断捨離の本質は「捨てる」ことではなく「選ぶ」こと。“絶対に手放してはいけない本” はどう選べばいいのか?

日々、勉強に仕事に精を出している読者様の本棚は、おそらく本でいっぱいなのではないでしょうか? 本棚の限られたスペースに収まりきらない本が、生活スペースを侵食しているケースもあるかもしれません。ここまで本が増えてしまうと、「本を整理したい」「ミニマリスト的に一気に本を捨てたい」という思いを抱くこともあるはず。今回の記事は、そんな“本の断捨離のやり方”を提案するものです。

本が多すぎて手放したくなったこと、ありませんか?

あなたの本棚にはどんな本が収められているでしょうか? 新書が多いですか? 専門書が多いですか? それとも、漫画や文庫本でしょうか。いずれの本にしても、紙の本である限り、本を買えば買うほど家には本が溜まっていきます。スッキリとした部屋に憧れて、本を手放すことを検討している人もいるのではないでしょうか?

しかし、本はたくさんの情報が詰まったもの。特に、本好きだからこそ紙の本が増えてしまう人にとって、本はなかなか捨てにくいものかもしれません。また、以前本の「断捨離」をする人が知らず知らずのうちに失っている3つのこと。という記事でも紹介したように、本を手放すことにいくつかのデメリットがあることは事実。「これを読もう」と思って本を買ったときの熱意を失ってしまったり、人生を変えた本を失ってしまったりするおそれがあります。積読本も、読まないからといって安易に捨ててしまうと、豊富な知識が眠る“宝の山”を失いかねません。

とはいえ、本の断捨離にもメリットはあります。書評家で年間700冊以上の本を読む印南淳史氏はかつて、一日数冊ペースで増えていく本の置き場に困り、自宅の部屋にある本の断捨離を実行したのだそう。その時のことを振り返り、次のように述べています。

僕はまず、部屋にある本を「半分に減らす」ことを決心しました。その結果、僕の気持ちには2つの変化が訪れました。 まず1つは、部屋が片づくことによって、生活や仕事に向き合う気持ちがよりポジティブになったということ。 そしてもう1つが、新たな本との出会いがますます楽しみになったことです。 それ以来、僕は定期的に本を処分するようになりました。

(引用元:DIAMOND ONLINE|なぜ「本を捨てる」と人生が変わるのか?)一部の太字は筆者にて施した

本好きにとって、自分の本が増えていくことは大いに嬉しいこと。でも本が増えすぎて生活環境を脅かすほどにまでなってしまう状況は、いくら本好きでも本意ではないはずです。自宅の本の管理で困っている皆さん、本の断捨離を検討するのも悪くないかもしれませんよ。

本の断捨離・注意点1:捨てても良い本の選び方

ではここからは、本を断捨離する場合の注意点を3つご紹介します。1つ目は断捨離しても良い本の選び方についてです。

『1週間で8割捨てる技術』の著者で、30年の試行錯誤の末にミニマリストとなった筆子氏は、1年以上読んでいない本は手放しても良いと言います。筆子氏によれば、ものをなかなか捨てられない理由は、持っていればなりたい自分になれると思ったり、いつか使うかもしれないと思ったりするから。特に本や教材などは、「持っていればいつか読むはずだ」という思いを強く持ちがちなのだとか。例えば、買ったまま読まずに放置しておいた本は一度手放し、本当に読みたくなったときに買い直せばじゅうぶんなのです。

ただ、1年以上読んでいない本の中には、手元に残しておいたほうがいい本も存在します。古物商のもったいない本舗によると、以下の本は断捨離しないほうが良いとのこと。

1 既に絶版になっていて希少価値の高い本 2 読むと元気になれる本や写真集 3 何度も読み返しているお気に入りの本 4 本の装丁が気に入っている本 5 趣味の本

(もったいない本舗|本の断捨離ができない人へ!捨てるべきリストと断捨離のメリット より抜粋して引用)

一度捨ててしまうと買い直しできない本や、紙の本を捨てて電子書籍に変えた後では良さを味わえないもの、そして大切な思い出生活の潤いとなっている本は別格です。たとえ読む頻度が少なくても、捨てないほうが良いでしょう。

「この本を処分しても良いか?」で迷ったら、ぜひ上記のポイントを参考にしてみてください。

本の断捨離・注意点2:本の内容を身につけてから捨てる

本を断捨離する場合の注意点、2つ目は知識が身についていない本は捨ててはいけないということ。これは、多くのビジネス書自己啓発書を読むビジネスパーソンの方こそ特に注意すべき点です。

本の内容を覚えるのが苦手であるとか、一度読むだけでは忘れてしまいがちだといった理由で、後になって読み直すために本を捨てられないでいる、という人はいませんか? もしそうであれば、あなたがすべきことはいつまでも本をとっておくことではなく、本から得た情報を忘れないように身につけることです。

そもそも、本に書いてあったことを覚えられない理由は「読みっぱなしになっている」から。東京大学教授で脳研究者の池谷裕二教授によれば、情報をいくら頭にインプットしても、その内容についてアウトプットしなければ、脳はその情報を記憶にとどめておくことができないのだそう。

そこで、本の内容がなかなか定着しない人はアウトプット読書術を実践してみてください。例えば、

・本を読んだら、意見や疑問点、感想をノートにまとめる。 ――『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者・西岡壱誠氏推奨 ・「何も見ないで本の内容を5分間話す」ことを目標に、本の内容をマインドマップや箇条書きなどでまとめる。 ――『一瞬で人生が変わる!アウトプット速読法』の著者・小田全宏氏推奨

といった方法があります。このように本の内容を自らまとめ直すと、本に書かれていたことを覚えやすくなるのです。また、まとめ直したノートがあれば、本そのものを手放したとしても、後で内容を見返すことも可能ですよね。ジャーナリストの池上彰氏も、本の情報を記憶するために、重要箇所、要約、意見をA4用紙にメモしたり、読んだ本について手帳に記したりしているほか、読み終わったら必ず本の内容を振り返るようにしているそうですよ。

何が書いてあったかを理解し大事なポイントを記憶できた本ならば、二度三度と読み直す必要がなくなりますので、処分を検討してもよいでしょう。逆に知識がまだ身についていない本は、アウトプット読書術で本の内容をしっかり吸収してから手放すことをお勧めします。

アウトプット読書術については、“読んでも忘れる人” におすすめしたい「アウトプット読書術」。本の内容を5分間説明できますか?で詳しく紹介されていますので、ぜひお読みください。

本の断捨離・注意点3:断捨離そのものを目的にしない

本を断捨離する際の注意点、3つ目は断捨離そのものが目的にならないようにするということです。

断捨離という言葉の提唱者で、断捨離に関する執筆や講演などを手がけるやましたひでこ氏は、その言葉の意味について次のように述べています。

断捨離イコール捨てること、というイメージがあるんですが違うんです。断捨離は自分にとって大切なものを“選ぶ”というものなんです。実は捨てているようで選んでいる

(引用元:やましたひでこオフィシャルブログ|「知ってた? 断捨離の意味は「物を捨てる」じゃないんです。」)太字は筆者にて施した

また、日本初のかたづけ士として、かたづけのコンサルティングや講演などを行なう小松易氏も、次のように語っています。

片づけは、ただモノを減らしたり捨てたりすればいいわけではありません。 (中略) 片づけとは「自分にとって必要なモノ・大切なモノを見極めるための方法」、つまり「手段」なのです。片づけるために多くの時間を費やして生きることではなく、 「片づけをすることで、自分の生活に課題があることに気づく」 「『片づけられるようになったあと、どう生きるか』を考える」 が大切なのです。

(引用元:東洋経済オンライン|多くの人が「片づけ」にハマる本質的な理由)太字は筆者にて施した

これを、「本」に特化して考えると次のようになります。

本の断捨離とは、ただ本を捨てることではない。自分にとって必要な本、大切な本を見極め、選び抜くことだ

もしこれを見失い、「1年以上読んでいないから」という単純な理由で本を次々捨ててしまったら、冒頭にご紹介したような断捨離のデメリットをそのまま被ることになるでしょう。そうなってはまったく意味がありません。

本を断捨離するのは大いに結構ですが、本を捨て去ることそのものが楽しくなってきてしまったら、一度断捨離する手を止めてみましょう。そして、断捨離において大切なことを改めて思い出してください。

*** 断捨離をするときの正解は

・1年以上読んでいない本は、処分候補としてもよい。 ・ただし、大切な本や、まだ知識が身についていない本は捨ててはいけない。 ・「本を捨てる」こと自体を目的にしない。

の3点です。本を捨てるのは難しいことだと思いますが、いつか本を手放す決心がついたときに、この記事が少しでも手助けになれば嬉しいです。

(参考) DIAMOND ONLINE|なぜ「本を捨てる」と人生が変わるのか? NIKKEI STYLE|新年こそ始めたい断捨離 最初の1カ月で無理なく実現 東洋経済オンライン|多くの人が「片づけ」にハマる本質的な理由 StudyHacker|本の「断捨離」をする人が知らず知らずのうちに失っている3つのこと。 StudyHacker|“読んでも忘れる人” におすすめしたい「アウトプット読書術」。本の内容を5分間説明できますか? 池上彰,佐藤優(2016),『僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』,東洋経済新報社. もったいない本舗|本の断捨離ができない人へ!捨てるべきリストと断捨離のメリット やましたひでこオフィシャルブログ|「知ってた? 断捨離の意味は「物を捨てる」じゃないんです。」

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