仕事が遅い人は「ボトムアップ思考」のワナに陥っている。“行き当たりばったり” が遠回りになる理由。

仕事は「ボトムアップ思考」よりも「トップダウン思考」がいい1

皆さんは、仕事に取り組む際、その仕事の「ゴール」を確認していますか。そして、そのゴールにたどり着くまでに「どんな作業がどのくらい必要なのか」を計算できているでしょうか。

無駄な手戻りに苦しんだり、思わぬ作業に時間を取られたりしている人は、これらができていないのかも。手元だけを見て、行き当たりばったりで仕事をしていては、かえって遠回りになってしまいますよ

なぜ仕事が想定通りに進まず、余計な仕事が増えたり締切に間に合わなかったりするのか。その原因と解決策について解説します。

仕事が遅いのは「ボトムアップ思考」のせい

仕事を振られたら、とりあえずすぐに手を動かし始め、仕事を進めていきながら状況に応して方針を決めていく。このように作業を進める思考を「ボトムアップ思考」といいます。

「任された仕事の概要を眺めている時間があるならば、少しでも早く手を動かし始めるべきだ」と心のどこかでお思いの方も多いはず。しかし、こういう仕事の進め方は、とても非効率なのです。

日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーの木部智之氏は、ボトムアップ思考の効率の悪さを、フルマラソンに例えて解説しています。

自分の能力を見極め、最適なペース配分を策定し、その計画に忠実に従って走らなければ、長丁場のフルマラソンを完走することはできません。逆に、1000mのレースをフルマラソンのスピードで走れば、もちろんビリになってしまいます。

(引用元:東洋経済オンライン|仕事が遅い人は「着手する順番」が誤っている

たとえば、仕事で「新しい商品の案が欲しい」と上司から社員へ話があったとしましょう。ボトムアップ思考の人はそれを聞いて、「よし、誰よりも早く自分のチームが商品案を提出すれば採用してもらえるかもしれない」と、すぐに取りかかります。

しかし、いざ完成させて提出すると、「次の商品は、値段が高くても買ってもらえる品質重視の方向なんだよ」と、自らの格安商品の案は見当違いだと指摘されることに。それを受けてまたすぐに修正しても、今度は違う点を指摘され――そう、ボトムアップ思考では、多くの無駄や手戻りが発生してしまうのです。

ここですべきだったのは、商品のターゲットや価格設定など、求められている商品案の方向性をまずは上司に確認すること。そうすれば、それを踏まえて着々と商品案を作成し、リテイクを重ねることなどなく提出できていたかもしれません。

ボトムアップ思考で目の前のものしか見ていないと、寄り道や回り道をしてしまい、結果として仕事が遅くなるだけなのです。

仕事は「ボトムアップ思考」よりも「トップダウン思考」がいい02

「トップダウン思考」に変えよ

ボトムアップ思考に対して、まず最初にゴールを確認し、そのゴールへ最速で到達するための方法、つまり “最良のルートを策定してから仕事を始める” という思考があります。これが「トップダウン思考」です。先ほどの「求められている商品案の方向性をまずは上司に確認する」という仕事の進め方が、こちらに該当します。

では、どうしてトップダウン思考は、ボトムアップ思考よりも的確な方法で、効率的に仕事をこなすことができるのでしょうか。トップダウン思考による問題解決を提案している、株式会社ヒューファクソリューションズは、トップダウン思考の必要性を次のように説明しています。

実社会の問題は、学校で習う問題のように「正解が一つだけ必ず存在する」というものとは限りません。(中略)コンピュータやマニュアルでは代行できない脳の高度な情報処理がトップダウン思考であり、実社会で必ず必要になる局面があるのです。

(引用元:株式会社ヒューファクソリューションズ|用語の解説-トップダウン思考とボトムアップ思考

1日にいくつもの仕事を抱えたときなどは特に、計画的なトップダウン思考が大切になってきます。ボトムアップ思考で、ただ締め切りが近い仕事からこなしていると、途中で事情が変わったりトラブルが起きたりするのです。

たとえば、「夕方までにやればいい」と後回しにしていた仕事を昼過ぎに始めたものの、確認を頼みたい上司が午後から別のオフィスに移動してしまったら、締切に間に合わなくなってしまうかもしれません。そうならないよう、トップダウン思考で、それぞれの仕事をいつやるべきなのか、仕事の内容などを改めて確認したうえで、トラブルの起きにくいスケジュールを立てるべきなのです。

「まずはゴールを確認する」というトップダウン思考こそが、確実な仕事成功術といえるでしょう。

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「トップダウン思考」を実践するコツ

トップダウン思考で効率よく仕事をするためには、その仕事の正解や目標、そして締め切りやタイムリミットなどをきちんと把握しなければいけません。そのうえで、自らの行なうべき作業や所要時間を踏まえ、仕事の計画を立てることで、時間をロスすることなく確実に仕事を終えられるのです。

医学博士の梶本修身氏は、著書『仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方』の中で、トップダウン思考においては「仕事の経験を積むことが大切だと述べています。

仕事を任されて締切を告げられたとき、その仕事で想定される所要時間は、自らの経験から導き出すしかありません。どういった仕事にどれくらいの時間と労力が必要なのかは、自分の経験を通してしかわからないはずです。

そこで日頃から、それぞれの仕事にかかった時間を確認し、把握するようにしましょう。たとえば、「会議の資料を作るためには、自分ひとりだと2時間はかかる」「簡単な情報収集ぐらいであれば、30分もあれば充分だ」といった具合です。

また、起こりやすいトラブルやミスと、その解決方法もパターンとして頭に入れておきましょう。たとえば、よくやり取りをする別の部署の上司が気難しい人で「最低2回はダメ出しを食らう」という傾向がわかっていれば、それを含めたうえでスケジュールを立てられますよね。

  • 最初にゴールを確認
  • 経験をデータとして頭に入れる
  • それらをもとに仕事の計画を立てる

これこそが「トップダウン思考」をするためのコツであり、同時に仕事を効率的に進めるヒントでもあるのです。

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トップダウン思考を意識して日々経験を積めば、仕事のスピードもクオリティも安定し、優秀なビジネスパーソンになれるでしょう!

(参考)
東洋経済オンライン|仕事が遅い人は「着手する順番」が誤っている
株式会社ヒューファクソリューションズ|用語の解説-トップダウン思考とボトムアップ思考
オルタナティブ・ブログ|プログラマー社長のブログ-トップダウンかボトムアップか
梶本修身 (2016),『仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方』, 宝島社.

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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