【東大最新研究】何も知らない “素人” が経験豊富なプロの前でも堂々とアイデアを出していい理由

アイデア創出のプロセスをイメージしたイラスト

新たな研究では、専門知識の量が注意を集中させたり、分散させたりすることがわかりました。しかもそれは創作活動のパフォーマンスにも影響するのだとか。

「よく知らないことだから、いいアイデアなんて出せない」とお思いですか? それとも、「よく知っていることなのに、革新的なアイデアを出せなくて……」とお悩みでしょうか。

今回は、優れたアイデアを出すために留意すべきふたつのパターンと、それらを意識したアイデア創出の工夫を紹介します。

素人ほどクリエイティブ?

じつは多くの先行研究で、専門知識が多い人よりも、専門知識が少ない人のほうが、創造的な活動でより高いパフォーマンスを示すという現象が報告されているそうです。東京大学大学院の研究チームはその理由を探るべく、ステレオ・PC・AIなどのスピーカーを題材に調査・分析を行なったのだとか(※2021年9月14日に科学ジャーナル『Scientific Reports』で公開)

その結果、専門的知識の少ない人は、注意を周囲の環境にも分散する傾向があるとわかったそうです。たとえば対象物の写真を撮るときは、引き気味で小さく写すのが典型的な例なのだそう。

こうした傾向を【分散的な注意配分パターン】と呼び、今回の研究ではそれが創造的なパフォーマンスにプラスの影響を与えると明らかになっています。無意識に「視野が広い」といったところでしょうか。

写真を撮ったときの「分散的な注意配分パターン」の典型例

対象物(この場合はスピーカー)の写真を撮ったときの【分散的な注意配分パターン】の典型例

一方で、専門的な知識が豊富な人は【集中的な注意配分パターン】の傾向があり、対象物を大きくアップで写すそうです。しかし、この傾向は創造的なパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまうとのこと。専門知識がありすぎて集中しやすく、意図せず「視野が狭くなってしまう」のですね。

写真を撮ったときの「集中的な注意配分パターン」の典型例

対象物(この場合はスピーカー)の写真を撮ったときの【集中的な注意配分パターン】の典型例

注意配分パターンについて

「どのように注意を配分するか」には2パターンあり、そのパターンは注意を向ける対象について、“どれだけ知っているか” に影響されるとわかりました。これまでをまとめると、こうなります。

  • ひとつにすべての注意を向ける【集中的な注意配分パターン】⇒対象の専門知識を多くもつ人の傾向⇒アイデアの質に悪影響を与える
  • 複数に注意を均等に配分する【分散的な注意配分パターン】⇒対象の専門知識が少ない人の傾向⇒優れた創作活動をする

そして、このふたつの “注意配分パターン” こそが、冒頭で述べた「優れたアイデアを出すために “留意すべきふたつのパターン”」です。したがって、何かのアイデアを出す際に心がけるべきことは、

  • 専門知識がある場合は、一歩引いて俯瞰する、視野を広げる
  • 専門知識がない場合は、自信をもってアイデアを出す

となります。次に具体例を紹介しましょう。

専門知識がある人の発想テクニック

1. 違う景色を見る

たとえばナチュラルな雑貨に詳しい人に、帆布生地(キャンバス生地のこと)で、「これまでにない何かおもしろいエコトートバック」を考えてくださいという依頼があったとします。

専門知識が多いゆえに、集中的な注意配分パターンで目の前にある生成色の帆布生地に意識を集中し、「それなら大胆な色をつけて、左右非対称など変わったデザインにしてみよう」と、定番のトートバックの延長線で考えてしまうかもしれません。

いわゆるナチュラル雑貨では定番の、生成色のトートバック

そんなときは、分散的な注意配分パターンを意識して、別の景色を見に行ってみましょう。いわゆる自分の知識が豊富な対象(この場合は帆布生地、ナチュラル雑貨)から離れた景色を視界に入れるべく、散歩に出かけたり、まったく違うジャンルの展示会に出向いたり、違うテイストのお店をのぞいたりするのです。

もしかしたら散歩の途中で行なわれていた工事現場のサインを見て、「あ、これをプリントしてみよう」などと思いついたり、下町の商店街を歩いていて精米店、青果店、精肉店、酒店、鮮魚店のマークを眺めながら、「これらをプリントして、ついでに商店街の活性化をテーマにシリーズ化してみよう」などと思いつくかもしれません(※この2点はすでに商品化され実在しています)

よく知るものほど強制的に視線を離し、いろんな景色に目を向けてみましょう。

工事現場のサイン。「安全第一」の安全標識

どんな景色にも何かしらアイデアの種がある

2. 素人さんの意見を聞く

先に、「専門知識が少ない人」は、分散的な注意配分パターンで優れた創作活動をすると述べました。もしも自分が得意とする分野の開発で苦しんでいるなら、専門家ばかりでなく、専門家ではない人の意見も聞いてみるべきです。家族や友人、あるいは顧客なら臆せず意見を述べてくれるはず。

パソコン大手デル・テクノロジーズの創業者でCEOのマイケル・デル氏は起業家を目指す人に対し、「好奇心をもち素直に耳を傾けること、顧客から学ぶこと」をアドバイスしています(Forbes JAPAN 2017年12月号掲載のインタビューより)。自分とは違う視点を得ることはビジネスに欠かせないのです。

あなたが専門分野に集中しているとき、同じ場所で同じ対象の話をしていても、その素人さんは複数に注意を均等に配分しているはず。自分の専門的なレンズでは見えない部分を素人さんに教えてもらいましょう。

レンズを通してみる景色。自分には見えないものを見ることができたイメージ

専門知識が少ない人へ

最後に、専門知識が少ないからと、日が浅いビジネスの場でしりごみしている方に提案です。

たとえば専門知識が少ない・経験が浅いサービスやモノについて意見を言うとき、「知らないくせに」「経験が浅いくせに」という冷たい視線を感じて、発言しにくいときがあります。もしくは、「専門知識がない私の意見なんて役に立たない」と思い込んでいるかもしれません。

しかし、あなたの注意はあらゆるものに分散されているので、優れたアイデアを生む可能性があります。専門知識が多い人には見えていないものも見えているはず。臆せずアイデアを出す意識をもちましょう。頭に浮かんだアイデアを述べる際に、こう伝えてみると説得力が増すのではないでしょうか。

「私はこの分野において専門知識がほとんどありません。だからこそ、現時点で私が向ける注意はあちこちに分散しており、無意識のうちに視野が広くなっています。これは研究で明らかになっている事実です。

だからみなさま、どうかぜひ、この状況をご利用ください。このアイデアはほかにはないものです。そして実現化には、専門知識が豊富なみなさまのお力が、どうしても必要なのです」

***
専門知識が豊富な人も、豊富でない人も、いい創作活動ができるといいですね。

(参考)
東京大学|専門知識は創作活動を妨げるのか?~専門知識が注意配分パターンならびにアイデアの質に与える影響の分析~
東京大学|専門知識は創作活動を妨げるのか? 〜専門知識が注意配分パターンならびにアイデアの質に与える影響の分析〜(PDF)
Scientific Reports|More knowledge causes a focused attention deployment pattern leading to lower creative performances
Forbes JAPAN|「デル」創業者兼CEOに聞く成功の秘訣

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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