付箋とノートを組み合わせて使う「付箋ノート」なるものが、ここ数年前から流行していること、ご存じでしたか? この付箋ノート、ただの流行り物ではありません。仕事や勉強の効率化・合理化という点から考えても、たくさんのメリットがあるのです。
あなたのノート術をハックする「付箋ノート」。その効果や実際の作り方など、詳しく見ていきましょう。
「付箋ノート」とは?
付箋ノートとは、付箋に情報を書き込み、それをノート(あるいはルーズリーフなど)に貼りつけていって作るノートのことです。ノートはあくまで “付箋を貼る台紙” の代わり。基本的に、情報はすべて付箋に書き込んでいきます。
この付箋ノートの流行、もともとは中高生の女子たちがSNS上で、付箋を駆使した勉強ノートを投稿し始めたことに端を発するのだそう。例えば、Instagramで「#付箋ノート」と検索してみると、色とりどりの付箋が整然と貼り並べられたノートの写真がずらりと表示されます。まさに “インスタ映え” ですね!
かわいいもの好き、おしゃれなもの好きの女子たちがいかにも好みそうな「付箋ノート」ですが……。侮るなかれ、じつは実用性においても、付箋ノートにはたくさんのメリットがあるのです。
付箋ノートのメリット1:貼り直しができる!
日頃からノートを使っていると、「書き忘れた項目があった……」「レイアウトを誤って、スペースが足りなくなってしまった……」なんてこと、ありますよね。消しゴムで消して、わざわざゼロから書き直すのも億劫だし……。でも付箋ノートでは、そんな煩わしさはありません。なぜならば、付箋は容易に貼り直すことができるから。
書き間違えたら、その付箋は捨てればいい。追加情報を新たに差し込みたければ、付箋を並べ替えればいい。加えて、付箋の上に新たな付箋を重ねて貼りつけていくこともできます。「情報の編集作業」の効率が大幅にアップするのです。
付箋ノートのメリット2:小さいからこそ、“要点の整理” が求められる!
特に勉強において、教科書や参考書の丸写しはあまり効果を発揮しません。なぜならば、それはあくまで “機械的な作業” に過ぎないから。大量のスペースがあるノートを勉強で使っていると、丸写しの文章だけで構成されたまとめノートをつい作ってしまう方もいるのではないでしょうか。
一方で、付箋を考えてみましょう。付箋にはさまざまなサイズがありますが、どんなに大きなものでも、文字を書けるスペースはたかが知れていますよね。つまり、付箋ノートを作る際は、情報の丸写しではなく、限られたスペースに何をどう書くかという「要点の整理」が求められることになります。加えて、それぞれの要点をどのような順番(配置)で貼っていくかについても考えを巡らせなければなりません。このプロセスが、内容理解の深まりに貢献することが期待されます。
実際、付箋ノートを勉強に使ってみたStudyHackerのライターも、以下のような効果を実感したそうですよ。
実際に付箋ノートを使ってみて感じたことは、たくさんの情報を自分の中で要約などして付箋に記入する必要があるため、自然と内容を理解していかざるを得ないという点です。教科書や配布プリントを何度も読みながら勉強しているときは、付箋ノートを作成しているときと比べるとただ理解している気になっているだけであったように思います。
(引用元:StudyHacker|勉強の理解がどんどん進む! 『付箋ノート』を実践してみて感じた効果)
付箋ノートのメリット3:色分けすれば、視覚的にも理解度アップ!
現在は、さまざまな色の付箋が市販されています。それらをうまく活用することで、視覚的にも、読みやすく理解しやすいノートができあがります。
詳しくは、以降の「使い方」の項で説明しますが、「最重要事項はピンク」「次に重要な事項はオレンジ」「その他は黄色」といった具合ですね。ペンの色を変えるという方法でも色分けは可能ですが、付箋を使えば領域そのものを色分けできるため、ぱっと見たときに非常に認識しやすいのです。
このように、付箋ノートは「かわいい」「おしゃれ」「インスタ映えする」だけでなく、実用性もたいへん優れているのです。どうでしょう、実際に使ってみたくなってはきませんでしたか? ここからは、付箋ノートの作り方・使い方を、シチュエーション別にご紹介していきましょう。
付箋ノートの使い方1:スケジュールやタスクの管理
付箋ノートの使い方としてオススメなのが、仕事のスケジュールやタスクを管理すること。
「やるべきタスクが多すぎて、何から手をつければいいのかわからない」 「ひとつのことに集中していて、ほかの締め切りをすっかり忘れていた」 一度にたくさんの仕事を抱えると、このような事態に陥ってしまいますよね。自分の頭だけでスケジュールやタスクを管理できない状態になっているのでしたら、ぜひ付箋ノートを使うことをおすすめします。
『SINGLE TASK』の著者であるデボラ・ザック氏によれば、そもそも私たちの脳は、たくさんのことを一度に考えることができないのだそう。
「みなさんがマルチタスクと呼んでいるものは、神経科学者の言うところのタスク・スイッチングです。(2つを同時に考えているのではなく)複数のタスクを短時間で行き来しているのです」
(引用元:キャリコネニュース|脳はひとつのことしか考えられない! 「シングルタスク」で生産的に仕事をする4つの方法
そして、このタスクスイッチングは生産性を4割も低下させるばかりか、脳に負荷がかかりすぎてしまい、脳が収縮する原因にもなってしまうのだとか。脳の負担が減る、上手なスケジュール・タスク管理のシステムが必要なのです。
そこで威力を発揮するのが付箋ノート。スケジュールやタスクひとつひとつを付箋で管理していけば、「どんどん新しい仕事が入ってくる」「タスクの優先順位が刻々と変わる」といった状況でも、仕事全体を俯瞰しやすくなるのです。
具体的には『ToDoリスト』。ノートを「ToDo(これからやる)」「Doing(今やっている)」「Done(やった)」の3つの領域に分け、タスクのステータスの変化に応じて付箋を移動させるというのはどうでしょう。
このとき、「メイン業務(あるいはそれに付随するもの)」「会議・打ち合わせ」「ルーティン業務」など、タスクの種類に応じて付箋の色を変えたり、優先順位が高い順に並べ替えたり、といった工夫をすることもおすすめします。上から順番に書き加えていかなければいけない通常ノートに比べて自由度が高く、管理もしやすいはずです(下画像参照)。ちなみに、ノートは手帳などで代用することも可能ですよ。
付箋ノートの使い方2:アイデア発想
付箋ノートには、アイデア発想としての使い方もあります。
皆さんは、何かアイデアを考えるとき、どのように行なっているでしょうか。もし、「机の前に座り、とりあえず頭をひねってみる」「思い浮かんだことをとりあえず上から順番にノートに書いていく」という方法をとっているのでしたら、付箋ノートが、効率をもっと高めてくれるかもしれません。
そもそも、アイデアのもとになる “ひらめき” って、どのように生まれるのでしょうか。日本大学文理学部で脳研究をしている森昭雄教授は、ひらめきのメカニズムについて以下のように述べています。
ひらめきとは、脳の『頭頂連合野』と『側頭連合野』にファイリングされた記憶や知識が『前頭前野』に伝わって、異なる要素が統合された瞬間に生まれるもの。
(引用元:Amebaニュース|脳研究者が教える!アイデア発想術)
ここからわかるのは、ひらめきという現象は「突然湧き上がるもの」ではなく、「複数の材料の化学反応」として脳内で作りだされるものであるということ。つまり、材料を上手に整理して化学反応を促すように工夫してあげることで、脳のひらめきを後押しすることが可能となるのです。
ここでヒントになるのが「KJ法」。これは、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案した手法であり、もともとは、文化人類学のフィールドワークによって集まった膨大な情報を適切に整理するために考えられたのだそう。その汎用性の高さから、今ではビジネスの場などにおいても広く取り入れられています。
KJ法でやることは、いたってシンプル。 1.「1枚のカードにひとつ」というルールに従って、思い思いに情報を記入していく。 2. 関連性のあるカード同士をひとつにまとめ、グループを作って見出しをつける 3. そこから新たに見えてくることを文章にして書いてみる
つまり、KJ法の手順に従って情報を整理することで「関係性の発見」が促され、結果として新たなひらめきが生み出されるのです。これ、付箋ノートにもそのまま応用できそうに思いませんか?
つまり、思いついたことを自由にメモ代わりに付箋に書き、それらをノート上で並べ替えてみるのです。並べ替えたことで、複数の要素の関連性に気づき、それまでまったく思いもつかなかった “新しい気づき” が得られるかもしれませんよ。
この方法を行なうときのコツは、取るに足らないと感じることもひとつ残らず付箋に書き出し、きちんと整理してみること。改めて注視してみることで、取るに足らないと思っていた考えが、意外な事実に気づかせてくれることもあります。頭の中だけで考えていれば見落としてしまうような “発想の鍵” を発見しやすいことが、この方法の最大の強みといえますね。
付箋ノートを閉じれば、アイデアの形もそのまま保存されて便利です。付箋ノートでこんな使い方を試してみれば、新たなアイデアが浮かんでくる気がしませんか?
付箋ノートの使い方3:勉強や文章作成
付箋ノートの使い方3つめは、勉強での活用法です。
情報の整理に優れている付箋ノート、当然ですが勉強にも活用できます。まとめノート作成や暗記学習の際に使っている人もいるようですが、筆者が特におすすめしたいのが、レポートや論文など “長い文章” を記述しなければいけないシーンで使うことです。
文章作成は、基本的に “書く材料” を集めてから始まりますよね。でも、特に長文を書くのがちょっと苦手な場合、材料を集めてみたはいいものの「はたしてこれをどういう順番で配置すればいいものか……」と途方に暮れてしまうこと、ありますよね。
そんなとき、付箋ノートが効果を発揮します。つまり、手元にある材料を付箋にすべて書き出し、それらを並べ替えることで、最適な文章構成を検討しやすくなるのです。
「序論ではこの要素とこの要素を使う」「本論ではこれらを使う」「最後の結論部にこれを持ってくる」などなど、実際に文章を書き始める前に構成を考えることで、文章全体の流れが見渡しやすくなり、その後の執筆が圧倒的に捗りますよ。仮に、執筆中に構成を変更したくなったとしても、付箋を貼り直せば大丈夫。
このとき、サイズの違う付箋をうまく組み合わせると、さらに見やすい付箋ノートができあがりますね(下画像参照)。
“付箋ノート専用” の付箋とノートが売られている!?
じつは “付箋ノート専用” の付箋とノートが売られていることをご存じでしたか?
付箋ノート専用の付箋は、その名も『付箋ノートが作りやすいふせん』。付箋やしおりなどの紙製品の製造を手掛けるクラスタージャパン株式会社が販売しています。その特徴は、付箋の縦幅が、A罫(※7mm幅)(あるいはB罫(※6mm幅))のノートやルーズリーフに貼りやすいサイズで設計されていること。罫線に沿って付箋を貼ることができるため、紙面が整頓されるのです。そしてノートのほうは、『付箋ノートが作りやすいルーズリーフ』 。付箋を貼る位置の目印になる縦罫線が入っているため、付箋が不必要にずれる心配がありません。
もちろん、普段から使い慣れているノートと付箋を組み合わせて、付箋ノートとして使うのもアリですね。
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最後に一点注意していただきたいのは、「きれいな付箋ノートを作ること」を目的にはしないこと。ノートは、情報整理や知識定着のために使うもの。本質を見誤って目的を履き違えないようにしましょうね。付箋ノートに興味を持った方は、ぜひ仕事や勉強などで使ってみてはいかがでしょうか?
「勉強ノート術7選! 東大生・京大生おすすめ」では、ほかのノート術も紹介しています。ぜひご参照ください。
(参考)
Instagram|#付箋ノート
StudyHacker|勉強の理解がどんどん進む! 『付箋ノート』を実践してみて感じた効果
キャリコネニュース|脳はひとつのことしか考えられない! 「シングルタスク」で生産的に仕事をする4つの方法
StudyHacker|トヨタ “カンバン方式” を個人で使う。ふせんを使ったタスク管理術。
Amebaニュース|脳研究者が教える!アイデア発想術
THE 21 ONLINE|頭の中を整理する「付箋」の使い方
クラスタージャパン株式会社|付箋ノートが作りやすいふせん