勉強や仕事でたまった疲れを取ろうとするとき、普段みなさんは何をしていますか? 思う存分寝る、部屋の片付けをする、運動して汗を流すなど、様々な方法をとっていることと思います。中には、いろいろ試してみてもなかなか疲れが取れない……という方もいるかもしれませんね。
そこで、疲れを取るための行動の選択肢として「クラシック音楽を聴く」というのを取り入れてみてはいかがでしょう。通勤時間やちょっとした休み時間にクラシック音楽を聴くだけで、まとまった時間を確保しなくても脳や心を休ませることができ、短い時間で効率よく疲れを取ることができます。
クラシック音楽なんて聴いたことないよ、という方もいるかと思いますが、この記事をお読みいただければぜひ聴いてみたくなるはずですよ。
こんなにたくさん! クラシック音楽がもたらす効果
音楽を聴くこと、とりわけクラシック音楽を聴くことについては、実は様々な効果が医学的に実証されているのです。以下にその効果を挙げていきます。
1. 普段使っている脳の部分を休めることができる
人間の脳は左脳と右脳に分かれており、左脳が言語活動や論理的思考の活動を、右脳が身体感覚や芸術的活動などを担っています。我々の日常生活では左脳を使う場面の方が多い上に、左脳は右脳よりも容量が小さいため、左脳を適度に休める必要があります。クラシック音楽を聴くことは芸術的活動を担う右脳を刺激する行為であるため、結果として左脳を休めることができるのです。
しかし音楽ならなんでも良いわけではありません。歌詞付きの音楽の場合は、どうしても歌詞の意味を追って左脳が働いてしまいます。そのため、左脳を十分に休めるには歌詞のない音楽を聞くほうがよいと言えます。
2. α波を誘発する
α波とは、人間がリラックスしているときや目を閉じているときに多く発生する脳波のこと。この脳波が発生していると、β-エンドルフィンという物質が分泌されます。これは「脳内麻薬」とも呼ばれる神経伝達物質で、ストレスを減少させる、脳を活性化させる、幸福感を感じさせるなどの働きがあるもの。また、長時間走り続けると苦しみがなくなり楽しいという気持ちでいっぱいになる「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる現象は、この物質によって引き起こされることが知られています。
α波は「1/fゆらぎ」という周波数の物理現象から生まれます。「1/fゆらぎ」とは、ろうそくの炎の揺らめきや小鳥のさえずりなどの多くの現象に見られるもの。実はクラシック音楽はこのゆらぎを多く持っているため、α波を誘発する効果があるのです。
3. 安眠効果がある
兵庫県立大学大学院教授の水野由子氏らが行った実験によると、被験者がクラシック音楽を聴きながら作業(計算)を行った場合、アップテンポな音楽を聴きながら作業を行った場合よりも副交感神経が強くはたらき、作業後にも安定した精神状態が持続したのだそうです。
人間は活発に活動している時は交感神経が優位になり、落ち着くときには副交感神経が優位になるもの。副交感神経が優位になり体がリラックスすると、快適な睡眠へとつながります。その点から、クラシック音楽には心地よい眠りをもたらす効果があるのです。
まず聴くならこれ! オススメのクラシック曲を紹介
さて、早速クラシック音楽を聴いてみたいと思われた方のために、オススメの曲を2曲ご紹介します。これまであまりクラシック音楽を聴いたことがなかった方でも、どこかで聴いたことがあるような、馴染みのある曲を選んでみました。
1. カノン/パッヘルベル
誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲です。美しい旋律が掛け合うように重なり合っていく様子はとても美しく、思わず目を閉じてうっとりしてしまうほど。この曲は1/fゆらぎが多く含まれる曲として、クラシック音楽を用いた音楽療法の実験に多く採用されています。
2. アイネ・クライネ・ナハトムジーク/モーツァルト
こちらもタイトルは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。テレビ番組のBGMなどで使われることもある有名な旋律に始まり、4つの楽章からなる楽曲です。全部で20分にも及ぶ作品ですので、思う存分曲の世界に浸りたい方にもぴったりです。モーツァルトの音楽には規則性と不規則性の両方があり、これが1/fゆらぎを生み出しています。1/fゆらぎを持つ音楽の代表格の一つとしてモーツァルトの音楽が挙げられるのはこのためなのです。
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クラシック音楽には格式高いイメージがあるかもしれませんが、スマートフォンさえあれば気軽に聴くことができますし、場所をとらずにどこでも実践できるのがいいところですよね。音楽には、気分を落ち着けたり精神を安定させたりする効果があると広く知られており、中国には「楽先薬後」という「薬よりも先に音楽を聴く」ということを意味する言葉があるほどです。
皆さんも疲れがたまったときには、「クラシック音楽を聴く」という選択肢をぜひ取り入れてみてください。
ちなみに音楽には、疲れを癒やすだけでなく、勉強に集中しやすくなるという効果もあります。詳しくは「勉強中の『音楽』について徹底考察。集中力が手に入る、音楽の聞き方と選び方。」をご覧ください。
(参考)
水野由子(2010), “精神作業負荷時における作業環境と関連した脳波・脈波の定量解析,” 生体医工学, Vol. 48, pp.11-24.
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