誰でもできる「心を動かす言葉」のつくり方。オバマ元大統領とジャパネットたかた創業者の伝え方の共通点とは?

「伝え上手になるための「レトリック」入門01

「言葉で説明するのが苦手……」
「心を動かすプレゼンやスピーチをしたい……」

そんなあなたは、「レトリック」を学んでみましょう。レトリックは「言葉を巧みに操る技法」であり、言いたいメッセージをより的確に、かつ印象的に伝えるうえで重要なスキルです。

「伝え下手」なあなたも、以下にご紹介する3種類のレトリックをマスターすれば、心を動かす言葉をつくれるようになりますよ。

レトリックとは?

レトリックとは「ことばを巧みに用いて美しく効果的に表現する」技術のこと(小学館『精選版 日本国語大辞典』より)。言い換えれば「言葉のあや」のことで、身近なところでは「比喩(ひゆ)」もレトリックの一種です。

日本では悪い意味で使われることもあるため、レトリックという言葉に偏見を抱いている方もいるかもしれません。しかしレトリックは、古代ギリシアの哲学者アリストテレスによって「弁論に勝つための技術」として創始されて以来、2,000年以上の歴史をもつ学問ジャンルです。

長年にわたり蓄積されてきたレトリックの知見は、「伝わる」「心を動かせる」話し方をするヒントにもなるはず。さっそく、具体的なレトリックの例をご紹介しましょう。

以下の内容は、言語哲学者の佐藤信夫氏による著書『レトリック感覚』の解説をベースにしたものです。

「伝え上手になるための「レトリック」入門02

レトリック1.「比喩法」

まずご紹介する「比喩」は、わかりやすい説明をするうえで欠かせないレトリックのひとつ。難しい話も、的確な例えを交えながら説明されるとすんなり理解できた——そんな経験は誰しもあることでしょう。

たとえば台湾の「西門」という街の雰囲気を説明したいとき、「日本でいう渋谷のような街ですよ」と言えば、相手は一発でイメージをつかめます。これが比喩の威力です。

ライター・編集者として数多くのベストセラーを手がけてきた古賀史健氏は、比喩表現は「想像力の補助線」であるとの見解を述べています。的確な比喩によって、聴き手は想像力をかきたてられ、未知の物事を容易に理解できるということです。

ここでは「例え上手」になるための第一歩として、基本的な3パターンの比喩表現の仕組みを理解しておきましょう。

下の画像は、「栄養」という言葉を3パターンの比喩表現で表した例です。確認しながら読み進めてみてくださいね。

伝え上手になるための「レトリック」入門

(画像は筆者が作成した)

類似性による例え……「直喩(ちょくゆ)」「隠喩(いんゆ)」

直喩(ちょくゆ)・隠喩(いんゆ)は、構造や見た目などの「似ているところ(類似性)」に着目して言葉を置き換える手法。そのなかでも「……のような」と明言するものが直喩明言しないものが隠喩です(※例えのメカニズム自体は同じなので、本稿では直喩・隠喩を同一のものとして扱います)。

たとえば「彼女は太陽(のように明るい)」「田中さんは歩く辞書(のように物知りだ)」「SNSが炎上する(かのように批判殺到する)」などが直喩・隠喩の例。また「本は心の栄養」というありふれた表現も、役割の似ている「ガソリン」などの言葉に例え直せばよりユニークな比喩になります(上図)。

【直喩・隠喩の例】

  • 彼女は明るい→彼女は太陽(のように明るい)
  • 本は心の栄養だ→本は心のガソリン(のようなもの)

連想ゲームによる例え……「換喩(かんゆ)」

「概念の近接性」によって言葉を置き換えるのが換喩(かんゆ)です。京都大学大学院人間・環境学研究科教授の谷口一美氏いわく、簡単に言えば「示したいものの近くにある別のもの」を利用する表現とのこと。

たとえば「鍋を食べる」などが、身近な換喩の一種。実際に食べるものは「鍋に入っている具材」ですが、それを近接した「鍋」に置き換えて表現しているのです。また国会を「永田町」などと表現するのも換喩です。

「栄養」を換喩するなら、連想される「サプリメント」「青汁」などの言葉に言い換えられるでしょう。

【換喩の例】

  • 国会で法律が決まる→永田町で法律が決まる
  • 本は心の栄養だ→本は心のサプリメントだ

上位概念と下位概念による例え……「提喩(ていゆ)」

提喩(ていゆ)とは、ある言葉をその上位概念・下位概念によって置き換える方法。

たとえば「食う米に困って……」と言うときの「米」は、「ごはん全般」という上位概念を、「米」という下位概念に代表させています。反対に「米」のことを「ごはん」と言うのは、下位概念から上位概念への提喩です。そのほか「花見(花=桜)」「成田空港への足(足=移動手段)」なども提喩の一種です。

「栄養」を提喩するなら、栄養の一種(下位概念)である「アミノ酸」や、「脂質」「糖質」などに言い換えられるでしょう。

【提喩の例】

  • 成田空港への移動手段がない→成田空港への足がない
  • 本は心の栄養です→本は心のアミノ酸です

(※注:提喩を先述の換喩の一種とみなす考え方もあります。)

以上の内容をまとめると、何かを例えたいときは、

  • 構造や見た目などが似ているものに置き換える(直喩・隠喩)
  • 連想されるものに置き換える(換喩)
  • “上位概念” か “下位概念” に置き換える(提喩)

のいずれかを検討することで、より的確な比喩や、ユニークな比喩を探せるようになるはず。 “例え下手” の自覚がある方は、上記3つのアプローチを覚えておきましょう。

「伝え上手になるための「レトリック」入門04

たとえば、ロボット掃除機をつくる会社の営業担当者が、新規取引先の人に対して「オフィスの清掃にロボット掃除機を使いませんか?」ともちかける場合、比喩を交え以下のような文章をつくることができます。

【△比喩を使わない文例】

「ロボット掃除機は、全自動でオフィスをきれいにしてくれます」
……表現が抽象的でイメージが湧きにくい。

【◎比喩を使った文例】

「ロボット掃除機は、最も安値で雇える『清掃スタッフ』です」
……「清掃スタッフ」に例えた(隠喩した)ことでイメージが湧きやすい。

レトリック2.「撞着語法(どうちゃくごほう)」

撞着語法(どうちゃくごほう)とは、意味の矛盾する言葉を並べるレトリック。「急がば回れ」「負けるが勝ち」「必要悪」「Mr. Children」「キモ可愛い」……など、身近な撞着語法の例は枚挙にいとまがありません。

大阪工業大学教授で言語学研究者の田岡育恵氏の分析によると、撞着語法には

反対の形容を対等に用いることで表現を目立たさせ,表現自体を人々の記憶にとどめやすくする効果がある

(引用元:智と技術の見本市|オクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果

とのこと。要するに、矛盾の違和感によって興味を惹きつけることができるというわけです。

教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志氏も、聴き手の好奇心を刺激するには、話のなかにあえて「ズレや矛盾などの認知的な不一致」を織り交ぜることが有効であると提唱。つまり撞着語法は、話の「ツカミ」などにも適した手法と言えます。

「白いカラスって知ってますか?」
「水って油なんです」
「じつは太陽って暗いんですよ」

たとえば、こんな撞着語法から話を始めれば、相手は「どういうこと?」と疑問を感じ、話の続きを聞きたくなるに違いありません。

「伝え上手になるための「レトリック」入門05

撞着語法をぜひ有効活用したい場面といえば、たとえば

  • 商談のツカミの一言
  • プレゼンの第一声
  • 商品のキャッチコピー

など相手の興味を惹きつけたい場面が挙げられます。

前章同様に、「ロボット掃除機」の営業を例にとると、以下のようになります。

【△撞着語法を使わない文例】

「弊社のロボット掃除機は、1万円という低価格ながら耐久性が高く、半永久的に使用できます」
……表現に意外性がなく、インパクトが弱い。

【◎撞着語法を使った文の文例】

「『たった1万円で半永久的に掃除をしてくれる清掃スタッフ』がいたら、驚きませんか?」
……『』部の撞着語法によって違和感が生まれ、惹きつけられる。

レトリック3.「反復法」

反復法「同じ言葉や言い回しを繰り返す」というシンプルなレトリック。表現に迫力をもたらす「強調法」の一種で、簡単ながら効果的な伝え方のひとつです。

ミドルベリー大学教授でレトリックに詳しいジェイ・ハインリックス氏は、この反復法を効果的に用いた人物として、アメリカの元大統領バラク・オバマ氏の名前を挙げています。2004年7月27日の民主党大会において、まだ当選前だったオバマ氏は以下のようにスピーチしました。

リベラルなアメリカも保守的なアメリカもありません。あるのはアメリカ合衆国だけです。黒人のアメリカも白人のアメリカもラテン系のアメリカもアジア系のアメリカもありません。あるのはアメリカ合衆国だけです。

(引用元:American View|バラク・オバマの半生

短文のなかで「アメリカ」という単語が8回も重ねられ、「アメリカはひとつなのだ」というメッセージが強調されていますよね。

また通販会社ジャパネットたかたの元社長・高田明氏も、自身が番組でプレゼンをする際、商品名を何度も連呼して印象づける工夫をしていたと述べています。国や業界の垣根を越え、しゃべりに定評のある多くの著名人に愛用されているテクニック——それが反復法なのです。

会議やプレゼンなどで、大事なことを伝えたい「ここぞ」という場面では、

  • 商品名
  • 最も伝えたい単語やフレーズ
  • 強調したい数字

などをたたみかけ、言葉を相手の印象に刻みつけましょう。

たとえば、営業担当者が一般家庭に向けて架空のロボット掃除機「SOZY」の宣伝をしているとしましょう。反復法を用いると以下のようになります。

【△反復法を使わない文例】

「弊社のロボット掃除機「SOZY」は、どんなお宅でも安全にお使いいただけます。広い一軒家でも。ものが散らかったお部屋でも。小さなお子様がいるお宅でも。みなさま、ぜひお買い求めください」
……1回しか商品名を言っておらず、印象に残りにくい。

【◎反復法を使った文例】

「弊社のロボット掃除機「SOZY」は、どんなお宅でも安全にお使いいただけます。広い一軒家にも「SOZY」。ものが散らかったお部屋にも「SOZY」。小さなお子様がいるお宅にも「SOZY」。みなさま、ぜひ「SOZY」をお買い求めください」
……商品名を5回連呼し、印象に残りやすい。

***
以上3つのレトリックは、どれも簡単ながら効果的なものばかり。伝えることに苦手意識がある方は、話し言葉や書き言葉のなかにレトリックを取り入れてみましょう。

(参考)
コトバンク|レトリック
佐藤信夫(1992),『レトリック感覚』, 講談社.
ダイヤモンド・オンライン|だれも真似できない比喩表現のつくり方とは?
京都大学広報誌『紅萠』|授業に潜入!おもしろ学問 言語認知論 谷口一美教授
コトバンク|直喩
コトバンク|隠喩
コトバンク|換喩
コトバンク|提喩
コトバンク|オクシモロン
智と技術の見本市|オクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果
ダイヤモンド・オンライン|元カリスマ予備校講師が教える、つまらない話を面白くするコツ
NHK|文章を豊かにするレトリック
THE21オンライン|通販レジェンドの「伝わる」トーク術とは?
PHPオンライン衆知|ハーバード大学で実践されている 「聞き手の心のつかみ方」
American View|バラク・オバマの半生

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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