A4メモ書きでできる「ゼロ秒思考」を試してみたら脳内がクリアになった

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「同僚よりも仕事が遅くて恥ずかしい……」
「なぜ私は問題解決が苦手なのだろう」
「頭の中がうまく整理できない」

このように自分の思考力に悩んでいる人は、ただ「自分には才能がない」「思考が遅いのはどうにもならない」と諦めているかもしれません。しかし、それは間違いです。思考力は、簡単なトレーニングで鍛えることができます。

今回ご紹介するのは、元マッキンゼーの赤羽雄二氏の著書『ゼロ秒思考』で紹介された、「A4用紙1枚のメモ書き」で心の整理をし、考えをまとめるトレーニング方法です。以下で詳しく見ていきましょう。

ゼロ秒思考とは

赤羽雄二氏が編み出したゼロ秒思考術は、A4のメモ書きを繰り返すことで、思考のスピードが上がるというものです。頭の中をクリアにし、すばやい決断を可能にし、実行力を身につけられます。方法は以下の通りです。

  • メモはすべてA4用紙に書きます(コピー用紙でも、適当な裏紙でもOK)
  • 左上にタイトル右上に日付を書き、本文は横書きにしましょう
  • 気になること、疑問点、思いついたこと、次にやるべきこと、自分の課題など、頭に浮かんだことを全てメモに書き出しましょう
  • 1枚1分ですばやく書きます
  • この作業を10回、すなわち毎日10ページ(1日10分)行ないましょう
  • 一度にまとめて書くのではなく、思いついたその瞬間に書き留めましょう
  • 紙を持ち歩いて、移動中や空き時間など気づいたタイミングで書くのもOKです

赤羽氏によると、これを3週間も続けると、確実に自分の理解力、コミュニケーション力の変化を自覚できるようになるのだとか。想像力や判断力が向上し、人が言っていることを瞬時に理解できるようになったり、自分の発言が通りやすくなったりするそう。

ポイントは、何か考えが浮かんだらすぐ、1分間で書き出すこと。スピードを意識して、深く考えずに、頭に浮かんだものをどんどん文字にしていきましょう。自分では気づいていなかった本当の気持ちや考えが出てくるようになりますよ。

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書くことの効果とは

「メモ書き」だけで思考のスピードが上がるなんて、にわかに信じがたい気もしてしまいますが、「書く」ことは、なぜこれほどまでに思考力を向上させるのでしょうか。

ネガティブな感情を解消する

ポジティブ心理学を研究するノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン氏によると、ネガティブ思考で、怒り・恐怖・ストレスなどの負の感情を抱えている人は、視野が狭まり、目の前のことしか見えなくなってしまうのだそう。人は、ネガティブな感情を持つと、ほかの幅広い選択肢や可能性に目をつぶってしまうのです。そして、そんなネガティブな感情を落ち着かせるために有効なのが、紙に書き出すことなのだとか。

米国の心理学者であるジェームス・W・ペネベイカー氏の研究によると、心の内にこもったネガティブな感情を文字にして、表に出すことは、セラピー効果、つまり感情を落ち着かせる効果があるのだそう。嫌なことがあったとき、紙に書き出す行為は、「ライティングセラピー」と呼ばれ、臨床心理学でも使われている方法です。負の感情は、書き出すことで頭の中に留まることを防ぎます。そして、紙に書かれているのを見ることによって、客観視できるようになり、解決の糸口が見つかることもあるのです。

また、社会心理学者でバージニア大学教授のティモシー・ウィルソン氏も、書くという行為には、ネガティブな考えのサイクルをポジティブな考えのサイクルへと変化させる効果があると述べています。

このように、「書く」という行為には、人の思考を妨げるネガティブな感情を解消する効果があるのです。

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脳の容量を増やす

頭のなかを埋め尽くしている考え事を、書いてアウトプットすることによって、そのぶん脳の容量が増え、情報処理の速度が速くなる効果もあります。

作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力のことを、ワーキングメモリと呼びます。脳科学者の池谷裕二氏によると、ワーキングメモリの容量には限界があり、人が頭の中で同時に処理できる情報は、7個程度なのだとか。抱えているタスクに優先順位を適切につけ、仕事の段取りをうまく進めるためには、頭の中をクリアにしておきたいですね。

「自分は仕事が遅い」「あの人の発言ばかりいつも認められて悔しい」などネガティブな考えを抱える人は、頭の容量がいっぱいです。書くことで、抱えていたものを手放し、考える余裕を広げましょう。

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実際にやってみた

実際に、筆者が「ゼロ秒思考術」を試してみました。

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まず感じたのは、モヤモヤした感情が軽くなったことです。仕事での打ち合わせの出来について、ずっと気になっていたのですが、自分の反省点や今後の課題がスラスラと出て来ました。通常は頭に浮かんですぐに流れてしまうような事柄が、紙に書き出すことによって、視覚を通して改めて自分に訴えかけてくるような感覚です。「もう絶対に同じミスをしないぞ」という気持ちが強まりました。

日頃は言葉にしたり、意識的に考えたりしないような事柄も、あえて紙に書くことによって、おろそかにしていたと気づけました。たとえば、休日は「気づいたら一日が終わっていた……」なんていうことがしょっちゅうあるのですが、より充実させるためにはどうすれば良いのか考え、書き出しただけで意識が変わりました。

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また、書いているうちに、「考え事は頭の中でするものだ」というこれまで抱いていた概念が覆されるような感覚に陥りました。頭の中で考えたことは、よほど何度もくり返し考えない限り流れていってしまいますが、紙に書いて可視化することによって、本当の意味での頭の中の整理ができたように思います。

アウトプットしたことで脳内がすっきりしましたし、新しいことがインプットしやすくなりそうなので、今後も継続するつもりです。仕事中もこのメソッドを応用したいと思いました。

***
もしも自分には「情報処理能力」「思考力」「判断力」が欠けていると感じているのであれば、ぜひ1日10分の「メモ書き」を続けてみてください。頭の中のモヤモヤが減り、考えが整理され、思考が深まり、仕事のスピードアップができますよ。

(参考)
National Center for Biotechnology Information|The broaden-and-build theory of positive emotions
The New York Times|Writing Your Way to Happiness
リクナビNEXTジャーナル|A4の裏紙一枚で頭スッキリ! モヤモヤをなくし、即断即決できるようになる「ゼロ秒思考」
President Online|生産性を上げる「脳のメモリ」の増やし方

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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