巻き込み力とは? 全社会人必見の能力が明らかに!

巻き込み力とは1

巻き込み力とは、相手から自分への協力を引き出す能力。周囲のサポートを獲得し、スケールの大きな仕事を成功させるのに必要な、大切なスキルです。

株式会社スタジオジブリの代表取締役プロデューサー・鈴木敏夫氏も、巻き込み力の高い人だと言えるでしょう。鈴木氏は、映画をヒットさせるべく、多くの人や企業と協力して宣伝活動を行ないました。2001年公開の『千と千尋の神隠し』が日本歴代興行収入第1位(2020年4月時点)という成果を挙げた背景には、鈴木氏の巻き込み力があったとのではないでしょうか。

そこで今回は、まわりの信頼と協力を得るコツを知りたいみなさんに、巻き込み力を発揮するための行動をご紹介します。

巻き込み力とは

巻き込み力とは、周囲の人の信頼と協力を獲得するスキル。言い換えれば、相手を説得して味方につけるためのコミュニケーション技術です。

「人を巻き込むのがうまい人」を思い浮かべてみてください。信頼できる・説得力がある・顔が広いなど、人を動かす力をもつ人をイメージするのではないでしょうか。要するに、巻き込み力のある人は、人を動かすコツを心得ているのです。

では、人を動かすコツとはなんでしょう? 米国を代表する社会心理学者ロバート・B・チャルディーニ氏は、世界的ベストセラー『影響力の武器』において、人間の行動原理を6つ挙げています。

  • 返報性:何かしてもらったらお返しをしなければと思う
  • コミットメントと一貫性:言動に一貫性をもたせたくなる
  • 社会的証明:多くの人が支持するものは正しいと感じる
  • 好意:好意を感じる人の言葉に同意したくなる
  • 権威:権威のある人の言葉は正しいと感じる
  • 希少性:手に入りにくいものほど欲しくなる

心当たりはありませんか? 親切にしてくれた相手にはお返ししないと落ち着かないし、友人の言葉には同意したくなるものですよね。

上記のように、人間には一定の行動原理があります。そして、その行動原理を理解して人の気持ちを動かし、協力を得る力こそ、巻き込み力なのです。

巻き込み力とは2

巻き込み力が大切な理由

巻き込み力は、仕事で成功したいビジネスパーソンにとって重要なスキルです。どんなに優秀な人でも、ひとりの力には限界があります。自分に足りないものを補ってくれる仲間と協力してこそ、スケールの大きい仕事を成し遂げられるのです。

特に、多様な価値観が社会で受け入れられつつある現代のリーダーにとって、巻き込み力は欠かせません。価値観の異なる人と協力関係を築き、自発的な行動を促せるリーダーシップが求められています。

リーダー以外の立場でも、巻き込み力は必要です。経済産業省が提唱している「人生100年時代の社会人基礎力」では、「働きかけ力」が求められています。働きかけ力とは、多様な人たちとつながり、信頼を獲得し、周囲を巻き込む力のこと。

つまり、巻き込み力は「社会人の基礎」とみなされているのです。巻き込み力は、価値観が多様化しつつある現代だからこそ、求められているのでしょう。

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巻き込み力を身につける方法

では、どうすれば巻き込み力が身につくのでしょうか? 話し方研修を手がける、株式会社櫻井弘話し方研究所代表取締役の櫻井弘氏によると、相手を巻き込むには、以下のような3段階のコミュニケーションが大切なのだそう。

  1. 関係形成:信頼関係の土台を築く
  2. 理解促進:説得により共感を得る
  3. 自発意思喚起:頼み方を工夫し、自発的な協力を得る

3つのステップそれぞれで必要なコミュニケーション技術を身につければ、巻き込み力が高まりそうですね。各ステップで必要なのは、以下の方法です。

  1. 関係形成:相手に好かれ、信頼される方法
  2. 理解促進:相手を説得する方法
  3. 自発意思喚起:相手に喜んで協力させる方法

ステップ1:好かれ、信頼される

人に好かれ、信頼されるには、3つのコツがあります。

聞き手に回る

仕事や趣味など、自分が好きなテーマについて語るのは楽しいもの。その話に喜んで耳を傾けてくれる人がいたら、好意を抱いてしまいますよね。相手が気持ちよく話せるよう、タイミングよく相づちを打ったり質問を挟んだりして、聞き手に回りましょう。

名前を覚える

人望が厚い人は、人の名前をちゃんと覚えているもの。人間関係研究の先駆者デール・カーネギー氏いわく、名前とは、他人から言われて最も嬉しい大切な言葉なのだそう。

みなさんも、自分の名前を忘れられていたらショックですよね。逆に、名前をすぐ覚えてもらえたら、人間として尊重されていると感じるはず。信頼を得るため、まず名前を覚える努力をしましょう。

人前でほめる

自分の能力を高く評価してもらったら、誰でも嬉しいですよね。ほかの人たちの見ている前でほめられたら、多少の照れは感じるものの、さらに嬉しくなるのではないでしょうか。

米国の哲学者で心理学者のウィリアム・ジェームズ氏によると、人間は、他人に認められたいという強い願望をもっています。「認めてほしい」という他人の気持ちを満たせる人は、感謝と信頼を得られることでしょう。

ステップ2:説得する

相手を説得するには、3つのコツがあります。

最初のうちに「イエス」と言わせる

チャルディーニ氏によると、人間の行動原理には「コミットメントと一貫性」があります。言動の一貫性を保つため、「イエス」と肯定的な意見を述べたあとに、「ノー」と否定するのは難しいのです。

この原理を利用し、相手に「イエス」と言ってほしいときは、その前に相手が確実に「イエス」と答える質問をしてみましょう。

A「Bさん、英語圏に住んでいたことがあるんでしたっけ」
B「はい、英国に留学していました」
A「そうなんですね。じつは英語の説明書を翻訳しないといけないんですが、手伝ってもらえますか?」
B「いいですよ」

英国に留学していたなら、ある程度の英語能力があるはず。「英語能力があるのに翻訳を断る」だと一貫性が保てないため、「英語能力がある。だから翻訳を手伝う」という選択を引き出しやすいのです。

意見を求める

カーネギー氏によると、人間は、他人から与えられた考えより、自分で導き出した考えを重視するそう。つまり、自分の考えを説明するのではなく、相手を自分と同じ考えにたどり着かせるのです。

たとえば、店に入って商品を眺めていると、いきなり店員に「買ったほうがいいですよ」と言われたら困りますよね。でも、「どちらの商品がお好みですか?」と意見を求められたらどうでしょう。選んだ商品がどんなにすばらしいか説明されたら、気分がよくなるのではないでしょうか。

このようなテクニックは、接客の現場でよく使われています。

店員「AとB、どちらがお好きですか?」
客「Aのほうがいいですね」
店員「Aはすてきですよね。お客様によくお似合いですよ。ご試着はいかがですか?」
客「じゃあ、お願いします」

こうすれば、押しつけがましい雰囲気を出さず、気分よく意思決定してもらえるのです。

権威を味方につける

スケールの大きな仕事を成功させるには、物事の決定権を握る「キーパーソン」へのアプローチが重要。学生時代に「にっぽんど真ん中祭り(どまつり)」を立ち上げ、日本最大級の踊りの祭典になるまでに育て上げた、公益財団法人にっぽんど真ん中祭り文化財団専務理事の水野孝一氏は、権威を借りる重要性を以下のように語っています。

市役所で物事を通そうとする時に必要なのは、部外者の情熱ではなく、市役所の内部をよく知っている、トップから支持を受けた担当者であることを思い知らされた。 

(引用元:水野孝一(2020),『21歳の学生が、200万人を呼び込む「どまつり」を作り上げた! 人も街も動かす!巻き込み力』, KADOKAWA.)

祭りを開催するため、道路の使用許可を警察署に求めたものの、取り合ってもらえなかったそう。しかし、市長を主催側へ引き入れると、市の総務局に祭りの窓口と担当者が誕生。担当者を介して交渉したところ、すんなり成立したそうですよ。

難しい交渉に挑むなら、権威のある人や団体の力を借りましょう。たとえば、地域でイベントを催したいなら、地域活性化に力を入れている地元の自治体や商工会議所の協力を取りつけることです。

ステップ3:喜んで協力してもらう

「仕方なく……」ではなく、喜んで協力してもらうには、2つのコツがあります。

メリットを強調する

相手の積極性を引き出すには、協力してもらうメリットを強調することが基本です。たとえば、成果を挙げたいという意識が強い相手なら、「あなたの協力を得られたら間違いなく成功します」などと言ってみましょう。成果を挙げられるチャンスだと感じ、喜んで協力してくれるのではないでしょうか。

尊重心を示す

喜んで協力してほしければ、相手への「尊重」を示すことが大事です。社会心理学者の坂田桐子氏らが『実験社会心理学研究』で2011年に発表した研究では、以下の示唆が得られました。

所属集団のメンバーから「尊重」されていると感じれば感じるほど、人々は報酬の期待なしに、職務要求にはない内容にも自発的に行動する

(引用元:早瀬良・坂田桐子・高口央(2011),「誇りと尊重が集団アイデンティティおよび協力行動に及ぼす影響―医療現場における検討ー」, 実験社会心理学研究, 50巻, 2号, pp.135-147. 太字による強調は編集部が施した)

いつも相手の気持ちや立場に配慮した態度を心がけ、尊重心を示すことが大切なのです。みなさんも、味方につけたい人がいたら、「あなたならどうしますか?」と意見を求めたり、「ぜひお力を貸してください」と頼んだりしてはいかがでしょう。

以上、巻き込み力を高めるコツを、3つの段階に分けて紹介しました。

巻き込み力とは4

立場別・巻き込み力の発揮方法

ビジネスパーソンなら誰でも巻き込み力が必要なことと、巻き込み力を高めるコツをご紹介しました。とはいえ、「積極的にコミュニケーションをとるのは苦手で……」としり込みしてしまう人もいるかもしれませんね。

そこで、職場で巻き込み力を発揮する具体的な方法を、相手の立場別に紹介します。経営学者の坂本雅明氏が、課長クラスの1,226人を対象とした2012年の調査で得た知見を参照しました。

上司への頼み方

まめに相談・報告する

自分の提案や企画を上司に採用してもらいたいなら、普段から相談をもちかけておくといいでしょう。多忙な上司にいちいち話しかけるべきではないと思うかもしれませんが、上司からすると、まめに意見を求めてきたり情報を渡してくれたりする部下の提案は承認しやすいものです。

会社の利益を強調する

部下の提案を判断する際、上司は部下の熱意よりも、会社や部署の方針・利益を考慮しています。自分の提案・企画を通してほしいなら、自分のやりたいことを情熱的に語るのではなく、会社や部署の方針に沿い、利益にかなう内容なのだとアピールしましょう。

部下への頼み方

業務の意味を説明する

部下に仕事を頼むなら、その業務の意義を丁寧に説明しましょう。部下が仕事の全体像を把握していないと、トラブル時に「指示されていないことはわからない」とすぐ諦めたり、途中で手を抜いたりしてしまうかもしれません。

意義のわからない仕事は「やらされ感」が強いもの。業務がなぜ必要なのか、会社の事業にどう関わっているのかを説明し、納得してもらって初めて、部下の自発性が引き出せるでしょう。

部下個人のメリットを伝える

部下は会社や部署の損得より、自分個人の損得が気になるもの。部下に業務を任せるときは、自己実現やキャリア形成につながる、強みや特技が活かせるなど、その業務をこなすメリットを伝えてみましょう。「自分のためになる仕事」だと感じ、積極的に引き受けてくれますよ。

他部署への頼み方

相手の利害を把握する

社内の他部署に依頼するときも、ほかの相手と同様です。その部署の利害を理解し、相手の立場で考えましょう。

他部署に協力を求めたとき、「予算がない」「人手が足りていない」などと断られたことはありませんか? 言葉通りの理由だったもしれませんが、「協力するメリットがない」「うちが損をする」という本音もあったのではないでしょうか。

たとえば、あなたは技術部所属。「新商品の営業に、多くの人員を割いてもらえませんか」と営業部に頼んだところ、「確実な利益が見込める従来商品に力を入れたい」と断られてしまいました。

そこで、「すでに成熟期に差しかかった従来商品は、いずれ売り上げが減少します。将来も売り上げを維持できるよう、いまから次代のヒット商品を育てませんか?」などと言い、目先のデメリットから将来のメリットへ相手の視点を動かします。将来的に大きな利益が見込めそうだと感じてもらえれば、協力を得られるのではないでしょうか。

以上、職場で巻き込み力を発揮する方法をご紹介しました。

巻き込み力とは5

巻き込み力に関する本

最後に、巻き込み力に関するオススメの本を2冊、ご紹介します。

『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか(第3版)』

チャルディーニ氏は、人がだまされる仕組みを解明しようとセールスや広告の世界で働き、相手に「イエス」と言わせるテクニックを学びました。人間が無意識に動かされる6つの原理を導き出し、豊富な事例を収録したのが、ベストセラー『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか(第3版)』。科学的根拠に基づいた専門的な内容ですが、一般の人でも読みやすいよう平易な文章で書かれています。

随所に挿入された「読者からのレポートと著者からひと言」コーナーや、ユーモラスな1コマ漫画で、より楽しく理解を深められるでしょう。巻き込み力に必須の「人を動かす力」を学ぶ基本書です。

『21歳の学生が、200万人を呼び込む「どまつり」を作り上げた! 人も街も動かす!巻き込み力』

『21歳の学生が、200万人を呼び込む「どまつり」を作り上げた! 人も街も動かす!巻き込み力』は、当時大学生の水野氏が「どまつり」を成功させるまでの体験をつづったドキュメントです。「多くの人が参加する祭りをつくりたい」と夢を抱いた水野氏が、多くの人を巻き込む経緯で経験した失敗や成功が描かれています。

「共感はどのように生まれるか」「人や組織を味方にする方法」など、イベントを開催するために巻き込み力を必要としている人にはぴったりの内容です。

***
巻き込み力は、全ビジネスパーソンが備えておきたい重要な能力。巻き込み力を高めるには、まず信頼関係の土台を築き、相手を理解することが必要です。あなたも、本記事でご紹介したコツを実践し、巻き込み力に磨きをかけてみませんか?

(参考)
ロバート・B・チャルディーニ 著, 社会行動研究会 訳(2014),『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか(第3版)』, 誠信書房.
デール・カーネギー 著, 東条健一 訳(2016),『人を動かす(完全版)』, 新潮社.
デール・カーネギー 著, 山口博 訳(1992),『人を動かす(第2版)』, 創元社.
水野孝一(2020),『21歳の学生が、200万人を呼び込む「どまつり」を作り上げた! 人も街も動かす!巻き込み力』, KADOKAWA.
鈴木敏夫(2016),『ジブリの仲間たち』, 新潮社.
櫻井弘(2018),『人を「巻き込む」コミュニケーション技術 その気にさせる仕事のさばき方』, 日本経済新聞出版.
「巻き込み力 相手が“率先”して協力してくれる仕事の頼み方」, 日経ビジネスアソシエ, 2017年8月号, pp.48-51.
経済産業省|社会人基礎力
富士ゼロックス|なぜ部門間の協力が進まないのか―周りを巻き込む3つの方法―
早瀬良・坂田桐子・高口央(2011),「誇りと尊重が集団アイデンティティおよび協力行動に及ぼす影響―医療現場における検討―」, 実験社会心理学研究, 50巻, 2号, pp.135-147.
國田圭作(2019),「『行動デザイン』―行動から『人間理解』を捉え直すマーケティングの方法論」, システム/制御/情報, 63巻, 4号, pp.28-34.

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院にて欧州諸国の歴史について研究。大学院修了後は、国立大学及び官公庁図書館の司書業務に従事。ドイツやチェコを旅したことから、レトロでちょっと不思議な童話や人形劇の世界を知り、今も魅了され続けている。

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