人前でスピーチをするときや、重要な大会の直前などは緊張して「あがって」しまって自分の実力を出し切れない、言いたいことが半分も伝えられなかった、という経験はありませんか? 今回はそのような「あがり」という厄介な現象の対処法についてご紹介します。
自己暗示する
一つ目は自己暗示です。ここでいう自己暗示とは、自分自身に、「おちつけ、大丈夫だ、自分はできるんだ」などと言い聞かせることです。しかし自分は上がり症だと認識している人が急にスピーチ前に自分自身に言い聞かせても、あまり効果は出ない、むしろ「あがり」が増加する可能性が指摘されています。スピーチの直前ではなく、毎朝以下のようなことを行うことが有効とされています。
肯定的な内容を心の中で復唱する 肯定的な内容を実際に声に出しみる ノートや手帳に書いておき、毎日その内容を確認する 紙に書いて、寝室の壁に貼っておき、確認するようにする
出典:あがり症の克服方法と緊張の対処法を徹底解説!|あがり症にはアファメーション(自己暗示)が有効?
運動をする
二つ目はスピーチ前に運動すること、つまり体を動かすことです。たとえば、準備体操で体をほぐしたり、ストレッチしたりすることを指します。たとえ「あがって」しまって精神的にガチガチになったとしても、肉体的には正常に近づけることができるので、身体や口はうまく動かすことができます。
無関係な行動をする
3つ目は無関係な行動をすることです。スピーチ前や大会前などに、友人と話したり音楽を聴いたり歌を歌ったりなど、これからすることと無関係な行動をします。試合前のアスリートはよく音楽を聴いていますよね。これもきっと、違うことをして緊張を和らげているのだと思います。
イメージする
4つ目はイメージトレーニングです。実際に自分がスピーチしてるシーンを思い浮かべてみたり、「あがって」いる場面を念頭に置いて練習してみたりします。ほかにも成功している自分を想像してみるということも有効なようです。成功している場面をイメージすることは、スポーツではもちろんのこと、スピーチでも「あがり」に対して有効なことがわかっています。
開き直る
5つ目は開き直ることです。「失敗したらどうしよう」「聴衆が多くて恥ずかしいなあ」などと思って「あがって」しまう人も多いと思います。そういう時は「失敗しても死ぬわけじゃないしいいや」とか「なんとかなるでしょ」とか「関わりが浅い人ばかりだしどう思われてもいいや」などと開き直ってしまいましょう。これはかなり有効な方法と知られています。
積極的な思考をする
最後は積極的な思考をすることです。積極的な思考とは、「あがる」という状況をむしろ楽しんでみたり、「あがる」ような状況に慣れたり慣れようとしてみたりすることです。ある実験によれば、主観的な「あがった」という感じは、同じような経験を3回くらい積むことである程度解消することができるようです。そういうわけで、事前に本番と同じような状況を作って練習することも良い「あがり」対策になります。
*** いかがでしたか。6つの対策法を挙げましたが、「自己暗示」「イメージする」「積極的な思考をする」は特に事前の準備が大切です。本番当日になって急に慌てだすのではなく、パソコンがうまく接続出来ない! など余計なトラブルでさらにあがることを防ぐためにもゆとりをもって行動するということが重要です。
また、どんなに対策を練っても多少なりともは「あがって」しまうことでしょう。しかし、「あがって」血圧が上昇することは何かをするためのエネルギーを動員するということです。「あがる」からこそ良いパフォーマンスができる、とも言えるのです。「あがり」をただ忌むべき敵だと考えるのではなくうまく付き合って味方に引き込んでくださいね。
参考文献: 有光興記(2002),“あがり”への対処法に関する研究 -“あがり”対処法の種類, 因子構造, 状況間相違に関する検討-,The Japanese Journal of Psychology 2002, Vol. 72, No. 6, 482-489. 敦賀麻理子・鈴木直人(2007),"あがり"経験の反復が心理的反応および精神生理学的反応に及ぼす影響,The Japanese Journal of Reserch on Emotions 2007, Vol. 14, No. 2, 115-128. 樋口匡貴・南谷のどか・藏永瞳・深田博己(2007),スピーチ状況における"あがり" の対処法とその効果,広島大学心理学研究,Vol. 7, 93-101. 岡市廣成・鈴木直人監修 青山謙二郎・神山貴弥・武藤祟・畑敏道編(2014),『心理学概論 第2版』, ナカニシヤ出版,184-185..