「同僚はいつも、何を聞かれても即座に回答している。でも自分はパッと答えが出てこない……」
「先輩はどんなトラブルでもすぐに解決策を提案してくれる。私もそうなりたい……」そんなふうに思ったことはありませんか?
「この人は “頭が切れる”」と周囲から高く評価されている人には、自然と使っている言葉があるそう。そんな言葉を3つご紹介します。
【ライタープロフィール】
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。
「そもそも」で問題の本質を把握する
「そもそもこのプロジェクトの目的はなんでしょうか」
「そもそも何が原因で、この問題が起きているのでしょうか」
問題や物事の一部分や、最初の原因について話す場合に使われることが多い、「そもそも」という言葉。これは頭の切れる人がよく使う言葉のひとつです。
「優秀なコンサルタントは(中略)『そもそも』の観点で一歩引き下がることで、視野の広い世界観で問題をとらえることができる」と、『新・独学術ー外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』著者で、元マッキンゼー・アンド・カンパニーの侍留啓介氏は述べています。この「そもそも」というひとことには、「議論の参加者の思考や視点が一気に切り替わる」効果があるのだそう。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|仕事ができる人の口癖は「そもそも」と「〇〇」)
つまり、頭の切れる人は問題の本質を瞬時にとらえると同時に、まわりに新しい視点を与えることもできるというわけです。
実際に「そもそも」という言葉を活用するとどのようなプラスの影響をもたらせるのか、具体的な仕事の場面に当てはめてみましょう。
【プロジェクトの立ち上げで、さまざまな意見が出たとき】
「そもそもこのプロジェクトはなぜ始められたのでしょうか」
プロジェクトの目的や目標をより明確化し、メンバーに共通の理解をもたせることができるでしょう。
【問題を解決したいとき】
「そもそも何が原因でこの問題が起きているのだろうか」
原因を追究することで問題の本質を把握すれば、適切な対策を講じることができますよね。きっと解決の糸口が見つかるはずです。
【既存のルールについて議論になったとき】
「そもそもルールは本当に必要でしょうか? 適切でしょうか?」
疑問を投げかけることで、既存のルールを考え直すきっかけとなるでしょう。
このように「そもそも」という言葉を使うと、自他ともに内容を深く理解したり、より論理的に考えたりすることができるのです。”頭の切れ” にもつながっていくのがおわかりいただけたのではないでしょうか。
「たとえば」で相手にイメージしやすくさせる
頭が切れる賢い人は、言いたいことを一発で伝えきる力ももっているもの。伝えたいことを相手に理解させられれば、仕事を円滑に進め、結果的に自分の評価を上げることにもつながります。
『賢い人の秘密』(文響社)著者のクレイグ・アダムス氏は、同著のなかで「賢い人はたとえ話がうまい」と指摘します。
類似性によって、わたしたちは、ある状況を別の状況に結びつけて考えることができる。比べ、なぞらえることで物事を表現し、理解し、説明する。
(引用元:クレイグ・アダムス著, 池田真弥子訳(2022),『賢い人の秘密』, 文響社.)
つまり、頭の切れる人はたとえ話を用いて説明することで、相手の理解を深めているということ。プレゼンや提案、問題解決などで「たとえば」と具体例を示し、相手によりイメージさせやすくしているのです。
では、どうすれば「たとえ話」がうまくなるのでしょうか。
グロービス経営大学院 大阪校責任者の熊谷翔大氏によると、その方法のひとつが「積極的に口に出してみる」こと。「『うまく伝わらないな』と思ったときは、例え話でシンプルにできないか思考を巡らせる癖」をつけ、思いついた例えをためらわず口に出すようすすめています。(カギカッコ内引用元:グロービスキャリアノート|例え話を上手く使うための3つのポイント)
例として、部下から「顧客と円滑にコミュニケーションがとれなくて困っている」と相談をもちかけられたとします。たとえ話を使って解決策を提案するならば、下記のようになるでしょう。
「たとえば、種をまいたあと収穫するまでには時間がかかるよね。顧客との関係を築くためには、信頼が必要になる。信頼構築には時間がかかるものだ。だからまずは相手が欲していることを分析し、長い目でコミュニケーションに生かしていこう」
「たとえば、絵を描くには筆が必要だよね。同じように、顧客とのコミュニケーションには適切なツールが必要。ここでいう必要なツールとは、顧客のニーズを理解するための質問や、フィードバックを積極的に受け入れることなど。効果的な手段を身につけることで、コミュニケーションは円滑になるかもしれないね」
「たとえば」と具体的な事例やシナリオを挙げると、部下にとってイメージしやすい説明ができるとわかりましたね。
最初はなかなか思いつかないかもしれませんが、積極的にたとえ話を用いれば、徐々にスムーズに例が思い浮かぶようになっていくはずですよ。「○○さんの話はすごくわかりやすい。さすが、頭が切れるな」そんな評価もついてくることでしょう。
「なぜ」で本質的な原因を深掘りする
自分がミスをしたときや、後輩が失敗をしたとき、チームでつくりあげたものに欠陥が見つかったときなど、あなたはどうしていますか?
そんなとき、頭の切れる人は「なぜ」と疑問をもち、物事の原因を深く考えます。
『トヨタの片づけ』(KADOKAWA)などシリーズ累計75万部の著者である、OJTソリューションズの岡内彩氏いわく、失敗をしたときには「怒るのではなく、『なぜなぜ5回』」がトヨタ式。「これ以上掘り下げることができないというところまで、諦めずに『なぜ』を繰り返」すのだそう。(引用元:東洋経済オンライン|トヨタ人の合言葉「なぜなぜ5回」の威力)
また、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、現在は経営者へのエグゼクティブコーチングなどを行なう大嶋祥誉氏も、下記のように述べます。
トヨタの「なぜを5回繰り返す」という方法もそうですが、マッキンゼーでも「So What?」(だから何? つまり何が言いたいの?)、「Why So?」(それは、なぜ?)を繰り返すことで、ロジックを強固なものにしていきます。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「考える作業」がパワーアップする”問い”の効果的方法とは ※太字は編集部が施した)
トヨタやマッキンゼーでは、「なぜ?」という問いを繰り返すことで原因を深掘りし、問題を解決しているのですね。もちろん、そこから再発防止にもつなげているはず。ミスや失敗に落ち込んだり怒ったりするより、ずっと有意義なことをしているわけです。
たとえば、「思うように仕事がはかどらない」という問題がある場合。
- なぜ仕事がはかどらない?→「やる気が起こらないから」
- なぜやる気が起こらない?→「頭が働かないから」
- なぜ頭が働かない?→「気が散っているから」
- なぜ気が散っている?→「集中力が切れているから」
- なぜ集中力が切れている→「まわりの音が気になるから」
この例では問題を深掘りした結果、「まわりの音が気になる」という原因に行き当たりました。したがって、「まわりの音が気にならない環境を整える」などの対策によって、改善できる可能性があります。
物事に行き詰まった際は、原因が見えるまで「なぜ」と問いかけることで、頭の切れる人の行動に一歩近づけるのではないでしょうか。
***
「そもそも」「たとえば」「なぜ」の3つの言葉。まわりから「頭の切れる人」だ評価してもらえるよう、あなたもぜひこれらを口癖にしてみてくださいね。
コトバンク|頭が切れる
ダイヤモンド・オンライン|仕事ができる人の口癖は「そもそも」と「〇〇」
クレイグ・アダムス著, 池田真弥子訳(2022),『賢い人の秘密』, 文響社.
グロービスキャリアノート|例え話を上手く使うための3つのポイント
東洋経済オンライン|トヨタ人の合言葉「なぜなぜ5回」の威力
ダイヤモンド・オンライン|「考える作業」がパワーアップする”問い”の効果的方法とは