繊細で疲れやすいHSPは「一度にたくさん」が苦手。この “3つのルール” で仕事が少しラクになる

とても繊細で敏感そうなビジネスパーソン

HSPと呼ばれる「非常に敏感な人」は、とにかく細かいことによく気がつきます。だから、急を要する仕事やいっぺんに頼まれた仕事を処理していくのが苦手。そんなHSPさんをラクにする「仕事の単純化」を紹介しましょう

HSPは「一度にたくさん」が嫌い

HSP(Highly Sensitive Person)は、中枢神経系の敏感さや、認知処理の深さを表すSPS(Sensory-Processing Sensitivity)の測定値が高い人だと言われています。SPSが高いほど微細な刺激にも敏感で、目新しいことや普段と違うことに対し、深く細かく考えて行動するので時間がかかりやすいのだとか。

そのため、HSPの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士は、HSPスケールとして「SPSが高い人を見極める尺度」を開発しています。それをもとに日本でも日本版HSPスケール「HSPS-J19」が作成されました。

そのなかには、「一度にたくさんのことが起こる・短時間に多くのことをしなければならない・一度にたくさんのことを頼まれる」といった状況になると、不快になったり、うろたえたり、イライラしたりするHSPさんの特徴が示されています。

忙しく混乱している様子のビジネスパーソン

HSPが心がけるといいこと

日本では数少ないHSPの臨床医として知られる、十勝むつみのクリニック院長・精神科医の長沼睦雄氏によれば、HSPは複数のやるべきことを抱えたとき、全体のバランスをとりながら優先順位を決め、こなしていくのが苦手なのだそう。物事を敏感に察知し、細部までよく気がつくため、何かといろいろなことが気になってしまうからです。

そんなHSPさんに対し長沼氏は、マルチタスクを避け、自分の特徴や仕事量を把握し、環境を整えていくようアドバイスしています。だからこそHSPさんにおすすめしたいのは、仕事を単純化する工夫です。専門家のアドバイスや、一流のビジネスパーソンたちのアイデアを参考に3つの方法を紹介しましょう。

スマートフォンに何か打ち込んでいる様子

1. 思考の外部化

くまモン、相鉄、Oisixなどを手がけたクリエイティブディレクターの水野学氏は、ストレスなく効率的に仕事を進めるため、思考の外部化を図っているそうです。

思考の外部化とは、やること、思いついたことなどを紙に書き出しておく」「人に振ってしまう」「スマートフォンに入力しておく(メールの下書き、自分あてにLINEなど)」といったことです

一方で、『 繊細な人が快適に暮らすための習慣 医者が教えるHSP対策』を著した精神科医の西脇俊二氏は、気が散ってなかなか掃除が進まないHSPに対し、まずは「視界のなかだけを掃除する」ようアドバイスしています。片づけられなかったものは段ボールなどに入れ「視界の外に出してしまう」といいそう。

つまり、HSPの作業をスムーズにするコツは、視界から刺激になる要素を減らしてしまうこと。ならば思考も同じはず。水野氏にならい、現時点で必要ない思考は「意識の外」に出しておき、見たいときはすぐに見れる、済んだら簡単に消せるといった状態にしておきましょう。

やることリストに書くほどでもない、ちょっとしたことが入り混じっている場合などにおすすめ。思考の混乱を防ぎ、集中しやすい状態にしてくれるはずです。

メールの下書きを使って思考の外部化を図ったもの。

メールの下書きに外部化するとタイトルがリストに。詳しい内容は各本文に書ける。

2.ToDoリストは5つまでルール

日本版HSPスケールの「HSPS-J19」には、HSPが変化に弱いことも示されています。だからこそ、HSPにとって毎日のリズムが整っていることは非常に重要です。もちろん、日々の仕事を画一化することはできませんが、HSPさんの動揺を減らすことは可能です。

たとえば前出の西脇氏は、1日のToDoリストを5つに絞り込むようHSPにアドバイスしていますが、これは余分な刺激を排除できると同時に、毎日のリズムをつくることにも役立つはず。「毎日やること5つ」をまるまる1つのルーティンにしてしまうわけです。

かなりの確率でHSPであると思われる筆者が試してみたところ、5つ以内だともう少しできそうと意欲が湧き、5つ以上になると頑張りすぎだと割りきる(その日はやらない)ことができ、なんだか不安が減りました。

5つだけ書いたToDoが、何日分も並んだToDoリスト

細かい内容はメモ帳などでまかなうと、ToDoリストがよりシンプルに

3.Doing & Done リスト

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社コミュニケーション・マネージャーなどを経て株式会社さすがコミュニケーションズを設立した岩田ヘレン氏は、ToDoリストを変化させたオリジナル版として、実行するタスクと完了のチェックを都度行う「Doing & Done リスト」を取り入れているそうです。やり方は次のとおり。

  1. タスクを1つ書く
  2. 1つのタスクに集中
  3. 終わったら線で消す
  4. 次のタスクを1つ書く
  5. 1つのタスクに集中
  6. 終わったら線で消す(繰り返し)

これなら常に目の前のやることは1つ。やることが多すぎてタスクを5つに絞れないときや、頭が混乱していると感じたときなどにはおすすめです。

***
HSPさんがラクになる「仕事の単純化」を紹介しました。それぞれに実施したり、組み合わせたりして、仕事をラクにしてくださいね。

(参考)
髙橋亜希(2016),「Highly Sensitive Person Scale 日本版 (HSPS-J19) の作成」, 感情心理学研究, 第23巻, 第2号, pp.68-77.
矢野康介・大石和男(2017),「Highly sensitive personにおけるライフスキルと抑うつ傾向の関連―非Highly sensitive personとの比較の観点から―」, 日本心理学会第81回大会, p.54.
ダイヤモンド・オンライン|ストレスなく複数案件を進めるための3つのコツ
STUDY HACKER|書くだけで集中力も意欲もアップ! 作業をぐいぐい進めたくなる魔法の「タスク管理ノート」
西脇俊二(2020),『 繊細な人が快適に暮らすための習慣 医者が教えるHSP対策』, KADOKAWA.
長沼睦雄(2017),『敏感すぎる心がスーッとラクになる本』, 扶桑社.
Psychology Today|Highly Sensitive Person
Wikipedia|Sensory processing sensitivity

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