「頑張っているつもりなのに、頭が働いている気が全然しない……」
「いつも要領が悪いから、効率よく仕事や勉強ができない……」
こう悩んではいませんか? それは、脳の機能がうまく作動していないからかもしれません。
脳をよりよく働かせるには、デジタルに頼らないアナログ習慣が絶大な効果を発揮します。今回は、脳が喜ぶアナログ習慣6つを各悩みに応じてご紹介しましょう。
【1】目覚めをよくするには「アラーム」より「自己覚醒」
アラームを鳴らしてどうにか目覚めるものの、起床後に頭が痛くなってしまい、いいコンディションで仕事を始められない……。そんなことがある人は、目覚め方を見直したほうがいいかもしれません。
大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身氏によると、目覚まし時計やスマートフォンから大音量で流れるアラームには、体に緊張をもたらす交感神経を一瞬で働かせる効果があるそう。そのため、心拍や血圧、体温が急上昇し、頭痛や不快感が出やすくなるのだとか。
では、大音量のアラームに頼らず起床するにはどうすればよいのでしょうか? 日本睡眠学会所属医師の坪田聡氏は、人間にもともと備わる「自己覚醒能力=自分が起きたい時間に起きられる能力」を働かせることをすすめます。
方法は簡単で、「何時に起きたいか」を強く思い描くだけでよいとのこと。というのも、起床時間を意識すると、体が自然に起きる準備を始めるから。坪田氏が示す実験結果によれば、朝6時に起きることを命じられ、アラームなしで起床した被験者の脳内では、覚醒効果をもたらす「副腎皮質刺激ホルモン」が4時半頃から増加していたことが判明したそうです。
また同氏は、寝る前に起きる時刻の数だけ(5時なら5回)枕を叩くのもよいと言います。この動作により起床したい時間を脳の記憶中枢に刻み込むと、高い自己暗示効果が得られるのだそう。大音量のアラームに頼ることなく、自然に起きられれば、気分よく仕事を始められるでしょう。
【2】正確な情報を手に入れるには「インターネット」より「新聞」
調べ物にはインターネットを活用している人が多数派ではないでしょうか。しかし、さまざまな情報が交錯するなかでは、正しいものを見極められず、間違った情報をうのみにしてしまうこともしばしば。思い当たる人は、インターネットから離れて「新聞」を読んでみてはいかがでしょう。
ジャーナリストの池上彰氏は、短時間で世のなかの動き全体を俯瞰できる「一覧性」や記者が現場を実際に取材して書いていることで得られる「正確性」という面で、新聞はほかのメディアより圧倒的に優れていると言います。たしかに、速報性を重視するがゆえに誤った情報が拡散されやすいインターネット記事より、事前に推敲が何度も行なわれる新聞のほうが、信頼性ははるかに高いと言えるでしょう。
新聞を読むときのひと工夫として、ぜひ音読もしてみてください。東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏によれば、音読には脳の前頭前野を活発化させ、記憶力や創造力、集中力を高める効果があるそうですよ。正確な情報を声に出して読む習慣、ぜひ取り入れたいですね。
【3】記憶を定着させるには「タイピング」より「手書き」
ちゃんとメモしたはずなのに、内容をまったく覚えていないということはありませんか? それは、パソコンに打ち込んで記録しているからかもしれません。メモは、紙に手書きするのがやっぱり一番。
医学博士の長谷川嘉哉氏は、手書きは脳をフル稼働させると言います。指先を動かすことのほか、自分の思考を言語化することによって、脳のさまざまな機能が動くのです。また、書き出す文字に脳が集中することにより、その内容が記憶に定着しやすくなるそう。
実際、2014年に行なわれたプリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究によれば、講義内容を手書きで記録した学生のほうが、パソコンで記録した学生よりも成績がよいと判明しました。
仕事なら会議で話された重要事項を記録するとき、勉強なら参考書の重要な部分をまとめるときといったように、覚えておきたいことがあるときには、手書きでの記録がおすすめです。
【4】情報を記録するときは「レコーダー」より「紙のメモ」
記録をとる際、ICレコーダーやスマートフォンの録音機能を使うのは、たしかに便利で楽ですよね。ですが、録音したものをあとで聞いても、ただ聞き流すだけになってしまい、どこが大事な話だったかわからない……といったことも起きがちです。記録をとるなら手書きのメモで可視化するほうが、あとで考えを深めるのに役に立ちますよ。
伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏によれば、書いて可視化することで「気づき効果」が得られるのだそう。それはたとえば、疲れがたまっている原因を突き止めたいとき、食事や行動の内容を手書きして可視化すると原因を発見できる、といったようなこと。
ですから、仕事の打ち合わせやセミナーの内容などを記録するときも、レコーダーに頼りきるのではなく、手書きによる記録も行なうほうがいいのです。書き出したものを見て初めて「あ、そういうことだったのか」と気づくことも多い、と山口氏は言います。
ピクトグラムアーティストの藤代洋行氏によれば、人間の脳に入る情報は視覚由来のものが80%以上だそう。情報をわざわざ可視化するからこそ、気づきを得て考えを深めることができるのですね。
【5】帰宅するときは「交通機関」より「徒歩」
仕事で疲れているとき、たとえ短い距離でも電車やバスで移動したり、階段よりもエレベーターやエスカレーターを使ったりしていませんか? もしかすると、疲れをとろうとしてさらに疲れを増加させてしまっているかもしれません。
日本ブレインヘルス協会理事長の古賀良彦氏によれば、運動不足は疲れやすさや不眠、さらにはストレスの原因になるとのこと。疲れているからといって乗り物を利用してばかりいると、自然と運動不足に陥りやすくなるのです。
そんなとき、乗り物を使った移動の一部を徒歩に置き換えれば、1日の疲れやストレスが解消できるでしょう。歩くことは、脳にもよい影響をもたらします。臨床心理士のジョナサン・ホーバン氏によれば、歩くと「ドーパミン」や「セロトニン」、「エンドルフィン」といった高揚感や幸福感をもたらす脳内ホルモンの分泌が促される効果があるそう。疲れているときこそ、少し多めに歩いてみてください。
【6】就寝前の読書は「電子書籍」より「紙の書籍」
夜遅くまで本を読んでも、内容があまり身につかないどころかただ疲れるだけ……というあなた。スマートフォンを使って電子書籍を読んではいないでしょうか。
就寝前に読む本は、紙の書籍をおすすめします。というのも、スマートフォンなどで電子書籍を読む際、端末の画面から「ブルーライト」という睡眠効果を減少させる光が放出されていることが多いから。精神科医の樺沢紫苑氏によると、光を放つものや点滅するものを見ると脳が刺激を受けて交感神経優位になってしまうため、スムーズな入眠のためにはできれば避けたほうがよいのだそう。
加えて本を読むタイミングは、寝る直前がおすすめ。東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏によると、記憶をつかさどる「海馬」は、日中に取り込んだ情報を睡眠中に整理して記憶に残すそうです。本の内容をより強く記憶したければ、本を読んだあと何もせずにすぐ寝るのが効果的だとのこと。
さらに、紙の書籍は、直接書き込んだりマーカーで線引きしたりとアウトプットしやすいのも特長。アウトプットを行なうとより記憶に残りやすくなる効果があるため、睡眠効果と相乗してより記憶力が高まりますよ。
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これまでにご紹介した、6つのアナログ活動を振り返ってみましょう。
これらは、日常生活でできる簡単なものばかり。ぜひ習慣化して、より脳を働かせて充実した毎日を過ごしてみてくださいね。
(参考)
ウートピ|アラームは起床の20分前に、大音量はNG! 脳が疲れない目覚め方
ダイヤモンド・オンライン|起きたい時刻に目覚める能力を、人間は本来持っている!
東洋経済オンライン|佐藤優も唸る!池上彰のスゴい新聞の読み方
東洋経済オンライン|ネットがあれば新聞不要と思う人に欠けた視点
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【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。