クライアントしかり上司しかり。誠心誠意相手と向き合い、心が通うよう努力を続けているのになかなかうまくいかない……。
仕事上でこんな悩みを持っている方、多いのではないでしょうか? 誠心誠意相手と向き合うスタンスは素晴らしいものです。しかし、その真面目さがかえって相手を警戒させ、本心を聞き出すことを妨げているのかもしれません。
私たちは自分自身を少しでも良く見せたい、欠点を無くしたいと思うものです。しかし見た目・性格・賢さなどが完璧であればあるほど、人はなかなか警戒心が解けず、本心を見せることを躊躇してしまうのだとか。
相手の本心を引き出すために大切なことをお伝えします。
交渉で大切なのは、本心を聞き出すこと
交渉で肝となるのは、相手の本心を聞き出せるかどうか。営業では雑談やプレゼンの中から相手が本当に必要としているものを知ることができれば、もうほとんど交渉は成功したようなもの。ただ、その「本心」を引き出すのが難しいのです。
国連紛争調停官として紛争調停に携わり、現在は交渉・調停アドバイザーとして幅広い分野で交渉を教えている島田久仁彦氏は、交渉において最も大切なのは「本音を探すことである」と述べています。
交渉や調停における最重要事項は、とにかく相手に喋ってもらうこと。 その中で本音をいかに引き出せるかにあります。
(引用元:地球の名言|島田久仁彦の名言)
相手の本心がわかれば、自分がどこまで譲れるかと比較して必要最小限の譲歩のラインがわかります。その結果、何も知らなかったときより損しづらくなる上、相手の望みをある程度かなえられるので、双方に利益のある結果を出すことができます。これはwin-winですね。
さて肝心なのはいかにして相手の本心を引き出すか。その方法に迫ってみましょう。
美男美女は交渉に不利?
本心を引き出すために大切なのは、相手にたくさんしゃべってもらうこと。話が長くなればなるほど話す情報が多くなり、相手が本心を話してしまう可能性があがります。そのためには相手と親しくなり話しやすい環境を作ることが重要ですが、“魅力的な外見”の人は少し不利益を被ってしまうという実験結果があります。
ジョージア州立大学の心理学者ジェームズ・ダッブス博士は、「人間が魅力的な男女との間に取る距離を調べる」という実験を行いました。
ダッブス博士は、魅力的な男女と、そうでない男女を道端に立たせて、470名の歩行者が、どれくらいの距離をあけて通り過ぎるのかをこっそりと観察してみた。 すると、魅力的な男性(あるいは女性)が歩道の一番端に立っている場合、歩行者は、かなり距離をあけて通過することがわかったのである。
(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|ホンネを聞き出すなら「ブサイク」なほうがいい)
私たちは見た目がいい人に対して、無意識に距離を置いてしまうそう。確かに、あまりに容姿が完璧な人と話すと気後れしてしまいますよね、メリーランド州立大学の研究によると、イケメンは競争相手だとみなされて警戒されるため、就活で不利になることさえあるのだそう。相手が異性であれば、自分をよく見せようとして嘘をついたり必要以上に頑張ってしまったりと、本心をすぐに見せるのは難しいかもしれません。
人からよく見られたいというのは、ほとんどの人が持つ願望でしょう。ですが自分の容姿に自信がある人は、交渉ごとではあえて「隙」を見せた方が良さそうですね。
少し愚かな面があったほうがいい
顔だけではなく、行動も少し愚かな方が好感をもたれる傾向にあることが分かっています。古代中国で活躍した軍師・太公望の著作『六韜』(りくとう)には次のような言葉があります。
「聖人マサニ動カントスレバ、必ズ愚色アリ」
(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|わざと「無知」を装い、相手に気を許させる)
これは「聖人は動き出そうとするとき、けっして賢そうな顔はしていない」という意味です。私たちは、頭がよく見える相手に対して警戒心を抱いてしまうもの。周囲の人間に親しみを持ってもらうには、ちょっとした隙を見せることも必要なのです。ある心理学の実験によれば、完璧そうな人がコーヒーをこぼすなどの行動をとると、かえって好感を抱かせる効果があるそうですよ。
つまり人間関係を構築する上で大切なのは、良い面を見せることよりも愛嬌なのです。
また失敗談を話すことにも親密度を増す効果があるというのは、経験からも実感している人は多いのではないでしょうか。
これらの結果から相手の本音を引き出すためには、自分を良く見せようとするよりもむしろ、失敗談を話すなど人間らしい一面を見せた方が効果的であることがわかりました。とはいえ、何度も愚かな行動を繰り返すと「交渉をして大丈夫なのか」という疑問を相手に抱かせかねないので、ほどほどにしてくださいね。
*** 「本心を引き出すのが大事」とは分かっていても、それはなかなか難しいことです。「真面目にやっているのに」「頑張っているのに」という方は少し隙を見せて、相手が油断したときに見せる本心を見逃さないようにしてみてください。
(参考) ダイヤモンド社書籍オンライン|ホンネを聞き出すなら「ブサイク」なほうがいい ダイヤモンド社書籍オンライン|わざと「無知」を装い、相手に気を許させる IRORIO|イケメンは就活に不利? 面接で落とされがちとの調査結果 地球の名言|島田久仁彦の名言 名言DB|石田淳の名言|失敗談を話すことの効果