただきたいアウトプット法です。詳しいやり方を紹介したこちらの記事『「付箋ノート」はもう試した? 脳力アップと情報整理に役立つ “最強ノート術” のやり方』も、よろしければお読みください。
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シチュエーションや得意不得意に合わせて、ぜひ自分に最適なアウトプット方法を勉強に取り入れてみてください!
(参考)
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
マインドマップの学校|マインドマップはなぜ役立つ?
STUDY HACKER|京大首席合格者が読書後に実践する「A4用紙アウトプット術」が思考整理に効く。
ジェームス・W・ヤング 著, 今井茂雄 訳(1988),『アイデアのつくり方』, CCCメディアハウス.
STUDY HACKER|シンプルな勉強技術で学習効率上げまくり! 「紙1枚」でまとめる勉強法3選
西岡壱誠(2018),『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』, 東洋経済新報社.
THE21オンライン|高学歴芸人ロザンの必勝勉強法・「エアー授業」とは!?
THE21オンライン|勉強は頑張らない。だから、うまくいく(下)
坂下仁(2016),『1冊の「ふせんノート」で人生は、はかどる』, フォレスト出版.
STUDY HACKER|「付箋ノート」はもう試した? 脳力アップと情報整理に役立つ “最強ノート術” のやり方
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。