「勉強が苦手でも成長できる人」の3つの特徴。“○○を自覚” できる人はどんどん伸びる

階段をのぼる3人のビジネスパーソン。成長できる人・できない人のイメージ

学生時代は常に好成績を残したのに、社会人になってからはほとんど成長できない人がいる一方で、勉強が苦手でも、どんどん成長できる人がいます。その違いと特徴を紹介しましょう。

“頭がいいのに成長できない人” の特徴

頭がいいこと、高学歴を鼻にかける印象の男性

1.「高学歴だから出世できる」と勘違いしている

遊ぶ暇も惜しんで勉強に勤しんだ経験は、のちの人生にすばらしい影響を与えるはず。ただし、確実に役立つのはその経験であり、好成績・高学歴の事実は、輝かしい未来を保証するものではありません。

『非学歴エリート』(飛鳥新社)の著者でMCJ社長兼最高執行責任者の安井元康氏いわく、「高学歴だから将来ラクができる」という構図はそもそも幻想でしかないとのこと。就職時の書類選考に通りやすいなどのメリットはあるけれど、その先は人間力・行動力・探求心・コミュニケーションといった、非認知能力が重要視されるからです。

それを認識しないまま、頭のよさと高学歴という肩書きに安心していたら、成長することが難しくなってしまいます。そうではなく、勉強を頑張ったからこそ目的のスタートラインに立てたと考え、“ここから新たな学びを始めよう” と決意すれば、成長の度合いは群を抜くはずです。

2.「知性の罠」にはまりやすい

自分は頭がいいから間違いない! 絶対に!――といった考えだけで押しきるようになると、成長がパタリと止まってしまいます。知性の罠にはまってしまうわけです。科学ジャーナリストのデビッド・ロブソン氏が、著書『The Intelligence Trap』(日本経済新聞出版)のなかで取り上げたアーサー・コナン・ドイル氏も、その罠にはまったひとりです。

ドイル氏といえば医師経験をもつイギリスの作家で、名探偵シャーロック・ホームズの生みの親。高い知性を備えていたことは言うまでもありません。しかし、少女たちによる「うその妖精の写真」にだまされてしまうような一面もあったのだとか(コティングリー妖精事件という)。心霊主義に傾倒していたドイル氏は、周囲が何を言っても自分の正当性を主張し続けたそうです。

これをロブソン氏は「動機づけられた推論」と表現します。動機づけられた推論とは、自分の信念に基づいて情報を取捨選択・解釈してしまうこと(同志社大学政策学部教授、野田遊氏の説明より)。ドイル氏の場合、偏った信念を「自分の頭のよさ」で強化してしまったわけです。

そんなもったいない使い方をせず、優れた知性は「待てよ、この考えにはバイアスがかかっているかも」と、自分を含む世界まるごと俯瞰する能力の向上に役立てるべきです。

3. 高IQなのに「時代の変化」に気づけない

東京大学先端科学技術研究センター教授の中邑賢龍氏いわく、「知能指数や学歴は、総合的な能力を反映するものではない」とのこと。IQが高いと学校の成績がいい傾向があるとすれば、それは学校における学びと、知能検査が似ているからに過ぎないと同氏は指摘します。

中邑氏は、高学歴なのに仕事で成果を出せない人が増えたのは、上からの指示を速く正確に処理することだけが求められる時代が、終わりに近づいている証拠だと述べます。これからの社会は現状を把握し、課題を解決していける人が求められるとのこと。 そのために必要な創造性や実行力は、現在の知能検査にあまり反映されていないと中邑氏は説明します。

変化の激しいこの時代、まずは大局を見極めていくことが大切です。知性は要所要所でいくらでも生かせるので、大きな範囲で物事を見るクセをつけてみてはいかがでしょう。視野が広がれば、創造的なアイデアも生まれやすくなるはずです。

次に、“勉強が苦手でも成長できる人” の特徴を紹介していきましょう。

“勉強が苦手でも成長できる人” の特徴

パソコンを前に上司と朗らかに話をする、勉強が苦手でも成長できる人

1.「知らないこと」を自覚している

東洋大学文学部哲学科准教授の松浦和也氏は、古代ギリシアの哲学者、ソクラテスの代名詞である “不知の自覚”(無知の知)が生まれたエピソードについて以下のとおり説明しています。

ソクラテスは有識者を訪ね歩き、ある事実に気づいた。それは――

  • 自分に知恵があると思っている者に、必ずしも知恵があるわけではないこと。
  • 自分の無知なる部分を認識できる者は、自分に知恵があると思い込む者より、知恵があるということ。

そうして、自分にはほとんど知恵がないと自覚した者が、最も知恵ある者だという解釈にたどり着いた。

つまり、自分はもう完成形である(知恵が十分にある)といった考えは、自ら伸びしろを排除することになるので、成長をストップさせてしまうということ。逆に、勉強が苦手でも「自分にはまだまだ学ぶことがたくさんある」という自覚は、成長し続けられる可能性を高めるわけです。

2.「弱点」を把握し、補おうとする

勉強が苦手だと自認し、それが自分の弱点だと把握している人が勉強に向き合おうとすると、人一倍真摯に取り組めるそうです。

心理学者でMIT(マサチューセッツ工科大学)教授のバシマ・タウフィク氏は、アメリカ人の会社員155人に対し、自分の能力をどう認識しているか質問したのだとか。加えてそのあと彼らの上司にも質問したところ、自信がない人ほど上司からの評価が高かったそうです。

自信がない人々は、自分の欠点を補うかのように相手の話に注意深く耳を傾け、より多く努力するとのこと。さらにタウフィク氏が医療実習生にも実験を行なったところ、自信のない人ほど穏やかで、患者の痛みを認識する傾向が強かったそうです。

『自信がない人は一流になれる』(PHP研究所)の著者でロンドン大学教授のトマス・チャモロ-プリミュージク氏も、自信のない人のほうが現状を正しく把握し、弱点を克服しようと努力して、実力をつけていけると伝えています。

3.「粘り強さ」がある

Apple創立の中心人物であるスティーブ・ジョブズ氏は生前、「優秀な人は多いが成功する・しないの大きな違いは粘り強さだ」と語っていたそうです。「弁護士ドットコム」創業者の元榮太一郎氏も、物事を達成するために必要な3条件として、前向きさ、素直さ、そして粘り強さを挙げています。

天才賞とも呼ばれる「マッカーサー賞」を2013年に受賞した、アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース氏も、自身のベストセラー『やり抜く力』でこう説いています――成果を出すために大切なのは、才能ではなく「情熱」と「粘り強さ」であり、それはグロースマインドセットと一致する。グロースマインドセットとは、“能力は柔軟なものであり、経験や努力で成長できる” といった考え方のこと(スタンフォード大学心理学教授のキャロル・ドゥエック氏が提唱)。

つまり、"勉強が苦手でも成長できる人" の特徴として最後に挙げるのは、粘り強さ。自分ができる取り組みと、大きな目的とを長い糸でつなげながら、希望を胸に進むことが粘る強さ――それがまさに成長の姿なのです。

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“頭がいいのに成長できない人” と “勉強が苦手でも成長できる人” の特徴を紹介しました。あなたはどちらに近いですか?

(参考)
東洋大学|「無知の知」とは?大学教授がソクラテス哲学をわかりやすく解説【四聖を紐解く④】
新刊JP|理論的に証明された「粘り強さ>才能」の事実! 「やり抜く力」をいかにして育むか?
トマス・チャモロ-プリミュージク著(2015),『自信がない人は一流になれる』,PHP研究所.
ダイヤモンド・オンライン|「IQが高い人は頭がいい」という大きすぎる誤解の正体
madameFIGARO.jp|自分に自信がない人ほど、オフィスで力を発揮できるってホント?
Forbes JAPAN|「前向きさ」「素直さ」「粘り強さ」が事業の成功確度をあげる
Forbes JAPAN|粘り強さを身に付けるため自問すべき7つの問い
NIKKEI STYLE|「頭のいい人」が愚かなミスを犯す理由 心理学で解く
東洋経済オンライン|「高学歴の真の価値」を知る人と知らない人の差
同志社大学 政策学部|動機づけられた推論
Wikipedia|コティングリー妖精事件

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