あれこれ悩みに悩んでも結論が出ない……考え尽くしたがまだ迷ってしまう……決まった正解がないビジネスの世界では、このようなシーンは多々ありますよね。そんなとき、最後にモノを言うのは「直感力」です。
「直感なんて当てずっぽうだ」「根拠のない勘に過ぎない」などと侮るなかれ。直感の正体に迫ってみると、そこには確度の高い “見えざる思考” が存在していることがわかります。直感に頼るのも意外と悪くないようですよ。今回は、仕事で成功する確率を高めることにもそのままつながる「直感力」の磨き方を取り上げます。
直感を信じたほうがいい理由
明確な根拠はないし理由もうまく言語化できないけれども「なんとなくこっちがいい」「なんとなく気乗りしない」などと感じる――こんな経験は多くの方がおもちのはず。こういった直感がたびたび降ってくるのはなぜなのでしょうか。
メンタリストとして活躍するDaiGo氏は、直感は「脳がこれまでインプットしてきた経験や学習」のデータベースに基づいていると指摘しています。たとえば、自分自身は明確に気づいていないものの「過去にA案とどこか似た雰囲気の施策が成功していたなぁ」「相手がこういう表情に変わったときにクロージングに移ると成約できるなぁ」と脳が学習していた場合、私たちは無意識的に「A案のほうがいいに違いない!」「クロージングのタイミングはいまだ!」などと考えます。これが直感の正体です。
つまり、一見すると非合理的な「なんとなく」には、じつはちゃんとした裏づけが存在するということ。しかし、このプロセスは無意識かつ超高速で行なわれるため、私たちにとってはなぜか「ピン!」と思いついたように感じるのです。
そして驚くべきは、直感は高確率で当たるということ。DaiGo氏は著書『直観力』のなかで、次のような研究結果を紹介しています。
これも、いままで会ってきた数々の「デキる人・デキない人」の立ち居振る舞いを脳が無意識下でデータベース化してきたがゆえになせる技なのでしょう。
直感はかなりの確率で正しいからこそ、直感を上手に活用できる人になりたいもの。以下で、心がけるべき3つのポイントをご紹介しましょう。
【1】その分野の「知識や経験」をたくさん積もう
先ほど述べたとおり、直感は過去の経験のデータベースから導き出されます。裏を返せば、そもそもデータベースが不十分では直感はうまく発揮されないということ。そのため、直感力を磨きたいと思ったら、まずはその分野の経験値を増やしてデータベースを構築していく必要があると言えます。
これは、将来的に直感を発揮させるための “種まき” のようなもの。どんなに願ったところで、データベースがない以上は直感を導き出すことはできません。急ぐあまり、その分野の知識や経験を積むという重要なステップをおろそかにしないように注意してください。
【2】直感したことに「むやみに説明を求めない」
佐々木氏は、直感は非言語的なメッセージであり、たいていの場合は「なぜだかわからないけれどもわかった」状態になると言います。この感覚を気持ち悪がって否定してはいけません。せっかくの貴重な直感が潰されてしまうからです。
またDaiGo氏も、直感は時に常識とは真逆だったり、論理的思考と照らし合わせればまったく不合理だったりすることもあると指摘します。「なぜこの直感に至ったのか?」と理由を探ろうとしたところで、説明のしようがないのです。
しかし、直感とはそういうもの。むやみに根拠や理由を求めようとせず、素直に従うことを心がけましょう。
【3】直感が欲しいなら「違うこと」をしてみよう
直感が欲しいならば、いったん対象の物事から離れてみるのも大切です。
私たちが集中を解いてぼんやりすると、脳は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という状態になります。しかし、脳自体は小休憩するわけではありません。むしろ、集中時よりもエネルギーを消費し、無意識化で記憶を掘り起こしたりアイデアを結合させたりしているのです。
『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』著者で医学博士のスリニ・ピレイ氏によれば、皿洗いやガーデニング、気楽な読書など “静かでささやかな活動” を行なうとDMNの回路が働くようになって直感的なアイデアを得られるとのこと。直感は待っていれば自然と降ってくる――そう信じて、関係ないことをしながら穏やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。
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ビジネスでは、論理的に決断することが常識かもしれません。しかし、全部が全部、論理的に判断できないのも事実。悩んだときは「なんとなく」という直感に従うのも大切なのではないでしょうか。
(参考)
メンタリストDaiGo(2017),『直観力』, リベラル社.
佐々木正悟(2007),『脳は直感している』, 祥伝社.
AERA dot.|ジョブズは散歩で高めていた? 脳の「編集力」とは
ハーバード・ビジネス・レビュー|集中力をコントロールして、創造力を発揮する3つの方法
スリニ・ピレイ 著, 千葉敏生 訳(2018),『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』, ダイヤモンド社.
【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。