自称説明上手がしている “二流の説明” 残念な特徴。「ちゃんと話せた!」が一番危ない

桐生稔さん「一流と勘違いしている二流の説明の特徴」01

社内外問わず多くの人と関わりながら仕事をしなければならないビジネスパーソンには、自分が言いたいことを相手に伝える、「説明」する力が欠かせません。長くコミュニケーション能力の重要性が叫ばれるなか、「自分は説明がうまい」と自信をもっている人もいるでしょう。

ところが、その名もずばり『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)という書籍の著者である桐生稔(きりゅう・みのる)さんは、世のなかには自分が説明上手だと勘違いしている人が多いと指摘します。あなたはそんな勘違いをしていませんか?

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

説明がうまくなるポイントは、「相手が聞きたいことを相手が聞きたい順に話す」こと

「うまい説明」とは、「自分が言いたいことを自分が言いたい順で話す」ことではなく、相手が聞きたいことを相手が聞きたい順で話すことだと私は考えています。自分が相手に伝えたいことを相手の頭のなかにインストールすることができて、初めて説明できたと言えます。

説明というと、どうしても「自分発信」のイメージをもちがちです。しかし、説明したい内容が相手の頭のなかに入らなければ、説明できたとは言えません。だからこそ、相手が聞きたいことを相手が聞きたい順で話す、「相手軸」での考え方が重要となります。

それができているのが、説明が上手な「一流」の人です。一方、自分が言いたいことを自分が言いたい順で話す人は、言葉は少し乱暴になりますが「二流」どまりの人と言えるでしょう。

ところが、この二流の人たちの多くにある特徴が見られます。それは、「自分は説明上手だ」と勘違いしているということ。自分が言いたいことを自分が言いたい順でスムーズに話せているために、「ちゃんと話せた!」と思い、説明上手だと勘違いしてしまうのです。

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ただ「具体的な数字で伝える」だけでは不十分

しかも、そういう人たちは説明に関する知識やテクニックをそれなりにもっており、そのために「自分は説明上手だ」という勘違いを強めているケースもよく見られます。

「具体的な数字で伝える」のもそのひとつ。数字で伝えるのは、説明における基本テクニックのひとつです。たしかに数字を使って伝えることは説明をわかりやすくする要素ですが、ただ数字を入れればいいわけではありません

たとえば、プロテインバーの商品説明をするときに、「タンパク質20g含有」という表現をしたとします。数字で説明しているために、二流の人はここで満足してしまいます。しかし、「20g」がどういった意味をもつのか、相手に伝わらなければ意味がありません。

対して、一流の人の場合は、「成人男性の1日あたりの推奨タンパク質摂取量は60gです」ということに触れて、「このプロテインバーには20gのタンパク質が含まれています」と、数字をふたつ使って説明します。そのほうが、相手にとって「タンパク質20g」の効果がイメージしやすいからです。

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「PREP法」も相手と内容によって順序を入れ替える

また、いわゆる「PREP法」も、二流の人がただ使っただけで満足しがちなテクニックです。PREP法は、「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(結論)」の頭文字をとったもの。最初に結論を述べ、その理由、具体例と続け、最後にもう一度結論を述べることで言いたいことが相手に伝わりやすくなるという、これも説明における基本テクニックです。

ただ、相手によってはPREP法で説明されるとカチンとくるケースもあります。たとえば、上司に対して、明日予定されている会議を延期してほしいと伝えるとします。PREP法にのっとれば、「明日の会議を延期させてください」と結論から述べます。続いて「まだ必要な資料の作成が間に合っていないからです」という理由、「もう少し粘って競合であるA社の調査をしたいです」という具体例を伝え、最後に「だから延期させてください」と再び結論を述べます。

一見、わかりやすそうに思えるかもしれません。でも、性格にもよりますが、明日に迫っている会議をいきなり「延期させてください」と結論から話されたら、カチンとくる上司もいるはずです。

そういうときは、順番を変えましょう。「すいません、もうちょっとA社について調査したいことがありまして……」と具体例から入り、最後に「会議を延期させてもらえませんか?」と結論を述べれば、「それなら仕方ないな」と上司に思ってもらえる可能性も高まるはずです。察しがいい上司なら、具体例を言った段階で「会議を延期してほしいんだな」ということまでわかってくれることもあるでしょう。

たしかにPREP法は王道のテクニックです。ただ、そればかりにこだわってはよくないケースもあるのです。説明をする相手や内容によって柔軟にパターンを変えてこそ、一流と言えます。

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説明の一流を目指すために欠かせない「振り返り」

いずれにせよ、二流の人が一流になるには振り返りが重要なキーワードとなります。先にお伝えしたように、二流の人は「自分は説明上手だ」と勘違いしているからです。勘違いしている人は、自分の説明を振り返ろうとはしません。

そうではなく、一度「自分は説明上手だと思っているけれど、本当にそうだろうか?」と考えてみてください。そして、自分ではうまくできたと思った説明が、本当にうまくできたのかを振り返るべきです。

特に注意すべきは、説明を終えて「すっきりした」ケース。こういうときは、たいてい「自分が言いたいことを自分が言いたい順で話した」ときです。自分が言いたいことを自分が言いたい順で話すのですから、すっきりして当然ですね。

でも、それは本当の意味での説明にまで至っていません。説明を終えて「すっきりした」ときこそ、「本当に相手に伝わっただろうか?」と振り返ることを意識してほしいと思います。

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【桐生稔さん ほかのインタビュー記事はこちら】
説明が苦手ならとにかく “この3つ” を始めなさい。「2行書くだけ」で説明力は高められる
「本当に説明がうまい人」になるための日常習慣3つ。二流の説明力を一流に引き上げる!

説明の一流、二流、三流

説明の一流、二流、三流

  • 作者:桐生 稔
  • 明日香出版社
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【プロフィール】
桐生稔(きりゅう・みのる)
1978年8月17日生まれ、新潟県出身。株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー。日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー。一般社団法人日本声診断協会音声心理士。2002年、全国1200支社を運営する大手人材派遣会社に入社。営業成績が最下位となり新卒3カ月で左遷される。そこから一念発起し、売上達成率1位を実現。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。2017年、社会人の「伝わる話し方」を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。現在、全国40都道府県で年間2000回の「伝わる話し方」セミナーや研修を開催。具体的でわかりやすいメソッドが評判を呼んでいる。著書に『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『「30秒で伝える」全技術』(KADOKAWA)、『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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