心理学の認知バイアスとは? 8種類をわかりやすく解説!

心理学の認知バイアスとは? 8種類をわかりやすく解説!

私たち人間には、「認知バイアス」という思考や判断の偏りがあるそうです。いつのまにかそのワナにはまり、振り回されているかもしれません。ビジネスシーンで気をつけたい、8つの認知バイアスを紹介しましょう。

認知バイアスとは

認知バイアスとは、経験や思い込みに影響され、一貫性・合理性に欠けた判断をしてしまう心理傾向です。「省エネ」によって効率的に意思決定ができるメリットがある一方、不適切な結果をもたらすデメリットがあります。

東京大学薬学部教授の池谷裕二氏は、認知バイアスを「脳が効率よく働こうとした結果、副次的に生じてしまったバグ」だと説明します。多くの「待てよ、これは〇〇したほうがよさそうだ」といった反射的な直感は有益ですが、想定外のことが重なるとピントがズレてしまうのだとか。

そんな脳のバグ=認知バイアスを、十文字学園女子大学教授の池田まさみ氏らが企画制作を行なう「錯思コレクション100」や、あらゆる研究、有識者の言葉などを参考に取り上げ、ビジネスシーンに当てはめて説明していきます。

認知バイアス1:恥ずかしいじゃ済まない「虚記憶」

アメリカの認知心理学者エリザベス・ロフタス氏の研究では、「実際には起こっていない経験」について話し合った被験者の25%にありもしない記憶が生まれたそう。これは「虚記憶(虚偽記憶)」という認知バイアスです。私たちは、経験していないことを、まるで経験したかのように思い出す可能性があるのだとか。

初めての店で「前はあの席だったね」と勘違いする程度なら笑いごとで済みますが、それが重要な仕事に関することなら、本人も周囲も笑えません。行動記録をつけましょう。

認知バイアス1:恥ずかしいじゃ済まない「虚記憶」

認知バイアス2:“理解されている” は勘違い「透明性の錯覚」

「透明性の錯覚」は、1998年にコーネル大学心理学教授のトーマス・ギロヴィッチ氏らにより報告されました。自分の感情や考えていることが、実際以上に他者に伝わっていると思う錯覚です。

「さっきのニュアンスで、みな私が何を言いたいかわかったはず」などと思い込み、確認もせず勝手に進めてばかりいると「困ったちゃん」の烙印を押されてしまいます。あなたの心のなかは、さほど理解されていないのです。ちゃんと説明しましょう。

認知バイアス2:“理解されている” は勘違い「透明性の錯覚」

認知バイアス3:“間に合います” は本当か?「計画錯誤」

過去に計画通り進まなかった経験があっても、人は新たなことを計画する際、「大丈夫、これくらいあれば余裕でできる」などと楽観的に考えてしまうのだとか。

行動経済学者のD・カーネマン氏らは、こうした傾向を「計画錯誤」と名づけたそう。このワナにはまってしまうと、「いつも間に合わない人」とレッテルを貼られてしまいます。過去の失敗を明白にして次に活かせるので、この場合も行動記録が役立つでしょう。

認知バイアス3:“間に合います” は本当か?「計画錯誤」

認知バイアス4:状況は完全無視の「対応バイアス」

「たくさんの外国人が人気店に並ぶ姿」を目にしても、「並ぶのは日本人ばかり」といった認識を変えない場合があります。それは、「対応バイアス(基本的な帰属のエラー)」がかかっているから。

状況の影響力(上の例では『人気店には誰でも並ぶ』)を過小評価し、その人物や集団の特性(上の例では『日本人はどこでも行儀よく並ぶ』)を重視してしまうことを指します。

うわさ話ならまだしも、仕事の意見に対応バイアスがかかっていると洞察力を疑われる可能性が。物事の背景にも目を向けましょう。

認知バイアス4:状況は完全無視の「対応バイアス」

認知バイアス5:昔はよかった症候群「バラ色の回顧」

「あーあ、昔はこの会社もよかったなぁ。あの頃に戻りたいなぁ」などとウットリしてはいませんか?

人は過去を「バラ色の眼鏡をかけて」のぞき込み、美化してしまうのだとか。これを「バラ色の回顧」と言うそう。グロービス電子出版発行人で編集長の嶋田毅氏は「過去美化バイアス」と表現しています。

故郷を懐かしむだけならいいですが、仕事で「昔はよかった」ばかりでは進歩できません。なぜ過去がいいのか自問すれば、いまの問題点に気づけるかも

認知バイアス5:昔はよかった症候群「バラ色の回顧」

認知バイアス6:“思ったとおり!” は「確証バイアス」のワナ

自分にとって都合のいい情報ばかりが目に入り、都合の悪い情報が目に入りにくくなることを「確証バイアス」と言います。

自分が正しいことを裏づける情報ばかりを集め、反証する情報を無視して仕事を進めると、のちに指摘されたり失敗したりで、詰めの甘さが露呈してしまいます。「反証する情報」を意図的に探しておけば、むしろ対策すべきリスクと新しいアイデアを発見でき、評価されるでしょう。

認知バイアス6:“思ったとおり!” は「確証バイアス」のワナ

認知バイアス7:公平性を奪う「内集団バイアス」

「いろいろ検討しましたがA社に決めました」「そう言えば、A社の担当者は君と同じ大学だったね」――私たちには自分と同じ集団に属するメンバーの能力を、高く評価しがちな傾向があるのだとか。「内集団バイアス」あるいは「内集団びいき」と言うそうです。

高知工科大学准教授の三船恒裕氏らが2015年に発表した内容によると、「たとえばAとBが同じ集団にいるとして、Aだけが同じ集団だと知っている場合は、AによるBに対する “ひいき” は起こらない」とのこと。つまり、仲間の目を気にして起こる認知バイアスなのです。

公平性を保てるよう、仲間には心のなかでこっそりハンディキャップをつけ、ほかと比較してみては?

認知バイアス7:公平性を奪う「内集団バイアス

認知バイアス8:個性的なのは私たちだけ「外集団同質性効果」

イギリスの社会心理学者ヘンリー・タジフェル氏の実験では、前項の「内集団バイアス」に加え、「外集団同質性効果」という認知バイアスも明らかになったそう。自分が属するグループ以外はみな、似たり寄ったりだと認識してしまうバイアスです。

自分と違う年代のタレントがみな同じ顔に見えるのも、そのバイアスがかかっているからなのだとか。会社でも外でも、いろんな年代、タイプの人と交流をもつようにすれば、このバイアスも弱まるでしょう。

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「8つの認知バイアス」について説明しました。物事を決める際にはいったん立ち止まり、「この考え方に偏りはないか?」と自問してみてくださいね。

(参考)
池谷裕二(2016),『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』, 講談社.
APA PsycNet|The illusion of transparency: Biased assessments of others' ability to read one's emotional states.
三船恒裕・山岸俊男(2015),「内集団ひいきと評価不安傾向との関連:評判維持仮説に基づく相関研究」, 社会心理学研究, 31巻, 2号, pp.128-134.
ニッセイ基礎研究所|内集団・外集団バイアス-ファンやサポーターは、どうして熱中するのか?
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases|錯思コレクション100について
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases
NIKKEI STYLE|夏休みの宿題も仕事も達成困難 最悪招く計画錯誤とは
東京大学|『日本人は集団主義的』という通説は誤り
GLOBIS 知見録|昔は良かった? -過去美化バイアス
野村證券|証券用語解説集|認知バイアス
日本の人事部|確証バイアス
Wikipedia|Elizabeth Loftus

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