話を “聴く” だけで相手の気持ちを変えられる!? 説得は『傾聴』から始めよ。

まったく違う考え方をする相手に対し、「どうせ話してもムダだ」と感じる人は多いでしょう。取りつく島もない営業先に対しても、同じように考えてしまうはず。しかし、相手の考えすべてを聴くことで、相手の気持ちを変えてしまったという、興味深い話が実際にあるのです。「聴くこと」の絶大なパワーについて掘り下げましょう!

説得したい相手に対し最初に行うべきこと

パキスタンのある部族には、加害者一族の娘を、被害者一族に差し出して罪を解消するという、日本では理解しがたい「swara(スワラ)」という慣習があります。パキスタンの人類学者・映像作家のサマール・ミナラー・カーン氏は、罪なき少女を傷つける忌々しい慣習に憤慨し、何とかしたいと考えました。しかし、180度違う考えを持つ相手を説得するのは、決して容易ではありません。

そこで、同氏はまず「相手の考えを聴くこと」から始めたそう。

その慣習の適用方法とメリットを宗教的指導者から聴き、加害者の思い、部族の指導者の伝統に対する考え、イスラム教からの観点、慣習実施後の状況などを聴き、それらをすべて動画に収録しました。そして、その動画を地域の人々と観たうえで、一人ひとりと語り合ったそう。その結果、部族の指導者たちは、少しずつその慣習を変えていったのだとか。

考えを聴けばバリアが消え、相手が分かる

つまり、サマール・ミナラー・カーン氏は、説得せずに「考えを聴くこと」で、手ごわい相手の考え方を変えてしまったのです。同氏は、さまざまな話を聴いたおかげで多くを学び、埋めがたい溝を埋められたといいます。

もしも、最初から自分の意見を主張しようとしたら、恐らく相手は厚いバリアでそれをはねのけてしまったでしょう。相手の考えを聴くことから始めたからこそ、バリアが消えてお互いが分かり、ともに新しい考えへと到達できたのです。

話をしっかり聴けば「早とちり」も防げる

それに、相手の話をしっかり聴くことは、「早とちり」防止にも役立つはず。私たちの脳は、効率よく対処するために、経験則で物事を先読みしようとします。それは多くの場合、直観として有益に働きますが、ときに想定外の条件が揃うと「認知バイアス(偏った思い込み)」を起こしてしまうのです。

例えば、B社に営業活動を行ったAさんの携帯電話に、B社から電話が入り、「先ほどはありがとうございました。すみませんが……」と先方が言いかけたところで通話が途切れてしまったとします。あまり営業に自信がないAさんは、「『すみませんが……』のあとは断りの言葉だろう」と予測しがちです。

しかし、電話の続きが「すみませんが、来週またお越しいただくことは可能でしょうか? 納期とお見積もりについて、細かいご相談もしたいので……」という電話の場合もあるわけです。もしも、Aさんが勝手に解釈したまますぐに電話を折り返さなければ、あとでメール等が先方から入るにせよ、ムダに悪い印象を残してしまいます。

しっかり聴かないとコミュニケーション不和にも

また、相手の話をしっかり聴くことは、コミュニケーションを良好に導いてくれます。

もしも相手が話している途中で「あ、それ知ってます――ですよね。実は私も――」と話の腰を折ってしまったり、「いや、でも私はこう思います」と自分の主張を始めたりしたら、相手は決していい気分にならないでしょう。

スタンフォード大学講師のニロファー・マーチャント氏は、「たいていの人は相手の話をしっかり聴いておらず、自分が賛成か反対か判断するために “聞いて” いる」といいます。相手の言葉にどう反応するか準備しながら、自分の話す番を待っていたら、サマール・ミナラー・カーン氏のように聴いて学び、大きな良い変化をもたらすことは到底できません。

マーチャント氏は、「いったん自分の関心事から離れて、相手の潜在的なニーズや見解に注意を払い、より多くを知ろうと思うこと」だとアドバイスしています。

株式会社セレブレイン代表取締役社長の高城幸司氏も、「落ち着いて、集中して相手の話を聴くことを徹底するに尽きる」とのこと。また、論理的に相手の話を聴けるよう訓練することもすすめています。

論理的に受容・傾聴するロジカルリスニングとは?

ここで、ご紹介したいのが「ロジカルリスニング」です。『ロジカルリスニング』の著者、船川淳志氏によれば、ロジカルリスニングとは、「相手の話を聴きながら、相手の頭の中で組み立てられたことと意図を理解する技術」のこと。つまり、「論理的思考」と「受容・傾聴」を統合した、思考力と対人力が合わさったスキルのことです。

日常生活やビジネスシーンでサマール・ミナラー・カーン氏のような「動画撮影、鑑賞、語り合い」という工程は踏めないので、こうしたスキルが役立つはず。どこから鍛えたらいいのかというと、船川氏はまず「受信系(聴くこと・観察すること)から鍛えよ」と訴えています。

「なんだ簡単じゃないか」と思うかもしれませんが、前項で説明したように、多くの人は相手の言葉に対する「自分の反応」の準備で頭がいっぱいです。意識的に受信しようとしてみると、いかに自分が人の話をしっかりと聴いていなかったか感じるはず。それに、自分の話を熱心に聴いてくれる人に対し、人は必然的に好意的な目を向けるので、それだけでもコミュニケーションがいいほうへと向かうでしょう。

*** なお、ロジカルリスニングは、「1.自分の中で物事を組み立てる 2.自分の頭の中で組み立てたことを、相手に分かりやすく伝える 3.相手の話を聴きながら、相手が頭の中で組み立てたことを理解する 4.複数の相手とお互いの考えを交換、共有しながら、問題解決や新たな考えを共創する」という4つのステップが、緊密な連関をもちながら全体をかたちづくっているそう。

誰かを説得しようと思うとき、まずは「相手の考えをしっかり聴く」ことから始めましょう。そして、その際にはロジカルリスニングを役立ててください。

(参考) DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|相手の考えを変えたければ、自分が話すのをやめて、まず聞こう ダイヤモンド・オンライン|最後まで人の話を聞けない人は要注意!職場で評価を下げる「早とちり」を治す方法 イマドキ職場のギャップ解消法 高城幸司 Study Hacker|「理不尽」に悩まないために。“ムカつく” をさらりと流す3つのテクニック ブルーバックス 講談社|脳はこんなにダマされている〜気鋭の脳科学者が明かす「ココロの盲点」(池谷 裕二) 船川淳志著(2006),『ロジカルリスニング』,ダイヤモンド社.

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