自分の感情を適切に表現できる言葉を見つけられなくて、とりあえず安易な言葉で済ませてしまったことはありませんか? 極端な例では、綺麗な景色を見て「やばい」、美味しいものを食べて「やばい」、仕事が忙しくて「やばい」、というようなものです。
しかし、さまざまな状況で生まれたさまざまな感情は、決して同じ言葉だけでまかなえるものではありません。自分の感情をうまく表現できないと、言いたいことがあるのにまとまらない、もやもやした気持ちを言葉にできない、どうしてむしゃくしゃしているのかわからない……という風にうっぷんを抱えてしまうのではないでしょうか。
その悩みは「言語化」のトレーニングで改善できるはずです。さっそくご紹介しましょう。
言葉にできないのはなぜ? 言語化とは
「言語化」とは、その名の通り自分の頭の中にある考えを言葉にすること。アウトプットとも言いますね。案外この「言語化」ができていない人は多いようです。
「言語化」ができないと、対話する相手の言葉になんとなく不満を覚えてもはっきりと言い返せなかったり、感動してもうまく言葉にできなかったり、どうしてイライラしているのか言葉を用いて明確にできなかったりといった状況に陥ってしまいます。では、頭の中にあるイメージを言葉にできないのはなぜなのでしょう。
その理由は、端的に言ってしまうと「考えていない」から。思考が整理できていないまま、考えることを放棄してしまっているのです。例えば難しい議題について話し合っているうちに、だんだんと自分の考えがまとまってきたり、観た映画のレビューを書いているうちに、自分の感想がはっきりとわかってきたりした経験はありませんか? 他の人に勉強を教えているうちに、自分の理解度も深まったという経験をした方もいるかもしれません。つまりアウトプットは、思考の整理につながるのです。
脳科学者として著名な茂木健一郎氏は、アウトプットに関して次のように述べています。
脳にとっては、言語も一つの運動です。とにかく一度出力しないことには、自分が本当に考えていることや、潜在的な可能性も見えてきません。 情報のインプットとともに、アウトプットも恒常的に行わないことには、その考えが真に自分のものとなることはないのです。
(引用元:起業tv|【アウトプットとは?】アウトプットの意味とポイントを簡単に解説!)
では、「言語化」を習慣付けるには何をしたら良いのでしょうか。
言語化のトレーニング法
1.感情を100字以内で述べる
「ドラマが楽しみ」「ランチが美味しかった」「電車内の人に腹が立った」などなど、日常生活の中で抱いたちょっとした感情を100字以内で文章にしてみましょう。
例えば「ドラマが楽しみ」なら、「ルックスが好みの俳優や演技力の高い女優が出演していて、登場人物のキャラクターや台詞に共感できるものが多かった。ストーリーがスリリングで展開の予測がつかないので、来週の放送が待ちきれないほど楽しみだ」という感じ。例えば「ランチがおいしかった」なら、「ランチに食べたパスタは濃厚なクリームソースとベーコンの風味が自分好みだった。セットのサラダはシャキシャキとした新鮮な野菜に素材の味を引き立てる薄味のドレッシングがかかっていて美味しかった」
あるいは「電車内の人に腹が立った」なら、「知らない人に満員電車で思い切り足を踏まれたのに謝罪がなかった。混雑した電車内で体がぶつかったり、足を踏んだりしてしまうのは仕方のないことだが、一言も謝らないのはあまりにも失礼だと思い腹が立った」といった具合です。100文字は場合によって短くも長くも感じられます。慣れるまでは案外面倒な作業かもしれませんが、習慣化することでコツがわかっていき、思考が整理されていきます。
2. SNSを有効活用する
時間を浪費する原因となり、有効な知識のインプットをさまたげると言われるSNS。SNSをぼんやりと眺めているよりは書籍などから有意義な情報をインプットしたほうが実用的ですが、実はアウトプットの面においてSNSは非常に適した存在です。正しい日本語を使い、親しい人間以外にも通じるような文章を心がけたうえで自分の考えを発信する習慣は、「言語化」のトレーニングに最適。
なかでもTwitterは手軽かつ多くの人の目に入るうえ、140字という文字数制限があり丁度良いのです。気軽に自分が発信する側に立つことができるSNSは、「言語化」のトレーニングとして有効活用できる便利なツールというわけです。
3.“なぜ?”を文章にする
サッカーの指導には「ゲームフリーズ」というものがあります。ゲーム中、一つ一つの動作をいったん止めて「なぜ今彼にパスを回したのか」「なぜパスを回さなかったのか」等を選手たちにレビューさせるというものです。それにより、選手自身に課題解決の方法を考えさせるといったアプローチが試みられています。
ゲームフリーズを日々の生活に取り入れてみましょう。例えば何かの壁にぶつかったとき「“なぜ”進めないのか」、何かの問題が発生したときに「”なぜ”この問題が発生したのか」と徹底的にレビューするのです。解決方法を導きだせるだけでなく、「言語化」のトレーニングにも役立てられます。
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何気なく過ごしてしまうような日常生活の中で「言語化」のトレーニングを心がけて、思考停止状態を脱してみませんか?
(参考)
TCM|思考言語化で「考えているつもり」から卒業しよう
電通報|「言葉にできない」ことは、「考えていない」のと同じである。
東洋経済オンライン|池上彰+佐藤優「SNS、最強の使い方」はこれだ
東洋経済オンライン|言語能力が足りない日本のビジネスパーソン
起業tv|【アウトプットとは?】アウトプットの意味とポイントを簡単に解説!
筑波大学 体育系|(財)日本サッカー協会のコーチングコンセプトの理論的、実験的研究の観点からの検討