皆さんは、職場や取引先で「相手の本音が分かればいいのに」と思ったことはありませんか? 私たちは、常に本音と建前を使い分けながら仕事をこなしますよね。しかし、本音を引き出すことができなくては、相手のニーズに合わせた対応ができず、信頼関係も崩れてしまうかもしれません。
相手に本音で話してもらうには、ただ聞いているだけではなく、自分から能動的に働きかけることが重要です。そのため今回は、相手の本音を引き出す方法をご紹介したいと思います。
はじめから本音で話せる人はいない
相手からの評価をおそれて本音を言わなかった経験はありませんか? 米国ラバーン大学のN・ビューイ博士によると、私たちは他人から自分がどう見られているのかをひどく気にして、そのために本音を明かさないようにするのだそうです。ビジネスにおいては、自社の利益を増やすために相手の出方を探ったり、高評価を得ようと相手に合わせた言葉を選んだりすることもありますから、その分本音より建前が出やすくなるのでしょう。
とはいえ、時にはお互い本音で語り合い、不満の解消や企画の改善に努めなければならないこともありますよね。実業家の堀江貴文氏は、本音で生きることを強く勧めています。堀江氏によれば、建前の会話は回りくどく非効率的であり、無価値なのだそう。また、本音を言った結果崩れるような関係はそもそも無視すればいいとも堀江氏は主張しています。
建前ばかりの会話が信頼関係を生み出すことはできません。相手の本音をうまく引き出し、自らも率先して本音を語ることが、相手との良い関係性を築くためには重要なのです。
しかし、いくら相手の本音が聞きたくても、いきなり話すことはできないでしょう。本音を引き出すには、きちんとステップを踏み、少しずつ歩み寄ることが重要なのです。今回は、3つのステップに分けて、相手の本音を引き出す方法をご紹介します。
STEP1. 環境を整える
まずは、相手が本音を話しやすいような環境を整えましょう。人が本音を語る時には、ほとんどの方が落ち着き、リラックスしていますよね。つまり、相手が落ち着ける環境を作れば、その分相手は本音を話してくれやすくなるのです。以下3つのポイントを押さえられれば、相手が落ち着く環境を作ることができるはず。
(1)ワークスペースから離れた場所にする 普段仕事をしているデスクやワークスペースと、カフェや休憩スペースでは、リラックスできる度合いに大きな差が生まれますよね。特に仕事仲間や上司・部下と話をする際には、できるだけワークスペースからは離れるようにしましょう。
(2)座って話す 立っている時と座っている時では、人はどちらのほうが本音を話しやすいと思いますか? 休憩時間などにふと立ち話をした時のほうがポロッと本音をこぼしやすいと感じる方もいるかもしれませんが、実は人は「座っている時」のほうが緊張が緩み、本音を話しやすくなるのです。飲み物を渡して席を勧めながら話をすれば、自然と話に入りやすくなるでしょう。
(3)相手から見て斜め45度の位置、腕1本分の距離をあける 真正面から人と向かい合うと、少し圧迫感があって、話しにくく感じますよね。かといって横並びでは、相手の顔を見るためには身体ごと向けねばならず、不自然になってしまいます。斜め45度の位置で座れば、相手の警戒心が薄まりますし、自然と目が合ったり相手の様子をうかがったりしやすいでしょう。また、近づきすぎるのも心理的に圧迫感を与えてしまいますから、腕1本分、だいたい60cm程度の距離をあけるようにしましょう。
STEP2. 相手の心を開く
相手の本音を引き出す環境を整えられたら、次は相手に本音を言ってもらえるよう、相手の心を開いていきましょう。今回は2つの方法をご紹介したいと思います。
(1)「ちゃんと聞いているアピール」をする
会話をしている最中に「この人は自分の話を聞いていないな」と感じたら、話す気は失せてしまいますよね。逆に、きちんと話を聞いてくれていることが分かると、どんどん話したくなるのではないでしょうか。
どれだけあなたが話を真剣に聞いていたとしても、終始無表情で相づちすらなくては、話している相手は不安になってしまいます。適度に相づちを打ったり、少しだけ前のめりになって話を聞いたり、時々自分の喜怒哀楽を表現したり……。そういった些細なことを心がけるだけでも、相手に与える印象は大きく変わるはずですよ。
(2)共通の事柄について話す
芸能ジャーナリストである井上公造氏は、著書の中でこう述べています。
初めて話す相手なのに、心の距離をグッと近づける3つの共通項があるんですね。それは、 趣味(嗜好的条件の一致) 場所(距離的条件の一致) 過去(時間的条件の一致) の3つです。
(引用元:井上公造著(2014),『一瞬で「本音」を聞き出す技術』,ダイヤモンド社.)
初対面でお互いに緊張していたのに、地元が同じだと分かった途端に相手と気軽に話せるようになった、といった経験はありませんか? 井上氏によれば、このような共通項を会話に出すだけで、相手との心理的距離を縮め、相手の心を開くことができるのだそう。相手と話す際には、あらかじめ自分との共通点を探しておいたり、最初に趣味などの話をして共通項を探したりすると良いでしょう。
STEP3 投影法で本音を引き出す
最後に本音を引き出すための言葉についてですが、今回は「投影法」という手法をお教えしたいと思います。
統計的にも効果が証明されていて、カウンセリングなどにも用いられているほど。やり方はとても簡単で、主語を「You」ではなく「They」に変えて質問するだけです。例えば、「あなたは職場に不満を抱えていますか?」と聞きたいのなら、「人は一般的に、職場になんらかの不満を抱えていると思いますか?」というように、質問を一般化させます。
個人に向けて聞く時より相手は素直に答えやすくなりますが、「一般的な人」はもちろん相手自身も含んでいるため、個人の意見も無意識のうちに反映(投影)されます。相手の出方を探りたい時や、相手の本心を知りたいという時に使えば、きっとあなたの武器となってくれるでしょう。
*** 日本人は警戒心が強く、あまり本音を語らないと言われています。そんな日本で相手の本音を引き出せるスキルを持っていれば、あらゆる場面で他の人よりも優位に立てるでしょう。ビジネスシーンはもちろんのこと、気になる人の本音を知りたい時など、様々な場面でこの3STEPを試してみてくださいね。
(参考) 井上公造著(2014),『一瞬で「本音」を聞き出す技術』,ダイヤモンド社. 和田裕美著(2003),『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本: 営業に向かない人はいない』,ダイヤモンド社. 内藤誼人著(2011),『[図解] 一瞬で人を操る心理法則』,PHP研究所. Business Journal|カウンセラーが使っている、相手から簡単に本音を引き出すテクニック3つ intage|投影法 東洋経済ONLINE|堀江貴文氏「なぜみんな本音を言わないの?」 GLITTY|相手との距離と角度が決め手!「ミラクルポジションの法則」で心をつかむ リクナビNEXTジャーナル|相手に心を開かせる聞き方と話し方・7つの法則