本や新聞を読んだり、資格をとったり、セミナーに通ったり……勉強はたくさんしているのに、なぜか深い話ができない。どれだけ勉強しても、考えが浅いままだ。そんな悩みをもってはいませんか? 「勉強家なのに話が浅い」あなたは、これからお伝えする残念な3つの特徴にずばり当てはまっているかもしれません。
【1】話が浅い人は「背景を知らない」
あなたの話は「だって本にそう書いてあったから」「だってセミナーでこう習ったから」ばかりで構成されていませんか? ウェブメディア「Books&Apps」を運営するティネクト株式会社代表取締役の安達裕哉氏によれば、知識をインプットしても話が浅くなるのは、覚えた知識の成り立ち・背景を知らないからだそう。
安達氏は、浅い話をする人は、情報を信じすぎたり権威を引き合いに出したりする傾向があると指摘します。「インターネットにそう書いてあったから」「成功している◯◯さんがそう言っていたから」という浅い理由だけで話し、「なぜそうなのか」「本当にそうなのか」を深掘りしないのです。
このことについて、安達氏が挙げる「終身雇用の話題」を例にとり、詳しく説明しましょう。
2019年5月に当時の経団連会長・中西宏明氏が、「企業が終身雇用を続けることに限界がきている」という趣旨の発言をしました。あなたはそれを聞いて、「終身雇用はダメだ。だって経団連会長がそう言っていたのだから」と安易に考えませんでしたか?
現代には合わなくなっても、終身雇用が当たり前だった時代がある以上、それにはメリットがあったはず。どのような時代に、終身雇用のどのようなメリットが合致したのか。一方で、現代のどのような点に、この制度は合わなくなったのか。ここまで知らなければ、終身雇用の是非について、深い話はできません。
考え方や物事には必ず二面性があり、片側しか見ないのは「浅い話」の始まりである。我々は常に「成り立ち」を積極的に知ろうとしなくてはならない。
一見不合理な制度に見えても、それが採用された当時、状況では極めて合理的だったのだ。
(引用元:Books&Apps|「話が浅い」とはどういうことか。 ※太字による強調は編集部にて施した)
誰かの言葉を借りて「終身雇用はダメだ」だと言うのか、歴史や背景を勉強したうえで「終身雇用はダメだ」だと考えるのかでは、話の深みが大きく違いますよね。
勉強した事柄について深い話ができるようになりたい方は、知識をただ覚えるのではなく、「この主張の理由は何か」「この制度はどんな経緯で生まれたのか」と、成り立ちまで調べる癖をつけましょう。
【2】話が浅い人は「勉強したことを忘れている」
たくさん勉強しているにもかかわらず話が浅い人は、勉強した知識がそもそも定着していない可能性も。ベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』著者で精神科医の樺沢紫苑氏によれば、「アウトプットできた量=インプット量」。自分の言葉で言えないのならば、インプットできていないに等しいと述べます。
樺沢氏いわく、普通の人は1週間で97%の情報を忘れてしまうとのこと。実際、樺沢氏がこれまで1,000人以上に調査したところによれば、1週間で仮に100個のニュースや記事を見たとして、そのタイトルを平均で3~4個しか思い出せないのだそう。
1週間でこれだけなのですから、1ヶ月、1年となるとさらに忘れていきます。勉強していると言っても、ただいろんな知識を「へえ〜」と流し見しているだけでは、ほとんど頭に残らず、当然話も浅くなってしまうのです。
そこで樺沢氏は、「アウトプット前提」で勉強することをすすめています。というのも、「あとで行動するぞ」と考えながら勉強すると、格段にインプットの質が上がるから。たとえばセミナーの場合、あとで誰かに内容を伝えることを前提に受講すれば、ただ話を聴くだけの受講に比べて、詳しくメモをとるはず。おのずと、学びがより深くなります。
また、1回の勉強につき「気づきやToDoを3つ書く」というインプット法もおすすめだとのこと。脳には、一度に3つのことしか考えられないという性質があるためです。1回勉強するごとに「これだけは」というポイントを3つ押さえれば、3+3+3+……の要領で効率的かつ確実にインプットを重ねられると言います。
たとえば、ビジネスコミュニケーションについて本で学ぶ場合なら、本を読むたび次のようにメモし、実践していきます。
1回目:「相手の立場に立つ」「相手の長所を見つける」「相手から学ぶ」
2回目:「自分の怒りの原因を探る」「自分を客観視する」「自分から自己開示する」
……
……
3つのポイントは、単純に気になったことベスト3でOKだそう。また、セミナーの場合は何度も受講するわけにいかないので、3つだけ確実に押さえるつもりで話を聴けば大丈夫です。
勉強すれば自然に深い話ができるようになる……と思っていたなら、それは間違い。「あとでアウトプットするぞ」と思いながら勉強して初めて、学んだことを自分の口から話せるようになるのです。
【3】話が浅い人は「相手が何を聞きたいのかわかっていない」
あるテーマについて上司から「どう思う?」と聞かれたとき、あなたは単に専門知識ばかりを披露して、「いや、そういうことじゃなくてね……」と上司を落胆させたことはありませんか? 勉強しても浅い話しかできない原因は、相手が何を聞きたいのかわかっていないからかもしれません。
これを指摘しているのは、ロジカルシンキング・コミュニケーションスキル研修講師の渡辺まどか氏です。渡辺氏いわく、うまく話せないと悩む人のなかには、相手の質問の意図を確認しないまま話す人が多いとのこと。
勉強したことを生かそうと知識を頑張って披露したところで、相手が何を聞きたがっているのかをおろそかにしては、「この人の話は深いな」と相手に思わせることはできないのです。
そうはいっても、何か聞かれたときに一発で意図を把握できないこともありますよね。会話はキャッチボール。渡辺氏は、以下のような質問を返すと、相手の意図がつかみやすくなると言います。
いまの〇〇さんのご質問は、××という意味でしょうか?
いま〇〇さんがおっしゃっていたことは、△△というテーマについてでしょうか、それとも□□というテーマについてでしょうか?
〇〇さんが~~と考えた理由・背景はなんですか?
〇〇さんは、××を知った上で、何がしたい・どうなりたいのですか?
(引用元:yawalogi やわロジ|質問や発言を促されたときにうまく話せない方へ〜自分の言葉でうまく話せる方法【ロジカルシンキングコラム】)
たとえば、上司から人材採用戦略について「どう思う?」と聞かれた場合、
- 上司は客観的な知識を聞いているのか
- あなたの主観的な意見を聞いているのか
- 上司が欲しがっているのは、人材採用のなかでもどの領域に関する知識か
- 上司は人材採用にについてどんな事情を抱えているのか
などを尋ねると、返答を選びやすくなります。「採用戦略について知っていることはなんでも話そう」ではなく、相手の意図をまず把握してから、話す内容を選んでください。そうすれば、あなたの話は、相手に響く深い話になるはずです。
***
3つの側面から、あなたの話が浅い理由を探ってみました。当てはまっているかも、とドキッとした指摘はあったでしょうか。あなたの勉強が無駄にならず、あなたの仕事や人生に活かされるようになることを願っています。
(参考)
Books&Apps|「話が浅い」とはどういうことか。
Business Insider Japan|「終身雇用見直し」だけではない経団連会長発言の真意。人材入れ替え「ジョブ型」への野心
PENCIL by Schoo|“インプットの97%は意味がない。アウトプット前提で3つだけ覚える” あのベストセラーを著者が解説
STUDY HACKER|「社会人のストレス要因」第1位はこれ! 職場で “無理をしない” ための3つの改善策
yawalogi やわロジ|質問や発言を促されたときにうまく話せない方へ〜自分の言葉でうまく話せる方法【ロジカルシンキングコラム】
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。