アサーティブ・コミュニケーションとは? 意味と例がわかる!

アサーティブ・コミュニケーションとは? 意味と例がわかる!

アサーティブとは、相手の気持ちを尊重しつつ、自分の意見を率直に主張できる状態。アサーティブなコミュニケーションは、「アサーション」や「アサーティブネス」とも呼ばれます。

自己主張をするには、攻撃的になる必要はありません。意識してトレーニングすれば、自分にとっても相手にとっても快適なコミュニケーションができるようになりますよ。

今回は、アサーティブ・コミュニケーションについてご紹介します。

アサーティブコミュニケーションとは

英語のアサーティブ(assertive)とは、「自信のある」「積極的な」という意味の形容詞。名詞化すると「アサーティブネス(assertiveness)」です。

アサーティブに関する情報発信を行なうNPO法人アサーティブジャパンの代表理事・森田汐生氏によると、アサーティブネスとは「相手も尊重したうえで、誠実に、率直に、対等に、自分の要望や意見を相手に伝えるコミュニケーションの方法論」。自分の欲求を押し殺さず、かといってそのままぶつけるのでもない、バランスのとれたコミュニケーションなのです。

森田氏によると、アサーティブという考えは米国における人権擁護運動をもとに発展し、近年では欧米だけでなく日本でもビジネス・医療・学校教育などの現場で活用されているそう。

たとえば、追手門学院大学は2014年度に「アサーティブ入試」をスタート。事前に「アサーティブプログラム」を受け基礎学力や議論の力を育てたうえで、その成果をはかる制度です。

『アサーティブ・コミュニケーション 言いたいことを「言える」人になる』(PHPエディターズグループ、2007年)を共著した産業カウンセラーの岩舩展子氏の話では、アサーティブ・コミュニケーションを身につけると「言いたいけれど言えない」が「言いたいことを言える」に変わるそう。

本当は主張したいことがあるのに我慢を重ねるばかりでは、不満がどんどんたまり、いずれ爆発してしまいますよね。そうなれば、人間関係に大きなヒビが入ってしまいます。

自分の考えを普段から適切に主張していれば、急に爆発して周囲の人との関係を壊してしまうこともないでしょう。アサーティブは、我慢しがちな日本人にこそ必要なスキルかもしれませんね。

アサーティブ・コミュニケーションとは

アサーティブ・コミュニケーションの「4つの柱」

前出の森田氏の著書『気持ちが伝わる話しかた 自分も相手も心地いいアサーティブな表現術』(主婦の友社、2009年)によると、アサーティブ・コミュニケーションにおける心のもちようは「4つの柱」で表されるそうです。

誠実

アサーティブとは、自分の心にも相手にも嘘をつかず、正直であることです。相手を優先しすぎて自分の欲求を押し殺すのは、アサーティブではありません。

まずは、自分自身に対して誠実であることが大切です。

率直

アサーティブであるには、意見を主張する際に遠回しな表現をせず、率直に伝えます。率直に伝えるとは、主語を「私」にするということです。

たとえば、「みんな困ってるみたいです」「上司がこう言っていたんですが……」と、自分の言いたいことを第三者に代弁させるのは、アサーティブではありません。自分の意見を述べるのですから、「私は~と思います」と自分を主語にしましょう。

対等

アサーティブコミュニケーションでは、対等であることも重要です。

森田氏によれば、「相手が誰であれ、落ち着いて堂々としている」のがアサーティブ。相手を下に見て威圧的な態度をとったり、目上の相手だからとオドオドしたりするべきではありません。

振る舞いだけでなく、心のなかでも対等である必要があります。対等のように振る舞っていても、心中で相手を見下しては、アサーティブではないのです。

自己責任

アサーティブ・コミュニケーションにおいて、自分の行動の結果は自分の責任です。自分が意見を主張したこと、あるいはしなかったことで生じた結果について、責任があるのです。

たとえば、「私が攻撃的な態度をとってしまうのは、相手がそうさせているからだ」と、すべての責任を相手に押しつけるのはアサーティブではありません。たとえ相手の非が大きくても、自分にも数パーセントの責任はあるはずです。

「自分に多少なりとも責任がある」と思えば、事態を好転させられるよう、アサーティブなコミュニケーションを実践していこうと思えるのではないでしょうか。

アサーティブ・コミュニケーションの「4つの柱」

アサーティブでないコミュニケーションとは

では、どうすればアサーティブになれるのでしょうか? まずは、悪い例として「アサーティブでないコミュニケーション」を見てみましょう。

アサーティブでない人には、3つのタイプがあります。あなたも当てはまっていませんか?

攻撃的

「攻撃的タイプ」は、自分の要求を押しつけがち。意見を主張はするものの、相手に配慮できていません。

まわりの人は萎縮し、意見することを諦めてしまうでしょう。

受身的

「受身的タイプ」は、対立を恐れるあまり、自分の意見をはっきり主張しません

我慢が多いため、ストレスをためがち。曖昧な表現をして、周囲をいらだたせることも。

作為的

「作為的タイプ」は、表立った対立を避け、裏で手を回します。周囲の人たちを巻き込んだり、陰で悪口を言ったり。

受身的のように見せかけ、じつは攻撃的なのです。

上に挙げた3つのタイプは、いずれも自己中心的

「攻撃的」「作為的」タイプはもちろん、「受身的」タイプも自己中心的なのは、自分のことばかり考えているから。相手に合わせすぎるのは親切心からではなく、「自分が嫌われないように」「自分が傷つかないように」という自己中心性からなのです。

アサーティブ・コミュニケーションでは、自分を中心にしないのはもちろん、相手も中心にしません。アサーティブ・コミュニケーションにおいて、自分と相手は対等だからです。

それでは、アサーティブ・コミュニケーションの具体例を見ていきましょう。

アサーティブでないコミュニケーションとは

アサーティブな会話例

ビジネスでのシチュエーション別に、アサーティブな対応と、攻撃的・受身的・作為的な対応の例を見てみましょう。

長引く会議を終わらせたいとき

会議が1時間も続いています。しかし、あなたには次の約束が。

自分の用事に遅刻せず、かつ会議の参加者たちを不快にさせないためには、どうしたらいいでしょうか?

【悪い例】

  • 「いつまでダラダラしゃべってるんだ!」とイライラ(攻撃的)
  • 「あのー……そろそろ時間が……」とビクビク(受身的)
  • 無言で時計を何度も見てアピール(作為的)

【アサーティブな例】

堂々と「そろそろ時間になりますので、終わりにさせていただきます」。

そもそも、次の約束があることを、会議の前に伝えておく。話がまとまっていなければ、別の機会を提案する。

同意を求められたとき

同僚たちとのミーティング中、ある案について「どう思う?」と尋ねられました。あなたは反対ですが、ほかの全員は賛成しています。

反対したいところですが、どうすべきでしょうか?

【悪い例】

  • 「いや、それはないと思うよ」と否定(攻撃的)
  • 「いいと思います」と我慢(受身的)
  • 「いいですね」と賛成しつつ、あとでほかの同僚に不満を言う(作為的)

【アサーティブな例】

「膨大な予算が必要になりそうだ」「人手が足りないかもしれない」など、具体的な問題点を指摘。可能であれば、改善策を提案する。

困難な依頼をされたとき

すでに大量の業務を抱えているとき、上司から急ぎの仕事を頼まれた場合、どうしたらいいでしょうか。きっぱり断ったら悪印象を与えかねませんし、断りにくいからと安請け合いしては、締切に間に合わなくなって結局トラブルにつながりそうです。

【悪い例】

  • にべもなく「忙しいので無理です」(攻撃的)
  • 間に合わないかもと思いつつ「……はい、わかりました……」(受身的)
  • 引き受けつつ「忙しいのになあ……」とつぶやく(作為的)

【アサーティブな例】

「明日に案件Aと案件Bの締切が控え、時間を割けそうにありません」と自分の状況を説明。可能なら「AとBが終わったあとなら取りかかれますが、それでもよろしいでしょうか?」と代替案を提示する。

アサーティブな会話例

アサーティブ・コミュニケーションのトレーニング

アサーティブな会話の例を紹介しましたが、すぐ実践するのは難しいかもしれませんね。自分の考えや気持ちを表現するときの「クセ」は長い年月を経て定着してしまっているため、そう簡単に変えられるものではないからです。

そんなクセを変えていこうとするのが「アサーティブ・トレーニング」。アサーティブトレーニングとは、自分のコミュニケーションのクセを自覚し、ロールプレイングを繰り返すことで、アサーティブ・コミュニケーションを身につけるものです。

特定非営利活動法人アサーティブジャパン

特定非営利活動法人アサーティブジャパンは、東京や大阪で定期的にセミナーを行なっています。

例えば、2日間かけてアサーティブの基礎を学ぶことのできる基礎講座や、8時間かけて職場で使えるアサーティブを学べるビジネススキルアップ講座アサーティブトレーナーの養成講座まで、本格的な講座が多数あります。

加えて、手軽に参加してコミュニケーションやアサーティブについて談話することのできるアサーティブカフェも定期的に開催されており、本格的なものから気軽に参加できるものまで、さまざまです。

リクルートマネジメントスクール

リクルートマネジメントスクールは、リクルートグループの実施する異業種交流型研修サービスです。

リクルートマネジメントスクールは、都内にてビジネスパーソン向けのセミナーを開催しています。こちらでも、アサーティブジャパンの講師の講習を受けることが可能です。

上司や同僚・後輩へのアサーティブ・コミュニケーションに特化した「リーダーのためのアサーティブ・コミュニケーション」は3時間のコース。おおむね月に一度の頻度で開催されているので、スケジュールを調整して気軽に参加できますね。

ほかにも、朝10:00から17:30まで一日かけて本格的にアサーティブ・コミュニケーションを学ぶことのできるビジネスパーソン向け講座もあります。こちらも月に一度開催されているので、基礎から応用までしっかりとアサーティブ・コミュニケーションを学びたい方は、一日予定を空けて参加してみてはいかがでしょうか。

セミナーに参加する余裕がないという方は、日常の会話の中にアサーティブコミュニケーションを取り入れることを意識してみてはいかがでしょう。例えば、次のように心がけることだけでも、相手に今までと違った印象を与えることが可能です。

率直かつ柔らかい表現で伝える

自分の意見を伝えることが苦手な人や、反対に自分の意見ばかりを主張してしまう人が自己主張をする際には、率直かつ柔らかい表現で、相手の目をしっかりと見ながら伝えるよう意識することが重要です。

3つの要素を整理してから伝える

相手に伝えたいことがある場合には、「起きていること(事実)」「感じたこと(感情)」「してほしいこと(要求)」の3つの要素を紙などに書き出し、頭の中を整理してから伝えることがおすすめです。こうすることで、自身を一度クールダウンさせて必要なことだけを述べられるので、不必要に感情的になって相手を威圧することなく、意見を主張できます。

代替案を提示して断る

相手の要望を断る際には「事実」「感情」「要求」を整理して伝えたうえで、代替案を提示しましょう。代替案を提示することによって、要望を断られたほうにも誠実な印象を与えることができます。

今回の記事を読んで、「私は攻撃的タイプだ……」「作為的タイプだ……」とアサーティブコミュニケーションができていないことに悩んでしまった方も、セミナーに参加したり、自らの言動に少しずつ注意を払ったりといった努力で、自分の言動をアサーティブなものへと改善していくことは大いに可能なのです。

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アサーティブな行動が身についていると、自分にとっても相手にとっても快適なコミュニケーションをとることができます。アサーティブを心がけ、円滑な人間関係を築きたいですね。

(参考)
株式会社日立ソリューションズ|取引先や上司・部下と上手に対話する!アサーティブ・トレーニング
アデコ|自分も相手も大事にする気持ちの伝え方 アサーティブ・コミュニケーションのすすめ
森田汐生(2009),『気持ちが伝わる話しかた 自分も相手も心地いいアサーティブな表現術』, 主婦の友社.
森田汐生(2015),『心が軽くなる! 気持ちのいい伝え方 「アサーティブ」な表現で人生が変わる!』, 主婦の友社.
アサーティブジャパン|3つのタイプとアサーティブとの違い
アサーティブジャパン|私たちの講座について
アサーティブジャパン|基礎講座
BizHint|アサーション・トレーニング
リクルートマネジメントスクール|リーダーのためのアサーティブ・コミュニケーション ~対人関係を良好にする伝え方~(142)

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